「狼煙を上げる」は「何か大きなことを起こすきっかけを起こすこと」を表す慣用句です。なぜ「オオカミの煙」なのか、ご存じですか? 今回は「狼煙を上げる」を深掘り。その正確な意味や、ビジネスシーンでの使い方がわかる例文、英語表現などを解説します。

【目次】

狼煙を上げるとは?なんで「オオカミの煙」なのか、説明できますか?
「狼煙を上げる」とは?なんで「オオカミの煙」なのか、説明できますか?

【「狼煙を上げる」の「読み方」と「意味」、「由来」は?】

■読み方

「狼煙を上げる」は「狼煙」は、「のろし」と読みます。「狼煙」だけの場合は、「ろうえん」と読んでも間違いではありませんが、「狼煙を上げる」と言った際には、「のろし」です。「のろし」という言葉は、戦国時代を描いた映画やドラマでよく耳にしますが、漢字で「狼煙」と書かれると、なかなかピンときませんよね。

■意味

「狼煙を上げる」の意味を理解するために、まずは「狼煙」の意味から。

「のろし」は「狼煙」あるいは「烽火」とも書きます。昔、戦時や非常時には、薪(たきぎ)や火薬などを使って高く上げた煙を合図や目印として、敵陣を攻撃しました。つまり「狼煙」は情報伝達の手段だったのです。ここから転じて、大きな動きのきっかけや合図になるような目立った行動を、比喩的に「狼煙」と言うようになりました。つまり「狼煙を上げる」は大きな動きのきっかけや合図になるような目立った行動を起こすことです。

■なぜ「狼」?「由来」

オオカミのフンは、燃やすと大量の煙が出ることで知られています。「のろし」を狼の煙と書くのは、中国では乾燥したオオカミのフンを、枯れ草や枯れ木と一緒に燃やして煙を上げたことに由来します。唐の時代になってこの漢字が使われるようになり、日本には鎌倉時代から見られるようになりました。


【「使い方」がわかる「例文」5選】

ビジネスシーンで「狼煙を上げる」はどのように使われるのか、例文でチェックしましょう。

■1:「ライバルであるA社開発の商品に対して、我が社は新商品を投入することにより、反撃の狼煙を上げた」

■2:「売り上げの伸び悩みによって会社の財政は逼迫。待ったなしで改革の狼煙が上がった」

■3:「社長の不用意な発言により我が社は窮地に立たされ、社内には反体制派による批判の狼煙が上がった」

■4:「部長の決断こそが、部内がひとつにまとまり、起死回生の狼煙を上げた瞬間だった」

■5:「昨日の部長会議で、我が社もいよいよ海外進出の狼煙を上げることになったようだ。遅きに失していなければよいのだが」


【「類語」「言い換え」表現】

「狼煙を上げる」にはいろいろな言い換え表現があります。

・矢を放つ

・口火を切る

・合図を鳴らす

・引き金を引く

・幕を切って落とす

・号砲(ごうほう)を鳴らす


【「英語」で言うと?】

「狼煙」を「合図の火煙」と解釈すると、これに相当する英語は[a signal fire]や[a signal smoke]、[ a beacon]などがあります。

・They made known their position by lighting a signal fire( lighting a beacon / firing a rocket).
(彼らは狼煙を上げて居所を知らせた〕

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通信が発達した現代とは異なり、大昔は太鼓の音や狼煙などが情報伝達の手段として使われていました。離れたところにできるだけ迅速に情報を伝える必要性があったのは、敵の攻撃に備えることが大きな理由のひとつです。オオカミのフンは、燃やすと大量の煙を出し、しかもその煙は風に流れず、直上するそうです。ここから「のろし」は「狼煙」と書くようになりました。慣用句の成り立ちって、知れば知るほど、おもしろいですね!

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社) :