男はいくつになっても恋をする。時に楽しみ、苦しみながら…。ルールや正解がないからこそ、想いは尽きないのだ。そこで参考にしたいのが、人生の大先輩たち。彼らは恋愛をどのように考え、装い、行動してきたのだろうか。本連載は、素敵に人生を重ねてきた紳士をバーに招き、お話をうかがいながら、我々が目指すべき道を探っていくものである。そこで前回に引き続き、老舗セレクトショップ、シップスの顧問として、メンズクリエイティブアドバイザーを務める鈴木晴生氏が登場。メンズファッションライターの丸山尚弓が、銀座の名店「ガスライトイヴ」のバーカウンターを舞台にインタビューする。
相手が「溜めて」いるほど自分も誘発される!
【丸山尚弓(以下、丸山)】後編では、女性の本質の見極め方、そして紳士の極意についてもおうかがいしたいと思います。まず、もう一度会いたいと思う人はどんな女性ですか。
【鈴木晴生(以下、鈴木)】自分自身を「溜めている」人ですね。言いたいことを全部言わない人です。そういう人と一緒にいると自分も誘発されて、あれこれ想像しながら言葉を紡ぐことができます。それからディープな人! 経済活動とは無関係な雑学にも興味を持って、純粋に追求できる人。
【丸山】それは、好奇心が旺盛な女性ということでしょうか?
【鈴木】そうでもあるし、僕は「マイノリティ」が好きなんですよね。多勢に流されることなく、自分の目線でものごとを多方面から見られる女性には憧れますね。
【丸山】なるほど〜。では、女性に褒められてうれしくなるポイントは?
【鈴木】「かっこいいですね」なんて言われると、きっとお世辞だろうな〜と思ってしまいます。むしろ、自分でも気が付いていないようなことを言ってくれると、素直に嬉しくなりますね。
【丸山】たとえば?
【鈴木】僕がこんな風にお酒を飲むのを見ていて、「鈴木さんの指はこうなんですね」とか。
ドキッとします。
【丸山】わざとらしいことを言うと安っぽくなってしまうけど、パッと言ったことが相手に響くのは、お互いに響くものがあるからかもしれないし、そもそも縁があるのかもしれませんね。では逆に、これをやられたら嫌だなあと言うところは?
【鈴木】「私、これは嫌いなの」と言われると、僕のことでなくてもちょっと嫌ですね。年齢を問わず、人生をいつもプラスの方向に変えていく意識のある人は、その根底に相手をハッピーにしたいマインドがあるはずなんです。そういう人は自然にこちらのことも気遣ってくれますし、一緒にいるのがコンフォタブルですよね。
【丸山】会話の過程でぽろっと本音が出てしまう。そういう時にこそ、その人の品性が垣間見えますね。
【鈴木】アルフレッド・ヒッチコック監督の「断崖」と言う映画をご存知でしょうか? 僕はこの作品におけるジョーン・フォンテインが、理想の女性像なんです。ケーリー・グラントをぴったりと支えて「いつも自分の方を向いていてくれる」。そんなところにグッときます。
【丸山】そんな女性、なかなかいませんよね。
【鈴木】お母さんのような、ね。男性ってやっぱり、誰しもマザコンなところがありますから。
【丸山】人生で最初に接する異性ですものね…。それにお母さんって、何かあると、いちいち言わなくても、すぐに気が付いてくれますよね。
【鈴木】そうそう。やっぱりサポートしてくれる共同体というか、絆ですよね。
女性に常にそういう役割を求めるわけではないけど、一緒にいてほっとできる時間があるとやっぱりいいですね。
「ファッショナブル」と「スタイリッシュ」は違う!
【丸山】晴生さんが青春時代を送っていた頃の女性には、まだそう言う方が多かったのでしょうか?
【鈴木】本質は変わらないと思いますけど、僕の青春時代はすごく大人っぽいマインドの女性が多かったのは確かです。自分の世界観を持っている女性が向こうから近づいてきて、新鮮なインスピレーションをたくさん与えてくれたんです。教わることが本当に多かったなぁと…。今は僕が情報を伝えていくことの方が多いかな。
【丸山】年齢を重ねていくうちに、立場も変わりますものね。
【鈴木】そうして気づいたこともあります。きっと、僕みたいにコンサバティブな男は、カミソリみたいに切れる女性との相性がいいんだろうな、と。「女性と言うのはこういうものだ」と、シャープにわからせてくれる人です。
【丸山】それは、現実的な部分も持ち合わせた女性ということでしょうか。
【鈴木】そうですね。子供のころはずっと、女性は映画の中のような、髪が長くて優しくて、ロマンチックな生き物だと思っていたんです。ルックスはそういう人がいいけれど、シビアな世の中を一緒に生きていくには、極めて現実的な人がいいんだな、と今では思います。でもそれに気が付くのには随分時間がかかりました。
【丸山】私も一緒に手を取って、人生を歩いて行けるような男性に出会いたいです! では最後に、紳士を目指す男性に向けてのエールをお願いします。
【鈴木】ぜひ、いい意味での「マイノリティ」を目指してほしいな、と思います。考え方、生き方において…。
【丸山】もう少し詳しく聞かせてください。
【鈴木】今の世の中はファッショナブルだけど、スタイリッシュでない人が多いと思います。スタイリッシュというのは、「磨き、馴染んできている」状態なんですね。消費のサイクルが早いとも、なかなかそれが身につかない。だけどしっかりとそういったマインドで研究していけば、必ずものにできます。それがジェントルマンの極意なんじゃないかな。
【丸山】簡単ではないですよね…。
【鈴木】はい。目指すのが難しいからこそ、そこにロマンがあると僕は思うんです。
【丸山】深いお言葉をありがとうございました! 晴生さんのような素敵な紳士が増えることを祈って、私も微力ながらお手伝いしていきます。
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- TEXT :
- 丸山尚弓 メンズファッションライター