連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People
明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、大阪の「隆祥館書店」で代表取締役を務める二村知子さんにインタビュー!
シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)日本代表として活躍した後、家業である書店を引き継ぎ、代表を務める二村さんに、「街の本屋」として取り組むさまざまな活動について、詳しくお話しをうかがいました。
店で、選書で、イベントでつながる。「街の本屋」という文化を未来へ

大阪メトロ「谷町六丁目」駅近くの「隆祥館書店」。店頭に雑誌を置いたラックが並ぶ、売り場面積13坪ほどの「街の本屋」だ。30年前、父と母が営んでいたこの家業を二村さんが手伝い始めた頃、全国には本屋が約2万6000軒あった。今では6000軒を割っている。
「10年ほど前に、セレクトショップみたいな、おしゃれな本屋に改造しようと思ったことがあります。でも、高齢の方たちが好まれる脳トレ雑誌とか、子供たちが読む漫画雑誌や学年誌とかは置かないことになってしまう。それでいいのか、と迷って。これまでずっとうちで本を買ってくれていた人たちは、どこで本に接するのだろう、と。いろんな方に相談して、このままでいよう、と決断しました」
ネット書店や電子書籍の隆盛、書店の規模に応じて配本数を決める「ランク配本」システムなど、小さな街の書店には苦難も多い。
「生き残るためには、自ら本を読んで、来てくださるお客さんの趣味や嗜好をしっかりつかんで、いいと思う本をおすすめする、そういうことを地道に続けていくしかないと思いました。だからお客さんにはできるだけお声がけして、いろんなお話をします。コロナ禍のときは他府県の方から、店に行けないから本を選んで送ってほしいと連絡をいただいて、『1万円選書』を始めました。質問事項をカルテにしたものに書き込んでもらい、おすすめの本をピックアップします。私自身、心身が辛かったときに一冊の本に救われたことがあったので、そういう経験でもお役に立てたらと」
’11年から続けている「作家と読者の集い」イベントでは、毎回、50〜100人が集まる。
「ジャーナリストや学者の方の本をご紹介することが多いです。本のイベントを通して、伝えるべきことをちゃんと伝えたい、という想いがあります。世の中にあるさまざまな問題を知って、見て見ぬふりはできないから」
本屋は文化だ、と二村さんは言う。本を媒介にして、人とつながり、社会を問い続ける。
◇二村さんに質問
Q. 朝起きていちばんにやることは?
カーテンをバッと開いて太陽の光を浴びる。悩んで眠れない夜があり、何かの本で朝日がいいと知って、それから日課に。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「(おすすめした本について)あの本、すごくよかった」
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
美術館やコンサートに行きたい。大阪中之島美術館とか。コンサートなら大好きなユーミン。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
お酒を飲みながら本音で語り合う文壇バーをやりたい。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
本屋は続けていないかも。でも、本と関連するサロンのような、人が集まれる場所をやっているかな。
Q. 自分を動物にたとえると?
娘に聞いたらミーアキャットに似ていると言われました。
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- PHOTO :
- 香西ジュン
- 取材 :
- 木佐貫久代