スーパーマーケットや青果店に青梅が並ぶ季節になりました。そろそろ完熟梅も出回るころですね。コロナ禍のステイホーム期で増えた“おうち時間”を活用して「梅干を漬けるようになった」という人もいるのでは? 今回はこの梅の季節に制定されている「梅の日」と、梅にまつわる豆知識を解説します。

【目次】

6月6日の「梅の日」と京都の賀茂神社の関係は?
6月6日の「梅の日」と京都の賀茂神社の関係は?

6月6日は「梅の日」。なぜ?いつから?何をする?】

6月は梅の実の季節だから…というのは納得できますが、なぜ6月6日? 由来などを解説しましょう。

■なぜ6月6日? 

ときは室町時代の1545(天文14)年4月17日。当時は日本中が日照り続きで雨が降らず、作物は育たず、田植えもできずという危機的状況でした。そんななか、神さまのお告げがあり、後奈良天皇が賀茂神社に詣でて梅を捧げたところ、たちまち雷鳴と供に雨が降り、飢饉(ききん)を逃れることができたのだとか。人々はその恵みの雨を「梅雨」と呼び、以降、梅に感謝したそうです。この4月17日は、現在の暦で6月6日にあたります。この故事は宮中に仕える女官たちによって綴られた『御湯殿上日記(おゆどののうえにっき)』に記されています。

■誰が決めた?

和歌山県田辺市の農業振興課に置かれた紀州田辺うめ振興協議会(紀州梅の会)によって日本記念日協会に申請され、2006(平成18)年に登録されました。田辺市は全国きっての梅の産地。「日本人の生活や文化に深く根ざしてきた梅を再認識すると供に、受け継がれてきた伝統を継承したい」との意図があるのだとか。

■何をする?

実際に「梅の日」にはどんなことが行われるのでしょう? 地元和歌山では、那智の滝でも知られる熊野本宮大社で「梅の日」の神事が行われます。神楽が奏され、梅漬けの儀式や献杯などがあるのだそう。同じく梅の産地で、和歌山県中西部に位置するみなべ町の須賀神社でも同様の神事があります。「梅の日」ゆかりの京都では、時代装束をまとった行列が上賀茂神社と下鴨神社へ青梅(あおうめ)を奉納します。また東京では、田辺市とJA紀南が首相官邸を表敬訪問し、梅を贈呈するのが恒例となっています。

せっかくの「梅の日」ですから、青梅で梅酒や梅シロップをつくったり、完熟梅が手に入れば梅干の仕込みをしてみてはいかがでしょう。驚くほど簡単においしくつくれるものですよ。ちなみに紀州梅の会では、「梅を贈って健康を祝い、ロマンを語る日」と謳っています。


【ほかにも「梅の日」が…2月11日と7月30日はどんな梅の日?

■2月11日は「梅まつり」

梅花の時期である2月11日は各地で「梅まつり」が催されます。建国記念日で祝日ということもあり、この日を中心に数日間、あるいはひと月近くもイベントが行われる地域も。梅は桜に比べて開花時期が長く、低木で花の香りが強いため、梅園などは「梅の日」に関わらず多くの人で賑わいます。

■6月10日は「梅酒の日」

梅酒のトップメーカーであるチョーヤ梅酒株式会社が制定。日にちは雑節(暦のなかで季節を示す特別な日)の「入梅」の日。「梅酒の日」には梅の収穫がピークを迎えることと、この時期から梅酒を飲んで夏を元気に乗り切ってもらいたいとの思いが込められているのだとか。

■7月30日は「梅干の日」

昔から「梅干を一日一粒食べれば医者いらず」と言い伝えられてきました。梅干は日本の伝統的な健康食品ということは知られていますよね。前出のみなべ町で梅を生産する農園が「医者いらず」を「7(難)が30(去る)」と解釈し、語呂合わせで7月30日を「梅干の日」と制定しました。このころには梅の土用干しも終わり、新物の梅干が食べられることにも由来するようです。この日の卯の刻(午前6時から8時)に、その年の恵方に向かって梅干を食べると“気”が高まり精気がみなぎるとされています。

■11月10日は「カリカリ梅の日」

群馬県の梅加工業者5社からなる、群馬の梅を応援する会「うめのわ」が制定。群馬県は和歌山県に次いで梅の生産量が全国で2位。群馬県の梅のブランド力を向上させ、産地を守ることが目的なのだとか。カリカリ梅の特徴である「カリカリッ」という歯ごたえを「11(いい)10(音)」と語呂合わせしました。


ビジネス雑談に役立つ「梅の雑学」】  

■花言葉

梅全般の花言葉は「上品」「高潔」「忍耐」「忠実」です。「上品」や「高潔」は可憐で清らかな花の様子がよく表れていますね。「忍耐」や「忠実」は、梅の花の最盛期がまだ寒い2月であるため。寒風吹くなか、凛とした姿を見せてくれることにも由来しているようです。

■「梅干」を英語で何と言う?

「梅干」を意味する英語は、「梅の漬物(=ピクルス)」で、一般的には[pickled plums(ume)]ですが、[salted plums][Japanese salt pulms]とも表されます。また[umeboshi]で通じることも。

■「梅桃」ってなんて読む?

梅桃」という植物があります。これは、「ユスラウメ」と読みます。盆栽や庭木、または小型庭園果樹として利用されるバラ科の落葉低木で、春、薄紅色の梅に似た花をつけ、サクランボのような赤い実がなります。また、「桜梅(さくらうめ)」という植物はウメの園芸品種で、薄紅色の八重桜のような花をつけます。

これが梅桃。

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おにぎりに入れる梅干は殺菌効果や腐敗防止を期待する意味もありますが、ご飯に梅干は最強においしい組み合わせですね。熱中症予防の塩分補給にも役立つので、暑い時期には特に積極的に摂りたい…とはいえ、塩分は気になるところ。「一日一粒で医者いらず」とはよく言ったものです。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)/ 紀州梅の会 https://www.tanabe-ume.jp/umenokai// みなべ町 https://www.town.minabe.lg.jp/index.html :