連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変える
雑誌『Precious』6月号の連載【Tomorrow Will Be Precious!】では、明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介しています。
今回は、「日本科学未来館」館長・IBMフェローの浅川智恵子さんにフォーカス! 「科学技術と人々をつなげる」ことを自身の使命とし、科学技術の力でインクルーシブな社会へ、誰もが普通に生きられる未来を思い描く、浅川さんのお仕事に注目しました。
科学技術の力でインクルーシブな社会へ|誰もが普通に生きられる未来を描く
’21年。日本科学未来館の館長に就任するにあたり、浅川さんは「科学技術と人々をつなげる」ことを自身の使命に掲げた。
「科学技術には私たちの人生を変える力がある。それを、私自身が経験してきましたから」
スポーツ少女だった浅川さんは、プールでのけががもとで中学2年生のときに完全に失明。大学卒業後、職業訓練校でプログラミングを学び、日本IBMに期限付き客員研究員として入社した。その後、研究成果が認められ、正式採用に。世界初の実用的な音声ブラウザ「ホームページ・リーダー」をはじめとして、視覚障がい者を支援する技術を精力的に開発。’09年には日本人女性では初のIBMフェローに就任し、現在も研究を続けている。
「私が高校生のときは、点字しかなかった。そう考えると、今は夢のような世界です。テクノロジーの活用で社会参加がしやすくなる。これは障がい者に限らず、高齢者をはじめとしてすべての人に言えると思います」
「社会参加がしやすい」ということは、「生きやすい」ということでもある。浅川さんは「人が途方に暮れなくていい社会」と呼んだ。
「アクセシビリティ(情報やサービスなどへのアクセスのしやすさ)技術や多様性についても、それを人々が自然に受け入れられるようなアプローチを考えたい。助けてあげなくちゃ、ではなく、例えば事故に遭って一時的に松葉杖になっても、本人も周りも『じゃあこうすればいいね』と慌てずにすむ。そんな社会になっていければいいな、と」
現在開発中の視覚障がい者向け「AIスーツケース」は、一見、市販のスーツケースだが、搭載されたセンサーやAIなどによって、人を目的地まで誘導してくれる自律型ロボット。視覚障がい者が街の中に溶け込んで自由に行動し、でも必要なときにはきちんとサポートが受けられる。そんな社会は、きっと近い。
「未来は明るくできる。誰にでもできることがある。そのことをこれからも伝え続けたい」
◇浅川智恵子さんに質問
Q. 朝起きていちばんにやることは?
ストレッチと筋トレを30分ほど。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
数年ぶりに会った人に「変わらないね」と言われるとうれしい。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
南の島のリゾートで、波の音を聴きながらワインを飲みつつ、何も考えずに時を過ごす。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
仕事がライフワークなので、そこで新しい何かをいつも考えている。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
仕事を通して得た経験を次の仕事につなげている。10年後の自分は、今の自分にかかっていると思っています。
Q. 自分を動物にたとえると?
ラッコ。海藻を体に巻き付け流されないようにしたり、貝を食べるために石で割ったりする、適応力の高さに共感を覚えます(笑)。
- PHOTO :
- 望月みちか
- HAIR MAKE :
- 三澤公幸(Perle)
- EDIT&WRITING :
- 剣持亜弥、喜多容子・木村 晶(Precious)