20世紀最大の才能、ヒルマ・アフ・クリントの高さ3mを超える巨大な連作が世界を変える
スウェーデン出身の画家、ヒルマ・アフ・クリント。近年、抽象絵画の先駆者として再評価され、一躍脚光を浴びています。全作品約140点、すべてが日本初公開の、見逃せない展覧会が開催中!
この展覧会の見どころについて、美術ジャーナリストの藤原えりみさんにご紹介いただきました。
【今月のオススメ】『ヒルマ・アフ・クリント』《10の最大物, グループIV, No. 3, 青年期》

1907年 テンペラ・紙(キャンバスに貼付) 321×240cm ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation
〈10の最大物〉は、複数のシリーズからなる代表的作品群「神殿のための絵画」のうちのひとつ。10点組の大作で、幼年期、青年期、成人期、老年期をテーマに、人間が生まれてから死ぬまでのサイクルを表現している。ぐるぐると渦を巻く文様はヒルマ・アフ・クリント作品によく登場するモチーフ。高さ3mを超えるサイズにも言葉を失う。
今年最注目の展覧会です。ヒルマ・アフ・クリント。20世紀初頭のスウェーデンで活動した画家で、1000点を超える絵画を残しながら「私の死から20年間は公開しない」よう希望していたと言い伝えられている、謎めいた女性です。死後50年以上が経った’18年、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で回顧展が開催され、60万人以上が訪れて一気に注目されました。私も「こんな人がいたなんて!」と驚いたのを覚えています。
展覧会に足を運ぶなら、その前にぜひ、1本の映画を観ていただきたいと思います。『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』という、’19年にドイツで制作され、’22年に日本で公開になったドキュメンタリー作品。ヒルマ・アフ・クリントは「カンディンスキーやモンドリアンに先駆けて抽象絵画を創案した」と話題になっており、その作品は神秘主義的な視点から語られていますが、そもそも彼女が描こうとしていたものはなんだったのか、ということが、この映画でよくわかります。
それは、「目に見えないもの」。彼女が生きた時代は科学技術が急激に発達し、それまでキリスト教がつくり上げてきた価値観が崩壊。多くの人が、「世界には目に見えないものが存在している」ということに気付きました。美術においても、人はずっと「見えるもの」を留めようと絵を描いてきましたが、見えないものを描こうとすることが、抽象絵画を生んだともいえます。北欧の美しい自然のなかに暮らしていた彼女は、画家としての自分の使命として、「目に見えないものこそ表現すべき」と考えたのでしょう。
それを踏まえて、高さ3mを超える連作〈10の最大物〉と対峙する。ハッとする瞬間がきっと訪れます。(談)
◇Information『ヒルマ・アフ・クリント展』
開催期間:開催中〜2025年6月15日まで
会場:東京国立近代美術館
開室時間:10:00〜17:00、金・土曜日は〜20:00(入館は閉館の30分前まで)
休室日:月曜日(ただし3月31日、5月5日は開館)、5月7日
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- EDIT&WRITING :
- 剣持亜弥、喜多容子(Precious)