障がい、新興宗教、テロ、風俗、政治……衝撃のキーワードが並ぶ怒涛の作品『ふくすけ』で、主演を飾る阿部サダヲさん。気力も体力も必要としそうな舞台の中心に立つのは、並大抵のことではありません。主役としての心意気、舞台を完遂するために、心身をどう整えているのか、その秘訣を伺いたかったのですが……。

俳優の阿部サダヲさん
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阿部サダヲさん
俳優
(あべさだを)1970年4月23日生まれ、千葉県出身。1992年より大人計画に参加。同年、舞台『冬の皮』でデビュー。2022年にNODA・MAP番外公演『THE BEE』にて読売演劇大賞優秀男優賞、2024年に映画『シャイロックの子供たち』にて、日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。近年の出演作に【舞台】『もうがまんできない』(2023)、『ドライブイン カリフォルニア』『ツダマンの世界』(2022)、【映画】『アイ・アム まきもと』『死刑にいたる病』(2022)、【ドラマ】『広重ぶるう』(2024・NHK)『不適切にもほどがある!』(2024・TBS)などがある。

【俳優・阿部サダヲさんインタビューVol.01】いつか演じてみたかった役だけど、プレッシャーもすごい
【俳優・阿部サダヲさんインタビューVol.02】時代が逆に近づいていて、芝居の中の出来事が、実際に起きても不思議じゃなくなっている

「後輩に相談されるのはいいけれど、答えはしません」(阿部さん)

――――ちなみにPreciousは、大人の自立した女性がターゲットなんです。起業されているなど、組織の中心にいる読者も多いのですが、阿部さんも主演ということで。そういった主役でいること、チームの中心にいることに対して、プレッシャーは感じますか?それとも、もう気持ちがよくてしかたないのか……?

「いや、気持ちよくはないかな……(笑)。でも、主役をやりたいと自分で思って実際できることではないですもんね。どうして、こんなにやらせてもらえるんだろうと思うけど、そこにこだわってるわけではないんです」

――――阿部さんは常に、物語の中心にいる印象なので意外です。

「どの立場でも、気持ちはあまり変わっていないですけどね。主役だからといって、いろんな部署をまわって『今回こうしましょう!』とかいったりするタイプじゃないから。だからPreciousの読者のようにきちんとされている方には、参考にならないかもしれないです」

――――役者たちをまとめるぞ!みたいな意識は、あまりない。

「ないですね……。ぜひ自由にやっていただきたいというか。かつて僕がそうだったのもあるかもしれないけど、向こうからガンガンくるという方がいいかな。共演者のみなさんは、堅くならないでほしいです。僕はもう54歳だから、後輩の役者が30歳ぐらいだったとしても、けっこう年上じゃないですか。20代なんてさらにそうだけど、緊張しちゃう人もいるかもしれないですよね。でも、本当にのびのびとやってもらいたくて。僕は若いころから、勝手にのびのびやっていたけど、そういう現場がいいなとは思います」

――――それでは反対に、プレッシャーを与えない気配りだったり、自由に演技できる場にしようと工夫していることはありますか?「なんでも相談してね」みたいな空気を出すとか。

「うーん、相談に乗らないので、僕は。人が聞きやすい体制は取りますけどね。だけど、相談には乗らないっていう」

――――えっ?乗らないというのは。

「自由にやって、という感じでいます」

――――話は聞くし、受け止めはするけど。

「うん。聞くのはいいんですけど、答えないです。自分がそうなんですが、たとえば演出家が『ここはこういう方向で』と言ったとするじゃないですか。そうすると、それしかできなくなっちゃうんですよね。役でもなんでも余白をつくっておきたいんですね、全部に。いろんなことをきちんと決めるタイプの人もいますけど、僕はその日その日で変わっていいと思っているので」

「僕は若いころから、勝手にのびのびやっていたけど、そういう現場がいいな、と」(阿部さん)

――――阿部さんは、俳優として長いキャリアを積まれていますが、仕事に飽きることはないですか?「はいはい、この役だったらこうね」みたいに、つい演技がルーティン化してしまうとか。

「それはないですね。それがいちばん怖いです。やっぱり何年も役者をやっているから『このお芝居、またやっちゃったな』とはならないようにしないと。ありがたいことに、同じような役が続くことはあまり無いので。それは若いころからそうですね、警官やって犯人やって、警官やって犯人やって…みたいな感じで」

――――あと、これはPrecious読者にとって深刻な悩みなのですが、集中力や体力の限界は感じ始めていますか?

「どうかな?  でも何気なく見ていたビタミン剤やサプリのCMが『こういうことをいってるんだ』というのは、わかるようになってきました」

――――もともと体力や集中力に、優れていらっしゃるんですね。

「学生時代に野球部にいたのもありますし。でもそのときの筋力は、さすがに衰えてきているだろうと。みんな40代くらいになると、ピラティスとか始めてるでしょう?ピラティスっていうのは、何をやっているんですか?」

――――(笑)。あれは、体幹を整えているんです。阿部さんはトレーニングされていないんですか?

「していないんですよ、今。昔部活をやっていたから、負けず嫌いが出て、やりすぎちゃうんですよね。逆に体を壊したりするから、気をつけなきゃいけない。でも今、体幹って聞いて、必要性がわかる気がします。なんだか、ピラティスに興味が出てきました」

「なんだかピラティスに興味がでてきました(笑)」(阿部さん)

Information■ COCOON PRDUCTION 2024『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』

舞台『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』
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公演日程/
【東京公演】2024年7月9日(火)〜8月4日(日) 会場/THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
【京都公演】2024年8月9日(金)〜15日(木) 会場/ロームシアター京都メインホール
【福岡公演】2024年8月23日(金)〜26日(月) 会場/キャナルシティ劇場
作・演出/松尾スズキ
出演/阿部サダヲ、黒木 華、荒川良々、岸井ゆきの、皆川猿時、松本穂香、伊勢志摩、猫背 椿、宍戸美和公、内田 慈、町田水城、河井克夫、 菅原永二、オクイシュージ、松尾スズキ、秋山菜津子ほか
公式サイト

企画・製作/Bunkamura

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PHOTO :
松木康平
STYLIST :
チヨ
HAIR MAKE :
中山知美
WRITING :
湯口かおり
EDIT :
福本絵里香