連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変える

雑誌『Precious』5月号の連載【Tomorrow Will Be Precious!】では、明日への希望をアクションに変える人たちの活動に注目し、紹介しています。

今回はそのなかから、視覚障がいのある人を案内役として、真っ暗闇のなか、視覚以外のさまざまな感覚やコミュニケーションを楽しむソーシャル・エンターテインメント「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」の代表理事/バースセラピストの志村季世恵さんにフォーカス! ダイバーシティを体感するドイツ発のコンテンツの日本での立ち上げから携わっている志村さんのお仕事に注目しました。

志村季世恵さん
「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」代表理事/バースセラピスト
心にトラブルを抱える人や末期がんを患う人に寄り添い、約30年で4万人以上をカウンセリング。「バースセラピスト」の肩書きは、「人は亡くなったら終わりではなく、何かを生み出す力をもっていて、それは次に伝えていくことができる」という想いを込めて自身でつくった造語。著書に『エールは消えない いのちをめぐる5つの物語』ほかがある。

暗闇のなかでの対話に涙する人も。ダイバーシティの体感が社会を変える

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「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」代表理事/バースセラピストの志村季世恵さん

1988年にドイツで誕生した「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、真っ暗闇のなか、視覚障がいのある人を案内役として、視覚以外のさまざまな感覚やコミュニケーションを楽しむソーシャル・エンターテインメントだ。世界47か国以上で開催されており、日本では1999年にイベントとして初開催。その後、’09年に常設の会場ができ、’20年にはダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森(R)」がオープンした。志村さんは日本での立ち上げから関わると同時に、本来アレンジを許されていないプログラムを、世界で唯一カスタマイズする許可をドイツ本部より得ていて、オリジナルのコンテンツも考案している。

「暗闇のなかでは、一挙手一投足が思いどおりになりません。『ペットボトルの蓋を開けてコップに水を注ぐ』ことすら、びっくりするほどできない。だから、大の大人でもそれができると大喜びです。それは、小さな子供が初めてコップに水を入れることができて、ママに『わあすごい、ありがとう!』と言われたときの喜び、もう幸福感マックスです。シンプルな幸せってこういうことだったんだ、と、誰もが改めて気付かされるんですね。感動の涙を流しながら出てくる方も多いんですよ」

本質的な幸せが見えてくる。それは、死を前にした人にも共通することだと言う。志村さんは長らく、末期がんを患う人に独自の手法でターミナルケアを行っている。俳優の樹木希林さんにも最期の日まで寄り添っていた。

「『最期はなんて言って死にたいですか?』と尋ねると、みなさん十中八九、『ありがとう』って答えます。希林さんもそうでした。ありがとう、って、他者がいてこそ言える言葉。暗闇のなかにいると、自分のことも、周りの人のことも、素直に認めることができる」

すべての人が自分の “今” に対してOKを出せる。私もみんなも等しくすごい、と心から思える。それが「ダイバーシティの扉を開ける」こと。その先に、幸せな明日がある。

◇志村季世恵さんに質問

Q. 朝起きていちばんにやることは?
窓を開けて、晴れていれば「気持ちいいね」、雨なら庭の植物に「お水うれしいね」、と、どんな日でもポジティブな発言から始める。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
ほめ言葉ではないですが、私は誰にでも挨拶をするので、知らない人が挨拶を返してくれるとうれしい。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
電車に乗ってその時の気分でどこかへ。できればひなびた公共の温泉で、たまたまそこにいたおばあちゃんの背中を流す…ということをよくやっています(笑)。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
手話を勉強しています。写真の手は「こんにちは」の意味。
Q. 自分を動物にたとえると?
理想はナマケモノ。夫には「ペンギンが歩いているみたいだよ」と言われます。

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PHOTO :
望月みちか
EDIT&WRITING :
木村 晶・喜多容子(Precious)
取材 :
剣持亜弥