【目次】

【「立冬」とは?「読み方」「意味」など基礎知識】

■読み方

「立冬」で「りっとう」と読みます。

■意味

「立冬」は、古代中国でつくられた季節の区分法「二十四節気(にじゅうしせっき)」のひとつです。二十四節気は、1年を24等分して気候の推移を示したもので、各節気は約15日間です。中国の黄河流域の気候に基づいた区分なので日本の気候とは少々ずれがありますが、日本でも古くから農作業の目安とされてきました。

「立冬」は太陽の黄経が225度にあるときで、例年11月7日から8日ごろにあたります。「冬が立つ」と書くので「冬から立ち去る?」と誤解するかもしれませんが、「立」という文字には「新たにつくる、はじめる」という意味があり、「立冬」は「冬が始まる日」を意味します。

■2025年の「立冬」は?

2025年は11月7日(木)が「立冬」です。今年は秋が短く、一足飛びに寒くなってしまったので、すでに冬の訪れを実感している人も多いかもしれませんね。

■冬を表す「節気」

この「立冬」をはじめとし、冷たい雨が雪に変わり始める「小雪(しょうせつ)」、雪が積もるようになる「大雪(だいせつ)」、本格的に寒くなる「冬至(とうじ)」、1年で最も寒さが厳しくなり始める「小寒(しょうかん)」、いちばん寒い時期の「大寒(だいかん)」の6つが、二十四節気が示す冬となります。なかでも「冬至」は、最も日照時間(昼間)が短い日としてよく知られていますね。「大寒」は1月20日ごろに訪れます。


【「立冬」の時期の特徴】

11月7日か8日ごろから約15日間が“立冬の時期”。本格的な冬を迎える前の行楽シーズンでもありますが、季節をより感じられるこの時期の特徴をご案内しましょう。

■紅葉が進む

南北に長く、東西にも広がる日本列島では、北海道や東北などの北東部、関東・東海・近畿などの中間部、四国・九州などの南西部と、エリアによって気候風土が大きく異なります。それを感じやすいのが、桜前線や紅葉の便りですね。

一般的には最低気温が8度を下まわると樹木の葉が色づくといわれ、5度以下になる日が続くと紅葉が進むと言われています。気温だけでなく、樹木全体が日光を浴びることや、葉が枯れない程度の適度な湿度が保たれているといった条件も紅葉には必要。特に夜間の急激な冷え込みは鮮やかな色づきを助けます。

■茶の湯の正月?

「立冬」のころ茶の湯の世界では、夏の間使用していた風炉(ふろ。涼しげに見える置き型の炉)から、床下に備えられた炉を用いるシーズンへと移行。その冬にはじめて炉を使用することを「炉開き」と言い、「茶の湯の正月」とも呼ばれます。炉開きの茶事(茶会)と言えば、茶人にとって1年でいちばん重要な行事なのです。

■「立冬」を表す季語

暦の上で冬になると、俳句など言葉の世界でも冬の季語を使い始めます。「冬来(きた)る」「冬に入(い)る」「冬立つ」「今朝の冬」などが「立冬」を表す季語。正岡子規が「立冬」を詠んだ俳句を紹介しましょう。

・菊の香や 月夜ながらに 冬に入る(菊の香りが漂うよい月夜だけれど、暦のうえではもう立冬である)

冬立つや 背中合わせの 宮と寺 (立冬の日だ。背中合わせのように神社とお寺が建っている)


【立冬の日に送りたい季節の挨拶文例】

「立冬」は暦の上での冬の始まりです。時候の挨拶と相手の安否を気遣う「挨拶文例」をご紹介します。ぜひ使ってみてください。

まずは冒頭の挨拶から。

■1:「立冬の候、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます」

■2:「立冬を迎え、吹く風にも冬の気配が感じられます」

■3:「暦の上では冬となりました。お変わりなくお過ごしでしょうか」

■4:「穏やかな小春日和が続くこの頃ですが、お元気でいらっしゃいますでしょうか」

「小春」は旧暦10月の異称で、現在の11月から12月上旬頃にあたります。晩秋から初冬にかけての、暖かく穏やかな晴天のことを表す言葉で、春の季語ではなく、冬の季語になります。くれぐれも、お間違えなく。

次に、「立冬」の頃の「結びの言葉」はどんなものがふさわしいでしょうか。

■5:「早めの冬支度で、お互い風邪をひかぬよう過ごしましょう。

■6:「これから冷気が深まってまいります。あたたかくして過ごしくださいませ」


【ビジネス雑談に役立つ「立冬」の雑学】

■「木枯らし1号」ってどう決まる?

天気予報などで、「今年も木枯らし1号が観測されました」というニュースを聞いたことがあるでしょう。「木枯らし1号」とは、季節が秋から冬へと変わる時期に、その年初めて吹く、北よりの強い風のこと。具体的には、10月半ばの晩秋から11月末の初冬の間に、初めて北よりの風が毎秒8メートル以上を記録した場合のことです。

もともと「木枯らし1号」という呼び名は、日本気象協会出版の「気象」という雑誌で用い始めたもので、その後、気象庁が東京地方と近畿地方で基準を定め、一般に定着していきました。

「『1号』があるなら、『2号』『3号』もあるの?」と思うかもしれませんが、2号の発表例は今のところありません。もちろん、2号に相当する風が吹かないわけではないのですが、吹いたとしても1号に比べて注目・関心度合いが大きく下がるため現状の発表の対象は1号のみで、2号以降の公表事例はありません。

■「木枯らし1号」のついでに…「春一番」って何?

季節が冬から春へと移ろう時期に、初めて吹く暖かい南よりの強い風のことを「春一番」と言います。具体的には、暦の上の立春(2月4日ごろ)から春分(3月21日ごろ)までの間に、広い範囲で初めて南寄りの風が吹き、気温が上昇する現象のこと。この強い南風は、竜巻などの突風(とっぷう)を伴うこともあり、注意が必要です。

「木枯らし1号」と「春一番」は、ちょうど対のようになっている言葉なのですね!

■「立冬」のころの行事

七五三

以前は11月15日に行われていた、子どのの成長を祝う行事。今では11月中の土日に行われることも多いようです。実は「七五三」の名でこの祝いが盛んになったのは、明治時代の東京においてでした。子どもに晴れ着を着せてお参りし、千歳飴を買うなど、一連の行事が行われるようになりました。

雪吊り(ゆきづり)

「雪吊り」とは、北陸の湿った重い雪が積もって大事な枝が折れないよう、縄で枝を吊る作業です。石川県金沢市にある「兼六園」の雪吊りは、その仕上がりの美しさから、日本の冬の景観を象徴するものとなっています。庭師が芯柱に上って縄を配る雪吊り作業は、11月1日から11月中旬まで、大小含めた雪吊り作業は12月上旬ごろまで続く、兼六園の冬の風物詩です。

雪の兼六園

■季節の花

水仙(スイセン)

生け花としても人気があるスイセンは、11月頃から早咲きのものが開花を始め、冬を通して3月頃までが見ごろです。お正月の生け花として思い出す人も多いかもしれませんね。白い花びらと黄色の冠のコントラストが美しく、気品を感じさせる花です。兵庫県淡路島の水仙郷、福井県の越前海岸、千葉県南房総の鋸南町は水仙の日本三大群生地と言われています。

ヒイラギ

葉の縁にあるトゲが邪気を祓うと信じられ、節分にイワシの頭と一緒に玄関の外に飾ったり、鬼門よけに庭木にしたりと、古くから魔除けの木として親しまれてきました。キンモクセイと同じモクセイ科で、キンモクセイに似た小さな白い花を咲かせ、柔らかな香りを漂わせるのが特徴です。

山茶花(サザンカ)

ツバキによく似た山茶花は、10月~12月頃に花を咲かせるツバキ科の樹木です。ツバキより葉がやや小さく、花びらが散るときには、1枚ずつ落ちる姿も特徴的。「さざんか さざんか咲いた道。焚き火だ 焚き火だ 落ち葉焚き」と歌われた(「たきび」)ように、一年中緑の葉をつけている山茶花は、以前は多くの家で生け垣として利用されていました。

■冬の養生食…「旬」を迎える食材は?

「食欲の秋」「実りの秋」などといわれるように、この時期は食材が豊富で気候もよく、食欲が旺盛になる時期です。「立冬」のころに旬を迎えるのはこんな食材です。

野菜

・白菜 ・小松菜 ・ホウレン草 ・春菊 ・ブロッコリー ・サツマイモ ・里芋 
・大根 ・カブ ・ニンジン ・ゴボウ ・レンコン 

果物

・柿 ・リンゴ ・ミカン

きのこ

・シイタケ ・エリンギ ・マッシュルーム ・エノキダケ

魚介

・ヒラメ ・フグ ・ハナチ(イナダ) ・シシャモ ・ニシン ・鱩(はたはた) ・鰆(さわら) ・鱧(はも)

「鰆(さわら)」は春の魚と思われがちですが、回遊魚なので地域によって水揚げされる時期が異なります。瀬戸内では春、関東では冬が一般的。「鱧(はも)」は7月の祇園祭のころにおいしいため祇園祭を「鱧祭」ともいいますが、「立冬」になると脂がのって「落ち鱧」と呼ばれるように。年に2回旬を迎えます。また、11月の「新蕎麦」にはなじみがあると思いますが、海苔も11月から摘み始めるのだそう。「立冬」のころの「新海苔」は、柔らかくより風味豊かなのだとか。

■「立冬」を英語で言うと?

英語で言う場合には、下記のように説明するといいでしょう。

・the beginning of winter

・the first day of winter according to the lunar calendar

・"Ritto" means the day when winter begins.(「立冬」は冬が始まる日という意味です)

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街のステーショナリーショップや書店などには、早くも2026年の手帳やカレンダーが並び始めました。年の移ろいにふと意識が向くこの時期、暦の上で冬の訪れを告げる「立冬」が、毎年11月7日ごろにやってきます。現代では季節感が曖昧になりがちですが、こうした言葉に目を向けることで、時間の流れに静かに寄り添う心の余裕が生まれるのではないでしょうか。日々に追われる大人世代だからこそ、季節の節目を意識し、丁寧な時間を育てるきっかけにしてみてはいかがでしょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社)/『類語類例辞典』(小学館)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)/『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /『花言葉・花辞典』(ユーキャン自由国民社) /『心が通じる 手紙の美しい言葉づかい ひとこと文例集』(池田書店)/気象庁「はれるんライブラリー(https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq.html) :