「あれ、何だったっけ?」「昔は難しい本を読んでいたけれど、最近はめっきり読めなくなった」などと感じることはありませんか? 年齢と共に、脳も老化するもの。ただ、どんどん頭が悪くなっていくのは避けたいですよね。人生、一生勉強。いつまでも知的な女性でいたいと思いませんか?

そこで今回、認知科学者の苫米地英人さんに、IQ(知能指数)を高める良習慣をお聞きしました。実は、IQは後天的に向上できるのです! これらの習慣を続けてゆけば、人生をより輝かせることに繋がります。それは一体、どんな習慣なのでしょうか? 

■1:「大量の読書」をして圧倒的な知識の習得をする

月100冊の読書でIQアップを目指しましょう
月100冊の読書でIQアップを目指しましょう

人生をより輝かせるために、「思考や人生のゴールの抽象度を高め、より社会的なものにする」ことを推奨する苫米地さん。実は、物事をより広い視野から眺められるようになることが、その第一歩。

「そのためには大量の知識の獲得が必要で、最適な方法が読書です。しかし、ただ読めばいいのではなく、目的に合った、抽象度の高い知識を得ることがポイントです。本には、あなたが必要とする抽象度の高い知識から、さして必要のない抽象度の低い知識までが収録されています。

例えば、”犬の生態”という知識を本から学ぶ際、優先して得るべきは犬全体に関わる知識で、これが抽象度の高い知識です。しかし、ある犬種が好きだからと、その特定の犬種に関する知識ばかり得るのでは、本来の目的からそれた、抽象度の低い知識の集積になります。

ですから『必要な抽象度の高い情報をインプットしていくこと』が、読書では重要です。知識を選別するには、高いIQが必要ですので、読書を重ねていけば自然とIQも高くなります。また、新たな知識をインプットしていくため、脳の機能にとってもいい習慣になります。

私がオススメしているのは、月に100冊くらいの本を読むことです。この際、知識の習得を目標とするので、小説は除くようにします。大量の知識を得ることで、それまでの思考やゴールが更新されることもあります。その積み重ねで、より抽象度の高い思考や、人生のゴールを新たに創造すればいいのです」

月100冊は無理でも、通勤の時間帯や少しでも余暇がある際などを有効活用して、「読書をして知識を身につける」ことを新たな習慣にしてみましょう。

■2:読む本の内容は「ランダムに選ぶ」

本屋さんや電子書籍を活用して旬な知識を得る
本屋さんや電子書籍を活用して旬な知識を得る

また、未知なる世界との出合いは読書の醍醐味のひとつです。「仕事関係や知っている分野、興味ある分野の本ばかり読むのでは意味がない」と苫米地さんは語ります。

「同じ分野の知識ばかり集積させていても、狭い範囲での思考しかできませんので、抽象度が上がりません。そこで、本屋さんでは、普段立ち寄らない分野のコーナーに行く。もしくは、書店やAmazonの売れ行きランキング・トップ100を片っ端から読む、というのもオススメですね。ランキングに掲載されていた本なら、どんなことにみんなが関心を持っているのか?のリサーチにもなります。

また、電子書籍の活用もオススメです。携帯しやすい、部屋に本があふれないなどの利点のほかに、いちはやく旬の知識が得られるのも、電子版の大きなメリットです。

というのも、電子版は紙の本よりもスピーディに出版できます。ですから、時事性の強いテーマの本、例えば、電子通貨に関する本とか、時々刻々と取り巻く状況が変わるような事象がテーマの本は、紙の本が出る1か月後ではもう古い知識になっていることもあります。その場合は特に、電子版を有効活用します。私の著書でも、『すぐに読んでほしい』というものは、まず電子版を出します」

これまで興味のなかった分野というのは、単に食わず嫌いだっただけかも。思い切ってひも解いてみたら、思わず引き込まれてしまう出合いが待っているかもしれません。ぜひ、読書で未知なる世界をのぞいて、視野を大きく広げていきましょう。

■3:同じ分野の本は「何冊か同時に」読み進める

同じ分野の本はまとめ読みがオススメ!
同じ分野の本はまとめ読みがオススメ!

多くの場合、一冊読了してから次を読み始めます。しかし、同じ分野に関する本なら何冊かを同時に並行して読むことも効果的なのだそう。

「脳は複数の情報を処理するのが得意です。ですから、何冊もの本から知識を得ることで、脳の情報処理スピードは高まり、その意味でも脳にいい習慣になります。

また、本はボーっと読んでいても、あまり知識を得ることはできません。本の内容について、書いてあることの背景や、著者の議論の根拠や論点などを考えながら読むことが重要です。そして、知識や情報は、関連性のあるほかの情報、知識と結びつくことで、初めて意味を持ちます。ですから同じテーマの本を複数、同時に読むことで、学んだ知識が組み合わさり、より深く自分のゴールに必要な知識として身につくのです」

ある本では理解が難しいと感じた言葉や知識も、別の本と合わせ読むことで、理解がスムーズになることがありますよね。ぜひ、複数本を同時に読み進めることで、知識をより立体的に習得してみてくださいね。

■4:本の著者に「なったつもり」で読む

時には読者目線ではなく著者目線で読書する
時には読者目線ではなく著者目線で読書する

読書する際、私たちは無意識的に読者目線で読むものです。しかし苫米地さんは、「著者になったつもりで読むことも必要」と説きます。

「自分にとってまったく未知の世界の本を読む際には、普通に読者目線で読むので構いません。一方で、自分がすでにある程度の知識を持っていたりする分野の本においては、著者になったつもりでの読書がオススメです。その理由は、自分の持っている知識がもたらす先入観などを、読書に介入させないようにするためです。

読書の際に読み取るべきは、著者が重要だと思っている事柄、その議論の意味や狙い、裏側にある意図などです。しかし読者に知識があると、そのフィルターを通して読もうとしますから、自分にとって重要と思われる知識しかインプットできなくなる、ということが起こります。著者がもっと有用な知識を与えようとしていても、それに対して自分の知識や先入観が邪魔してしまうわけですね。

著者目線で読書する際は、まず、著者のプロフィールを読むことから始めます。年齢やこれまでの経歴、現在何をしているかなどの情報得て、自分がどの著者になったつもりで読み、自分の考えなどはいったん忘れて読み進めるのです。そうすることで、読者目線では気づかなかった重要な情報などが、脳にちゃんとインプットできるようになるのです」

特に自分の得意分野などでは、つい、持っている知識が客観的な読書の邪魔をしがちです。そんな時はぜひ、読者目線からの脱却を図り、著者の意図を注意深く、汲み取ってみる態度で臨みましょう。

■5:暗記するときは脳に「重要だと思い込ませる」

予測と失敗の繰り返しが暗記力アップのコツ
予測と失敗の繰り返しが暗記力アップのコツ

読書による知識の習得、資格試験やスピーチなど、大人になっても何かを暗記する必要に迫られることがあります。そんな際には「脳に重要だと思い込ませる」ことが効率的なのだそう。

「記憶には『短期記憶』と『長期記憶』のふたつがあります。どちらの記憶も一旦は脳の海馬に蓄積され、その中から『重要なもの』だけが、長期記憶として残ります。つまり、暗記したいことは脳に『重要な情報だよ』と教えればいいわけです。

ではどうすれば、脳が重要だと思うか? そのコツは、脳に『しまった、暗記に失敗した』と思わせることです。というのも脳は『失敗駆動型』だからです。そのために必要なのが、『答えを予測すること』です。やり方は簡単です。暗記したい文章や言葉などの部分を、例えば黒いもので隠すなどして、予測して答えます。最初は当然、失敗して答えを間違えますよね。それでいいのです。失敗すると脳は『しまった、覚えなきゃ』と、その部分を記憶しようと機能してくれるのです。

つまり失敗すればするほど、記憶の完成に近づくのです。ですから失敗を恐れずに、どんどん答えを予測して暗記するようにしましょう」

学生の頃、皆さんも答えを隠したり、特殊なマーカーで塗って予測する、などといった暗記方法を実践していたことはありませんか? あの要領を思い出して、チャレンジしてみてくださいね。

■6:健康のためではなく「IQのためにスポーツ」をする

IQアップには集団でやるスピーディなスポーツがオススメ
IQアップには集団でやるスピーディなスポーツがオススメ

健康管理のためにスポーツをするという人は多いでしょう。しかし苫米地さんによれば、「スポーツは健康よりむしろ、IQアップに活用するべき」なのだそうです。

「健康であることを目標にするなら、脳に『歩くだけで私は健康になる』とインプットしておけば、通勤の際の歩行やウォーキング程度で十分、健康に導いてくれます。ですからスポーツをするなら、IQアップを考えて取り組むのがいいでしょう。

その際におススメしているのが、個人競技より、集団競技です。なるべくルールが少し複雑なゲーム性が高いスポーツ…例えば、サッカーやバスケットボールなどがその代表です。複数のプレーヤーが細かいルールの中で、スピーディに動くようなスポーツですね。

こうしたスポーツをするときには、高い抽象的な思考も求められ、IQを高めることに繋がります。お子さんがいる人なら、子どもにスポーツをさせるのはとてもいいことです。IQが高められますし、ドーパミンの分泌が促され、大人になったときに抽象的思考で、ドーパミンを出すための訓練にもなります」

個人競技のスポーツでも、格闘技系、卓球、バッドミントン、テニスなどの対戦型であれば、同じようにIQを高めてくれるそうです。スポーツは、なるべくなら複数で行うようにしましょう。

以上、ちょっと意外な習慣が、IQを高めることがわかりましたね。

最後に苫米地さんから「つきつめると、いい習慣とは、その個人にとっての人生の目標やなりたい姿、ゴールに合致している習慣、ということになります。つまり、人の数だけいい習慣・悪い習慣はあるのです」とアドバイスいただきました。

また、魅力的な女性は、抽象度の高い思考を習慣にしているそうです。

「誰からも尊敬される魅力的な女性は、抽象度の高い思考・目標の持ち主です。抽象度の高低を簡単に説明しましょう。例えば、自分のことだけを考えるというのは、抽象度の低い思考・目標です。一方で、自分から範囲を広げて、他者、チーム、会社、社会と関わる世界をより広げて考えられる人は、抽象度の高い思考・目標の持ち主なのです」

読書やスポーツなどを通してIQを高め、より人間として視野と懐の広い「抽象度の高い思考、人生の目的・ゴール」を目指してみましょう。その結果、誰からも尊敬される魅力的な女性として、より人生を輝かせることができるはずですよ!

苫米地英人さん
認知科学者
(とまべちひでと)1959年、東京生まれ。認知科学者(機能脳科学、計算言語学、認知心理学、分析哲学)、計算幾科学者(計算機科学、離散数理、人工知能)、カーネギーメロン大学博士(Ph.D.)、同Cylab兼任フェロー、株式会社ドクター苫米地ワークス代表、コグニティブリサーチラボ株式会社CEO、角川春樹事務所顧問、中国南開大学客座教授、全日本気功師会副会長、米国公益法人The Better World Foundation日本代表、米国教育機関TPIインターナショナル日本代表、天台宗ハワイ別院国際部長、財団法人日本催眠術協会代表理事。現在は、米国認知科学の研究成果を盛り込んだ能力開発プログラム「PX2」「TPIE」を日本向けにアレンジ。日本における総責任者として普及に努めている。著書多数。
『いい習慣が脳を変える 健康・仕事・お金・IQ すべて手に入る!』苫米地英人・著 KADOKAWA刊

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この記事の執筆者
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WRITING :
町田光
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