現在の英国王室は「開かれた王室」として有名。では「開かれてない王室」時代もあった?

英国王室のルイ王子誕生、おめでとうございます! 今年は英国にとっては、おめでたいことの連続! ウイリアム王子の第三子、ルイ王子の誕生に続いて、ウイリアム王子の弟、ヘンリー王子とメーガン・マークルさんの結婚も5月19日の予定。いやあ、めでたいめでたい! です。

4月23日、第三子誕生の数時間後に、セント・メアリーズ病院で記者団にご挨拶されたウイリアム王子とキャサリン妃。写真:AFP/アフロ
4月23日、第三子誕生の数時間後に、セント・メアリーズ病院で記者団にご挨拶されたウイリアム王子とキャサリン妃。写真:AFP/アフロ

ところで、ルイ王子の誕生直後のウィリアム王子とキャサリン妃の映像が話題になりましたよね。真っ赤なドレスに身を包んだキャサリン妃とウイリアム王子、そして生まれたばかりで命名前の王子が、記者団たちの質問に答える姿。爽やかでした! ロンドン市内のセント・メアリーズ病院での出産後、わずか数時間での退院とお披露目に、話題が集中しましたね。

この発表方法は故ダイアナ妃のときに倣ったものでは?と報道したメディアもありましたし、「開かれた王室」の象徴のように語られました。

そこではたと疑問が…。「開かれた王室」? ってことは「開かれる前の王室」というのもあったのか? 

以前より、国民との距離が近いともいわれる英国王室ではありますが、ウイリアム王子やヘンリー王子のご出産の前はどんなことだったのか? ちょっと興味が沸いてきませんか?

1982年、ウイリアム王子誕生の時の模様。同じセント・メアリーズ病院でのご出産だった。写真:Press Association/アフロ
1982年、ウイリアム王子誕生の時の模様。同じセント・メアリーズ病院でのご出産だった。写真:Press Association/アフロ

ウィリアム王子&ヘンリー王子「以前」は、病院でなく「宮殿でご誕生」が慣例?

ウイリアム王子とヘンリー王子の父、プリンス・オブ・ウェールズ=チャールズ皇太子(英国は王国なので、王太子というべきとの説も)の場合、「バッキンガム宮殿で誕生した」といわれています。両王子にとって祖母にあたるエリザベス女王(2世)の場合は、母方の祖父の家で産まれたのだとか。

さらに、両王子の曽祖父にあたるジョージ6世(1936年から1952年まで王位)、つまりエリザベス女王のお父様は、1895年にサンドリンガム・ハウスにて誕生しています。

サンドリンガム・ハウスを訪れたエリザベス2世女王(2002年)。エリザベス女王のお父様=ジョージ6世はこのサンドリンガム・ハウスで1895年に生まれた。写真:Press Association/アフロ
サンドリンガム・ハウスを訪れたエリザベス2世女王(2002年)。エリザベス女王のお父様=ジョージ6世はこのサンドリンガム・ハウスで1895年に生まれた。写真:Press Association/アフロ

つまり、英国王室の方々が出産されるのは、それぞれに縁のある「家」が多かったのです。王位継承権を持つ王族の出産が「病院」でなされるようになったのは、比較的最近のこと。

英国王室と関係の深い名門病院での出産、そして自らの手での子育てという、故ダイアナ妃がこだわったスタイル。そしてそれを範に、新しい時代の英国王室像を牽引される、ウイリアム王子とキャサリン妃。素敵ですね。


エリザベス女王のお父様が誕生した「サンドリンガム・ハウス」とは?

イングランド東部、ノーフォーク州にあるサンドリンガム・ハウス。今も英国王室の方が休暇に訪れる。筆者撮影
イングランド東部、ノーフォーク州にあるサンドリンガム・ハウス。今も英国王室の方が休暇に訪れる。筆者撮影

ところで、アカデミー賞作品『英国王のスピーチ』のモデルになり、第二次世界大戦時に英国国民に勇気を与え続け、厚い信頼を国民から集めたジョージ6世。その誕生だけでなく、亡くなるときもサンドリンガム・ハウスでした。

実はエリザベス女王ご夫妻は、今も毎年のクリスマスを、このサンドリンガム・ハウスで過ごされるのだとか。故ダイアナ妃や、ウイリアム王子、ヘンリー王子もご一緒されたこともあります。

そこで、新たな疑問が沸いてきます。

英国王室にとってそんなにも重要な「サンドリンガム・ハウス」って何? ということ。バッキンガム宮殿は有名だけど、サンドリンガムなんて聞いたことがない、という人が多いはず。いったいそれってどこにあるの? どんなところなの? これらの疑問にも、私アンドリュー、現地より少しだけお答えいたします。

エリザベス女王が愛犬とともに過ごしているときの写真なども飾られている

 ロンドン市内から北東にクルマで約3時間。大学町ケンブリッジの北、ノーフォーク州の森深い中にある「サンドリンガム・ハウス」を訪れてみました。エリザベス女王とご主人のエディンバラ公が毎年クリスマス休暇を過ごされるという、由緒ある宮殿ですが、王室が使用されない時には一般に公開されています。

宮殿は、池や木々に包まれた広大な敷地の一角にある。筆者撮影
宮殿は、池や木々に包まれた広大な敷地の一角にある。筆者撮影

広大な庭園の、なんと美しいこと! そして王室の方々が実際にくつろがれる豪華なリビングや、パーティが開かれてきたボールルームをゆっくりと参観することができます。

実際に女王や王室が使われている居室を一般公開するなんて、素敵すぎます。

中にはエリザベス女王と愛犬のコーギーが、このサンドリンガムで過ごしているときの写真なども飾られていて、「ああ、本当にここで過ごされているんだな」と感慨深い思いになります。

サンドリンガム・ハウスに佇むエリザベス2世女王(1982年)。エリザベス女王はコーギー犬をこよなく愛することで知られているが、ロンドンを離れたこの地でもコーギー犬とともに。写真:TopFoto/アフロ
サンドリンガム・ハウスに佇むエリザベス2世女王(1982年)。エリザベス女王はコーギー犬をこよなく愛することで知られているが、ロンドンを離れたこの地でもコーギー犬とともに。写真:TopFoto/アフロ

その写真について「このコーギー犬は、今女王陛下が飼っていらっしゃるコーギーと同じですか?」と、宮殿内のガイドさんに質問すると…

「女王陛下はよく知られているように、長年コーギー犬を飼っていらっしゃいます。だから、この写真のコーギーがいつのコーギーか、どのコーギーかはよくわからないですね。そもそも、飼っていらっしゃったコーギーの中には、純粋のコーギー種じゃないものもいたかもしれませんしね。他の犬種が混じったのがね。よくわかりませんけれどね」

などと、楽しいお話も聞かせてくれました。

サンドリンガム、それは英国人にとっては象徴的な地名

さてさて、ウイリアム王子第三子誕生のニュースから話が脱線混線して、サンドリンガム・ハウスの話になってしまいましたが、英国王室のお話って、本当に興味が尽きませんね。

脱線ついでにもうひとつ…。

映画『英国王のスピーチ』でも重要な場面になった、ジョージ6世のお父様、ジョージ5世がクリスマスメッセージのラジオ放送を行うシーン。あれも「サンドリンガム・ハウス」での出来事でした。クリスマスの日に、国王が国民に向けてラジオを通じてメッセージを送るという慣習は、このジョージ5世がサンドリンガム・ハウスで1932年に行ったのが、その端緒とか。また、現女王のエリザベス2世は、このサンドリンガム・ハウスから、初めてテレビの生中継という形で、国民にクリスマスメッセージを伝えたそうです。

3代にわたって英国王室から国民へのメッセージが送られた場所「サンドリンガム・ハウス」。そんな歴史があるだけに、英国国民にとっては今も、このサンドリンガムという地名は特別なものがあるようです。

2015年のクリスマスをサンドリンガム・ハウスで過ごされた英国王室の面々。ウイリアム王子、キャサリン妃、ヘンリー王子の顔も見える。今年のクリスマスにはメーガン・マークルさんもここに加わる? 写真AP/アフロ
2015年のクリスマスをサンドリンガム・ハウスで過ごされた英国王室の面々。ウイリアム王子、キャサリン妃、ヘンリー王子の顔も見える。今年のクリスマスにはメーガン・マークルさんもここに加わる? 写真AP/アフロ

筆者が愛用するバーバリーのトレンチコート(エリザベス女王とチャールズ皇太子からワラントを授かる英国王室御用達ブランド)のモデル名も、「サンドリンガム」。つまり、洋服の名前にも使われるくらい、英国王室を象徴する名称なんですね。

その名も「サンドリンガム」と命名された、バーバリーのトレンチコート((昨年購入、今はモデルチェンジの可能性あり)。バーバリーはもちろん、英国王室の御用達ブランドです。筆者着用
その名も「サンドリンガム」と命名された、バーバリーのトレンチコート((昨年購入、今はモデルチェンジの可能性あり)。バーバリーはもちろん、英国王室の御用達ブランドです。筆者着用

2018年5月19日、ヘンリー王子とアメリカの女優、メーガン・マークルさんの結婚式は「ウインザー城」で

さて、いよいよ現地時間5月19日12時(日本時間では同日の20時頃)には、ヘンリー王子とアメリカの女優、メーガン・マークルさんの結婚式が執り行われます。結婚式の会場は、ロンドン西部にあるウインザー城内の礼拝堂。ちなみに、この場所についても遡って調べてみると…。

ヘンリー王子にとってのお兄様、ウイリアム王子とキャサリン妃の結婚式会場はウエストミンスター寺院、お父様のチャールズ皇太子と故ダイアナ妃の結婚式はロンドン中心のセント・ポール寺院で、お祖母様にあたるエリザベス2世女王とエディンバラ公の結婚式はウイリアム王子と同じウエストミンスター寺院。

そしてサンドリンガム・ハウスで生まれたジョージ6世とエリザベス2世女王のお母様、故エリザベス皇太后との結婚式もウエストミンスター寺院でした。

チャールズ皇太子の弟、アンドリュー王子の結婚式もウエストミンスター寺院、チャールズ皇太子の妹、アン王女の初婚時の結婚式もウエストミンスター寺院ということなので、英国王室は由緒正しきウエストミンスター寺院での結婚式というのが一般的なようです。ヘンリー王子はこれに倣わなかったようですね。

ヘンリー王子とメーガン・マークルさん。写真:AFLO
ヘンリー王子とメーガン・マークルさん。写真:AFLO

ちなみに、チャールズ皇太子が2005年にカミラ夫人と再婚したときは、別の場所で結婚式を行った後、今回のヘンリー王子の結婚式が行われる予定の、ウインザー城内の同じ教会で祝福を受けたのだそうです。

いずれにせよ、英国王室の結婚式は英国国教会で執り行われますので、今回もウイリアム王子の結婚式の時と同様、その最高位のお立場であるカンタベリー大主教がご同席されるはずです。

さてさて、どんな結婚式になるのか・・・開かれた王室の結婚式として、英国国内だけでなく、全世界の人々が熱狂し、祝福することだけは間違いないと、私アンドリューは思うのでした…。

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この記事の執筆者
自称大阪生まれ、イギリス育ち(2週間)。広島大学卒(たぶん本当)。元『和樂』公式キャラクター。好きなもの:二上山、北葛城郡、入江泰吉、Soho Squre、Kilkenney、Hay-on-Wye、Mackintosh、雨の日、Precious、Don’t think twice, it’s all right.