日本におけるインポート・プレミアムカーの代表格といえば、メルセデス・べンツを置いて他にありません。1890年代から量産車両の生産を始めた歴史を持ち、手がけてきたのはミドル~アッパークラスのプレミアムモデルが中心。そして、安全向上に貢献する技術を積極的に採用してきたことでも知られています。世界のVIPに愛される理由も、そこにあります。今回は、パーソナルな個性を強めた2ドアモデル「CLEクーペ」を紹介します。

メルセデス・クーペは“最強”のパートナー

1960~70年代に販売されていたメルセデス・ベンツのクーペ。十分な広さのキャビン(乗車空間)と荷室を確保しながら、流れるような美しいデザインを両立していた。(C)Mercedes-Benz Group AG.
1960~70年代に販売されていたメルセデス・ベンツのクーペ。十分な広さのキャビン(乗車空間)と荷室を確保しながら、流れるような美しいデザインを両立していた。(C)Mercedes-Benz Group AG.

最近ではコンパクトサイズの3ドアモデルやSUVなど、幅広いラインアップで知られるメルセデス・ベンツですが、1990年代までは箱型の4ドアセダンや荷室を大きくしたステーションワゴンが主体でした。冒頭で書いた安全性の高さもあり、欧米ではメルセデスの中・大型セダンを社用車として採用する企業が多く、公用車の定番でもあります。そのため、どちらかというと“お堅いクルマ”の印象を感じている方が多いかもしれません。

実はメルセデス、古くから2ドアのクーペも手がけているのをご存じでしょうか。セダンの品格を保ちながら、デザインはよりスタイリッシュ。十分な広さの後席や荷室を備えているので、実用性も損なわれていません。

こちらは1980年代後半から90年代にかけて販売されていた、ミディアムクラス(現在のEクラス)のクーペ。当時、ヤングエグゼクティブの男性に、このクルマでエスコートしてもらった方も多いのでは? (C)Mercedes-Benz Group AG.
こちらは1980年代後半から90年代にかけて販売されていた、ミディアムクラス(現在のEクラス)のクーペ。当時、ヤングエグゼクティブの男性に、このクルマでエスコートしてもらった方もいるのでは? (C)Mercedes-Benz Group AG.

筆者は1990年代の前半、ミディアムクラスのクーペ(上の写真と同じ車両)に乗っていました。といっても、仕事仲間の社有車を頻繁にお借りしていただけですが……。景気の落ち込みが始まっていたとはいえ、東京の街にはメルセデスのセダンがさっそうと走っていた時代。はじめはセダンとの違いを意識できませんでしたが、よく見ると威厳のある四角いボディはよりなだらかなラインでデザインされ、ミッドナイトブルーに塗られた車体は夜の六本木通りで艶めき、重厚で安定感のある乗り心地にたちまち引き込まれてしまいました。

しかも、大柄なのに小回りが利くことにびっくり。クーペにかぎらない話ですが、メルセデス車は路面からの衝撃をやわらげるサスペンションという部品の取り付け位置を工夫することで、ハンドルを切ったときに前輪がわずかに寝る(ハンドルを切った方向に傾く)設計。おかげで六本木や西麻布周辺の裏道でもすいすいと曲がれるのでした。オンもオフも魅了するメルセデス・クーペは、ある意味“最強”の乗り物であると確信した瞬間でした。

スタイルにこだわりつつ乗車空間も広々

シンプルな面で現代的な美しさを表現した「CLEクーペ」。2ドア車に乗ることで、“私らしさ”をさりげなく主張できる。
シンプルな面で現代的な美しさを表現した「CLEクーペ」。2ドア車に乗ることで、“私らしさ”をさりげなく主張できる。
クーペ最大の魅力である、“斜め後ろのエレガンス”。ドイツのアウトバーン(高速道路)で鍛えられた安定感抜群の乗り味で、遠出も快適。
クーペ最大の魅力である、“斜め後ろのエレガンス”。ドイツのアウトバーン(高速道路)で鍛えられた安定感抜群の乗り味で、遠出も快適。

そして現代。今春より日本への導入が始まった最新モデル「CLEクーペ」も“最強感”に満ちています。メルセデスの現行ラインアップのなかでも特に装飾的なラインやエッジの少ないデザインを取り入れ、セダンとの違いはより明確に。クーペの最大の見どころである、後ろ斜めからの眺めも絶品です。流麗さを特徴とするクーペはボディが大きいほど艶やかに見えるのですが、「CLEクーペ」は全長4,850mmと大柄なため、ひときわ優雅。

専用にデザインされたシートを採用し、ドアを開けてもエレガント。写真の車両はオプションのレザーエクスクルーシブパッケージ付きで、本革を使用(標準シートは人工皮革)。内装色はマキアートベージュ/ブラックの組み合わせ。リラクゼーション機能も付いて、おすすめ!
専用にデザインされたシートを採用し、ドアを開けてもエレガント。写真の車両はオプションのレザーエクスクルーシブパッケージ付きで、本革を使用(標準シートは人工皮革)。内装色はマキアートベージュ/ブラックの組み合わせ。リラクゼーション機能も付いて、おすすめ!
前席の背もたれ上部に付くナッパレザー製のストラップを引くと、乗り降りできる空間ができる。ふたり掛けの後席は圧迫感がなく、広々。明るい色味を選べば気分的にも開放感が増す。
前席の背もたれ上部に付くナッパレザー製のストラップを引くと、乗り降りできる空間ができる。ふたり掛けの後席は圧迫感がなく、広々。明るい色味を選べば気分的にも開放感が増す。

内装ではシートを専用のデザインとし、外観と連動したエレガンスを表現。オプションの「レザーエクスクルーシブパッケージ」を選択するとシート表皮が本革仕様となり、滑らかな肌触りとリッチな質感を堪能できます。後席は2人掛けとなりますが、足元や肩回りの広さは十分確保され、人数分の小物入れとカップホルダーも装備されています。後席への乗り降りの際は簡単操作で前席をスライドできるので、複数の友人を誘ってのドライブでもストレスを感じることはありません。そして後席に人が乗らないときは、バッグやアウターを置く広い空間として活用できるわけで、少人数乗車が基本ならクーペのメリットを強く実感できることでしょう。

話しかければ教えてくれる、快適にしてくれる!

荷室側から前方にかけての様子。後席は背もたれを3分割で前にたたむことができ、荷物が多いときも不便を感じることがない。
荷室側から前方を覗いた様子。後席は背もたれを3分割で前にたたむことができ、荷物が多いときも不便を感じることがない。

「CLEクーペ」の乗り味は伝統の重厚さに軽快感と滑らかさが加わり、どんなときも穏やかな気分で走ることができます。そして、筆者がかつて感動した小回り性能は、前輪に加えて後輪もわずかに曲がる先進の4輪操舵システム「リアアクスルステアリング」(オプション)の効果で、もはや無双状態。六本木周辺は再開発で細い路地が減り、ずいぶん走りやすくなりましたが、路上駐車を避けたり駐車場で切り返すときに、圧倒的な小回り性能は大いに役立ちます。

中央の大型モニターは、わずかに運転席側に傾いている。明瞭なグラフィックのメーター表示パネルともども、運転に集中しながら瞬時に必要な情報を入手するための工夫が行き届いている。
中央の大型モニターは、わずかに運転席側に傾いている。明瞭なグラフィックのメーター表示パネルともども、運転に集中しながら瞬時に必要な情報を入手するための工夫が行き届いている。
周辺のカメラ映像に進路や道路情報などを重ねて表示するMBUX ARナビゲーションを標準装備。わかりやすく、便利!(筆者撮影)。
周辺のカメラ映像に進路や道路情報などを重ねて表示するMBUX ARナビゲーションを標準装備。わかりやすく、便利!(筆者撮影)。

メルセデス・ベンツがいち早く導入した音声対話式インフォテインメントシステム、「MBUX」も進化しています。ナビの目的地検索やオーディオソースの変更、エアコンの温度設定などを音声のやりとりで済ませることができるこのシステム、「ハイ、メルセデス」と声をかけることが起動の合図となりますが、1名乗車のときは声がけをせずとも「六本木ヒルズに行きたい」などと話すだけで済み(ジャストトーク機能)、音声認識の精度も高まっています。細かな操作をすることなく運転に集中できるわけで、安全性の向上に余念がないメルセデス・ベンツならではの機能です。

「メルセデスを一度味わうと、もう他のクルマには乗れない」

これは昔からメルセデス・オーナーの間でよく交わされる言葉ですが、その伝説は進化を続けながら、これからも心に残るドライブ体験を提供してくれることでしょう。

走行中の安定性と微速での取り回しを向上させる4輪操舵システムが、とびきりスマートなドライブを陰で支える。
走行中の安定性と微速での取り回しを向上させる4輪操舵システムが、スマートなドライブを支える。

【Mercedes-Benz CLE 200 Coupé Sports】

ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,850×1,860×1,420mm
車両重量:1,800kg
車両本体価格:¥8,500,000(税込み)

問い合わせ先

メルセデス・ベンツ

TEL:0120-190-610

この記事の執筆者
総合誌編集部を経て独立。ライフスタイル全般の企画・編集・執筆を手がける。ファッションのひとつとして自動車に関心を持ち、移動の手段にとどまらない趣味、自己表現のひとつとして提案している。
PHOTO :
メルセデス・ベンツ日本(CLEクーペ)