連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変える
雑誌『Precious』6月号の連載【Tomorrow Will Be Precious!】では、明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介しています。
今回は、「中川政七商店」代表取締役社長 14代の千石あやさんにフォーカス! 享保元(1716)年創業300年以上続く、日本の工芸を扱うこの老舗で、創業家以外から初の社長となった千石さんのお仕事に注目しました。
見て触れて、使ってもらうことで日本の工芸の未来を明るいものに
奈良駅から車で10分ほどのところにある「中川政七商店」本社は、平屋建てで、扉のない、風通しのよい空間だった。享保元(1716)年創業300年以上続く、日本の工芸を扱うこの老舗で、創業家以外からで初の社長となったのが千石さん。’18年に14代社長に就任した。
「’11年に印刷業界から転職してきて、最初の数年間は会社で取り扱う生活雑貨の生産管理の仕事をしました。それまではずっとデザイン畑だったので、人生で初めての経験。驚くことばかりでした。ふつうなら、100個つくって、売れたから次は200個お願いしますって言えば喜ばれますよね。でも工芸では『できません』と。そういうアナログな、クライアントワークとは違う脳を使う、この業界での商売を一から知ることができました」
千石さんの経営スタイルは、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、志をひとつにフラットな関係性をつくること。「引っ張っていくとか背中を見せるとかではまったくなく、『方法をみんなで考えよう』と呼びかける感じですね。未来のあるべき姿と現在との間にある課題に対して、それぞれが考え、行動できる組織を目指しています」
社内では美術鑑賞やワークショップなどへの参加をサポートする「学びの土曜日」制度や、社外へのアクションとしては地域に根ざすメーカーとデザイナーがつくるプロダクトを募集する「地産地匠アワード」の創設など、新しい取り組みも進んでいる。
「工芸の産地は、今どこも本当にシビアです。これまでの分業性が崩壊して、一分野の職人さんがいなくなったために全部がダメになってしまうということが起きています。だからといって、危機感を煽るのも違うと思っていて。お店やメディアで、さまざまな工芸に触れてもらい、家で実際に使ってもらう。それぞれの暮らしにつながっていく。時間はかかるけれど、結局はそれがいちばん、未来の工芸を元気にすることになると考えています」
◇千石あやさんに質問
Q. 朝起きていちばんにやることは?
3歳の愛犬に挨拶&元気かをチェック。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「また一緒に仕事がしたいです」
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
長い休みなら違う街に住みたい。例えば長野。最近お仕事をご一緒したおもしろい人たちがみんな長野にいたので、興味があります。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
乗馬。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
今と同じく工芸に関わっていたい。絵や文章を書くのが好きなので、そういう仕事もやってみたい。
Q. 自分を動物にたとえると?
会社の人たちに聞いたら「ゾウ」、友人は「ボーダーコリー」。群れの中にいるイメージなのかも。夫は会社での私を知らないので「シカ」だと。もぐもぐしているシカだそうです(笑)。
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- PHOTO :
- 香西ジュン
- 取材 :
- 木佐貫久代