『MEN’S Precious』ウォッチアワード 2024【時計を愛して止まない「審査員の素顔」】

毎年恒例の新作ラグジュアリーウォッチの祭典『Precious』ウォッチアワード 2024の審査員の方々に、時計に夢中になったきっかけや理由、付き合い方など、ラグジュアリーウォッチとの素敵な関係を徹底取材。

今回は、桐蔭横浜大学教授・時計ジャーナリストの並木浩一さんに、ラグジュアリーウォッチとの素敵な関係を徹底取材しました。

並木浩一さん
桐蔭横浜大学教授・時計ジャーナリスト
(なみき・こういち)出版社勤務を経たのち、京都造形芸術大学大学院にて博士号を獲得し、研究者の道に進む。人間が行う「静」の表現として時計を探究する一方、「動」の表現としてダンスを研究。スイス取材には、日本のメディアが参加し始めた1990年代から参加。表象文化論的な切り口で時計を論じる視点に定評がある。

時計ジャーナリスト・並木浩一さんに徹底取材!【ラグジュアリーウォッチとの素敵な関係】

1.ずばり、腕時計のおもしろさとは?

時計は正確さが第一なのか? 精度の点でクオーツは機械式に勝ち、今や自動修正される電波時計も登場。それでも機械式の優位性は揺るぎません。

トゥールビヨンが示す高い付加価値はその一例で、美的・文化的・技術的価値など、正確さよりも重要なものがあるのでは、という問いにたどり着きました。そんな観点で時計を語ることは時計の文化を語ることでもある。時計には表象文化論として語れるおもしろさがあるのです。

2.時計に目覚めたきっかけは?

1994年に訪れたスイスの時計展取材です。仏文科を修めていた私が、「初めてフランス語が生きた」と感じた新鮮さと、スイスのフランス語圏で生まれた時計文化を体感できたことが大きいです。

1970年代、日本製腕時計がスイス時計界に与えたクオーツショックに対する微かな原罪意識とも重なり、両国の文化的摩擦のなかに飛び込んだおもしろさも。そして、それは時計が文化を表象できると気付いた瞬間でもありました。

3.時計との関係のある大学での研究内容とは?

桐蔭横浜大学教授・時計ジャーナリストの並木浩一さんの私物
 

時計を表象文化論の視点で語るためにも、編集職のかたわら研究者を志しました。そこで芸術を学ぶ必要性を感じ、バレエ研究を始めます。

のちに会社は辞して現職に。静的なアートを時計とするなら、バレエはいわば動的なアート。現在も時計と並行して、「ボレロ」で有名なモーリス・ベジャールというバレエ振り付け家を研究しています。人間の生々しさを踊る表現には時計に通じるものを感じます。

4.時計の偏愛や収集癖はありますか?

桐蔭横浜大学教授・時計ジャーナリストの並木浩一さんが愛用する時計ミネルバのコレクション
 

今は「モンブラン」の傘下に収まる時計工房の『ミネルバ』が、かつて製造販売していた機械式ストップウォッチを収集しています。例えば、3秒計や10秒計、100秒計という何に使うかわからないものや、カウントダウン式ヨットタイマーまで、手元には100を超える数があります。

フランス語ではストップウォッチはクロノグラフと呼びますが、その魅力はパーソナルな時間の切り取りにあると思います。実際に計測しなくても、いつでも測れる準備がある。そこにロマンを感じてしまうんです。

※掲載したアイテムはすべて私物です。店舗へのお問い合わせはご遠慮ください。

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PHOTO :
池田 敦(CASK)
EDIT&WRITING :
安部 毅、安村 徹(Precious)
文 :
高村将司