「今日はなんだかアイスを食べたい気分!」そう思い立って訪れたアイス専門店や、スーパーやコンビニエンスストアのアイスコーナー。毎週のように新作が登場するなか、あなたは何を基準に商品を選んでいますか?

いつものお気に入り? 広告で見かけて気になっていた新商品? それとも、パッケージやネーミングでひと目ぼれしたものですか?

そんなふうに直感に頼るだけでは、本当においしいアイスを見逃している可能性が大!なのです。

アイスクリームの専門家は、アイスを選ぶ際に、必ずあるものをチェックしています。そして、アイスをベストの状態で食べるのにも、実はちょっとしたコツがあると断言されます。正しい選び方、食べ方を知らないままでは、一生アイス本来のおいしさを堪能できないかもしれません!

今回は、年間1,000種類以上のアイスを試食するアイスクリーム評論家・アイスマン福留さんから、最高においしいアイスを食べるための8つの条件を教えていただきました。

■1:パッケージを見てアイスの「種類」を確認する

乳成分の量によって種類は異なる
乳成分の量によって種類は異なる

一口にアイスといっても、乳成分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓の4つに分類されます。アイスを買う際は、商品のパッケージを見て、種類を確認しましょう。

(1)アイスクリーム・・・乳固形分15.0%以上、うち乳脂肪分8.0%以上のもの。『ハーゲンダッツ』や『ピノ』など。

(2)アイスミルク・・・乳固形分10.0%以上、うち乳脂肪分3.0%以上のもの。『ジャイアントコーン』や『チョコモナカジャンボ』など。

(3)ラクトアイス・・・乳固形分3.0%以上。『明治エッセル スーパーカップ』、『爽』など。

(4)氷菓・・・乳固形分がほとんどないアイスキャンディーやかき氷。『ガリガリくん』、『あずきバー』など。

ただし、同一ブランドでも、商品フレーバーによって種別が異なることもあります。たとえば森永乳業の『ピノ』シリーズのなかには、アイスミルクや氷菓もあります。このなかで、高級感やミルクのコクなどを重視するのであれば、もっとも乳成分の多いアイスクリームがおすすめ。

さらに、アイスクリームのなかでも、素材や製法にこだわりプレミアムアイスクリームと呼ばれるものは、乳成分の割合が特に高く、空気の混入率の低いという特徴があることから、ずっしりとした深い味わいがありつつ、舌触りがなめらかだといいます。

「プレミアムアイスクリームは、法的な規格がなく、どの成分が何パーセント、といった明確な基準はありません。また、メーカーによって、何をプレミアムとするのか?という取り扱いが異なります。このため、パッケージのラベルにプレミアムアイスクリームと明記されているわけではないのですが、ただ、価格帯としては、1カップ250円から300円くらいのものが多いです」(アイスマン福留さん)

ちょっとゴージャスなアイスを味わいたい気分のときには、その価格帯のアイスクリームを選ぶといいかもしれませんね。

■2:メーカーやブランドの「コンセプト」を知る

コンセプトを知ればアイス選びはもっと楽しい
コンセプトを知ればアイス選びはもっと楽しい

アイス選びにおいては、メーカーやブランドのコンセプトを知っておくことも有益だとアイスマン福留さんは主張します。

「たとえば、ハーゲンダッツの企業理念は”完璧を目指す”。だからこそ、商品の完成度にもとことんこだわっているんですね。他方、『ガリガリくん』で知られる赤城乳業は“遊びましょ。”をスローガンに掲げており、いつも商品に遊び心があります。

また、企業単位だけでなく、ブランドごとのコンセプトも要チェックです。たとえば、森永乳業の『MOW』は低価格でプレミアムなおいしさを提供するという“Next Premium”、同じ森永の『PARM』は平日をちょっと贅沢にするという“Daily Premium”というコンセプトがあります。そういったつくり手の狙いを知っておくのも、おもしろいと思いますよ」(アイスマン福留さん)

企業やブランドのコンセプトをあまり気にしたことがない、という人が多いかと思われますが、コンセプトは商品選びの手がかりになります。そして、「この商品にはこんな思いが込められている」という背景をふまえて味わえば、よりおいしく感じられるはずですよ。

■3:「いつもとは違う」スーパーやコンビニにも足を運んでみる

素材にこだわった最高のアイスを探しに行こう
素材にこだわった最高のアイスを探しに行こう

おそらく大抵の人にとって、アイスを買う場所といえば、自宅や職場の近くのスーパーやコンビニのはず。もちろん、いつもの場所で手軽に買うのもありですが、よりアイスの世界を楽しむにはどこに行けばいいのでしょうか?

穴場はナチュラルローソンや成城石井ですね。たとえば、高知県の久保田食品や、松崎冷菓のご当地アイスなど、現地まで行かないとなかなか買えないアイスがあるんです。室戸の海洋深層水を使った塩バニラアイスなどは絶品ですよ」(アイスマン福留さん)

アイス好きなら、これは行かねば……! ご当地アイスに舌鼓を打つべく、ぜひナチュラルローソンや成城石井に足を運んでみましょう。

■4:買ったアイスは保冷バッグや保冷剤で「冷やして持ち帰る」

おいしく食べるには保冷バッグは必須
おいしく食べるには保冷バッグは必須

アイスは温度変化にとても弱く、一度溶けたものを再凍結させると口当たりが悪くなったり、風味が悪くなったりするおそれがあります。こうしたアイスの品質低下を防ぐために、お店で買ったあと持ち帰るまでに、どのように工夫すればよいのでしょうか?

「僕の場合、保冷バックに入れて、さらに保冷剤ふたつで挟んで持ち帰るようにしています。使っている保冷剤は、表面温度がマイナス16度になる”氷点下パック”という、強力タイプです。もちろん、一般の方が気軽にアイスを楽しむのに、ここまで徹底するのは現実的ではないかと思いますが、スーパーで買った場合はドライアイスをいただくなど、なるべく溶けないように工夫したほうがいいでしょう」(アイスマン福留さん)

普段、何気なく買うアイスはともかく、さきほどご紹介したご当地限定アイスや、などをわざわざ買いに行くなら、保冷バッグくらいは持参したほうがよさそうですね。アイス専門店ではもちろん、保冷をしていただいて持ち帰りましょう。

■5:なるべく買って「すぐに」食べる

冷凍庫に放置はNG
冷凍庫に放置はNG

アイスは安定的に、マイナス18度以下できちんと冷凍保存されていれば、微生物が増殖せず、品質劣化を招きにくいといわれています。そして、家庭の冷凍庫の温度は、一応マイナス18度以下に設定することが可能です。

とすれば、アイスは家庭の冷凍庫に保存しておけば安心とも思えますが、そうとは限りません。品質が保たれる条件のうち、安定的にという条件がクセモノなのです。家庭の冷凍庫はどうしても開け閉めするので、そのたびに庫内の温度が上昇し、マイナス18度を安定的に保つことができません。

「アイスは自分が食べたいときに食べるのが一番おいしいのですが、ただ、食べるタイミングをはかって、ずっと冷凍庫に長く保存するのはおすすめできません。たとえば、森永の『チョコモナカジャンボ』は、パリパリ食感を保つために、製造から5営業日以内に店頭に並ぶよう、鮮度管理を徹底しているんです。なのに、購入後に家庭の冷凍庫に放置してしまうと、こうしたメーカー側の努力もむなしく、食感が悪くなるおそれがあります」(アイスマン福留さん)

アイスは賞味期限が設定されていませんが、購入後なるべく早く食べるようにしましょう。もし、冷凍庫に入れたなら、開閉は最小限に!

■6:少し「溶けた状態」でいただく

少し溶かしてから食べましょう
少し溶かしてから食べましょう

きちんと保冷して持ち帰った直後、あるいは、冷凍庫から出してすぐのアイスは、カチカチに凍っています。このまま食べるか、それとも、少し溶かすのか、どちらがおいしく食べられるのでしょうか?

「部屋の温度にもよりますが、10分ほど置いて、少し溶かすのをおすすめします。ソフトクリームのようなやわらかさになって、表面に少しツヤが出たら食べごろでしょう。マイナス18度というのは、あくまで微生物を繁殖させない保存に適した温度であって、できたてのアイスの温度はマイナス5度から7度くらいなんです。マイナス18度の環境でカチカチに凍った状態よりも、それくらいの温度に戻してあげたほうが、できたてに近いような風味を楽しむことができます」(アイスマン福留さん)

ソフトクリームのように、少しやわらかくなってから食べるようにしましょう!

■7:大きめの「しっかりしたスプーン」で食べる

しっかりすくえるスプーンを使おう
しっかりすくえるスプーンを使おう

アイスを食べるスプーンにも、こだわったほうがいいのでしょうか? アイスマン福留さんによると、ウォームテックスプーンがいいそうです。

「コンビニでもらえるプラスチックのスプーンは、ちょっと頼りないかもしれません。アイスをしっかりすくえる、大きめのスプーンを使ったほうがいいでしょう。ちなみに、最近では、ウォームテックスプーンというアイス専門のスプーンもあります。これは、炭素繊維強化プラチックスという熱伝導の高い素材でできており、手の熱が伝わることで、アイスを自然に溶かすというすぐれものです。こだわって食べるなら、使ってみるのもいいでしょう」(アイスマン福留さん)

ネット通販でも販売されており、価格は¥5,400(税込)。最高においしいアイスのためなら、投資してみてもいいかもしれません!

■8:「温かいお茶」と一緒に食べる

アイスに合わせる飲み物は温かいお茶が一番!
アイスに合わせる飲み物は温かいお茶が一番!

最後に、アイスに合う飲み物を尋ねたところ、温かいお茶がベストとのこと!

「アイスを食べていくうちに、口のなかが冷えて感覚が鈍くなってしまいます。アイスの味をしっかりキャッチできる口内環境を保ち、かつ、アイスの甘みを引き立てるためには、温かいお茶が望ましいです」(アイスマン福留さん)

専門家に話を聞いてみると、アイスは選び方、食べ方によっておいしさに大きく違いが出ることがよ~くわかりましたね。何気なく食べるのはもう卒業! ぜひ今回ご紹介したことをヒントにして、最高においしいアイスクリームを堪能しましょう。

アイスマン福留さん
アイスクリーム評論家、一般社団法人日本アイスマニア協会 代表理事
(あいすまんふくとめ)年間に食べるアイスの数は1000種類以上。情報サイト「コンビニアイスマニア」を開設し、2010年から「アイス評論家」として活動を開始。ご当地アイスが集結するアイスクリームイベント『あいぱく』を主宰するほか、業界紙などにコラムを連載、メディアにも出演中。著書に「日本懐かしアイス大全」(辰巳出版)がある。
コンビニアイスマニア
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美