年齢や経験を重ねるにつれ、ビジネスやプライベートで格式あるフルサービスホテルを利用する機会も増えるもの。そんなときに恥をかかないマナーの知識、身についていますか? 格式あるホテルでは、利用する際のマナーが問題になることもしばしば。

そこで、ホテル インターコンチネンタル東京ベイの研修担当支配人で、ホテルレストラン協会テーブルマナーマスター講師でもある浅井真紀子さんに、格式あるホテル利用の初心者が陥りがちなNGマナーを伺いました。以下の7つはしないように気をつけてください!

知らなかったでは済まされない!ホテルでの「NGマナー」7選

■1:公共エリアで腕や足を露出する格好をする

ホテルはファミリーや女子会、ビジネス利用、結婚式の出席者など、さまざまな人が出入りする場所。実は、服装にも一定の配慮が必要です。

「明確な決まりがあるわけではないですが、女性の場合、一流ホテルではミュールや腕や足を露出する格好は避けましょう。例えば女性のミュールでストラップのないものは、海外では寝室で履くもの、ベッドサイドのシューズと認識されてしまう場合があります。日本のホテルとはいっても外国の方も多く利用されますので、そういった服装は避けていただく方が無難です。服装について不安がある場合は、遠慮せず予約の際にスタッフに尋ねてみてください」(浅井さん)

ホテルはさまざまなゲストが利用する場所。ストラップのないミュールを履いたり、露出の多い服装をしたりするのは避けましょう。

■2:重い荷物や大きい荷物を無理に自分で運ぼうとする

荷物の扱いは臨機応変に
荷物の扱いは臨機応変に

旅行中など、大きな荷物を持ってチェックインすることも少なくありません。人がたくさん行き交うロビーで大きな荷物を持って歩くのは危険なケースも。浅井さん「ハンドバッグより大きい荷物についてはベルボーイやベルガールにお任せいただいて問題ないというのが前提です」と言います。

「お手荷物についてはサービスマンがとても気を遣っている部分です。割れ物、壊れ物が入っていないかは質問しますし、大切に扱います。もし壊れやすいものが中にある場合などは、それを伝えていただけるといいかと思います」(浅井さん)

とはいえ、どんな状況でも必ずスタッフに持ってもらうことが正しいマナーというわけではないそうです。

「例えば大切なものが入っているときは『大丈夫です、自分で持ちます』と言っていただいてかまいません。あとは、外国からのお客様の場合、スタッフが女性であれば『お持ちします』と言ってもご自分で持たれる方も多くいらっしゃいます。やはり男性のほうが力も強いですから、そういったときは必ずしもスタッフに預けることが正しいマナーというわけではないと思います。マナーとはお互いが気持ちよくコミュニケーションを取るためのもので、絶対ではないんです」(浅井さん)

心配なことはホテルのスタッフに相談し、気持ちよく利用しましょう。

■3:お部屋に飲食物を持ち込む

また、格式あるホテルは持ち込みNGなのだそう。浅井さんによると、「原則として、お客様が外から持ち込まれたもので食中毒などが発生した場合、衛生上の問題でホテルの方で責任を取ることができかねますので、お持ち込みは原則ご遠慮いただいています」とのこと。

ただ、例外もあるといいます。

「特別な理由がある場合は、事前にぜひご相談ください。例えばホテルで準備できないアレルギーを持っている方の食事、ご病気や宗教上の問題で特別な調理をした食事などがある場合、そういう事情があるので持ち込みます、とひと言おっしゃっていただければ、ご準備できる食材や、温度の状況などで、こちらで温めましょうか、などご提案もできると思います」(浅井さん)

必要な場合以外、お部屋に飲食物を持ち込むことは避けた方がよいでしょう。

■4:ほかのゲストが写り込む場所で写真を撮る

写真を撮る場合は周囲によく注意して!
写真を撮る場合は周囲によく注意して!

“インスタ映え”が流行語になる昨今、フォトジェニックなロケーションやインテリアがあちこちにあるラグジュアリーホテルは絶好の撮影スポット。ですが、注意も必要です。

「例えば、その場にいることを知られたくないと思っているお客様もいらっしゃるかもしれません。明確な“マナー違反”ではありませんが、お客様同士のトラブルの原因にもなります。ほかの方がいらっしゃらないときに撮影されるなど、ほかのゲストの方に迷惑がかからないようにご配慮いただきたい部分です」(浅井さん)

心配なときはスタッフに相談を。館内の穴場フォトスポットを教えてくれるかもしれませんよ。

■5:ルームサービスのお皿をお部屋のシンクで洗う

ルームサービスでとったお料理のお皿を部屋のシンクで軽く洗う――。一見、素敵な心遣いのようでもありますが、浅井さんによると「洗ってくださるお客様もいらっしゃるんですが、その必要はありません」とのこと。

お部屋のシンクは洗顔や手を洗うといった目的のために設置されているため、お料理のお皿をすすぐと油で汚れてしまったり、残った食材などで詰まってしまう恐れも。ルームサービスのお皿はそのままお部屋の外に出しておくのが正解です。汚れたお皿が目につかないよう上から軽くナプキンをかけるなど、ほかのゲストへの配慮も忘れないようにしましょう。

■6:朝食ビュッフェで同じお皿を繰り返し使う

ビュッフェのお皿は毎回新しいものを使ってOK
ビュッフェのお皿は毎回新しいものを使ってOK

朝食がビュッフェ形式の場合、ルームサービスのお皿と同様、気づかいから“1枚のお皿を何回も使う”人も少なくありません。ですが、これもマナーとしては避けたほうがよいのだそう。

使用済みのお皿を持って歩くと、ビュッフェ台に行くまで、お料理を取り分ける間も、汚れたお皿を他のお客様の目に晒すことになります。落として割ってしまう可能性も高まります。

「お心遣いはありがたいのですが、前のお料理と味が混ざってしまわず、本来の味を楽しんでいただきたいというホテルの思いもありますので、一度使われたお皿はテーブルに置いたまま、毎回新しいものをお使いいただければと思います」(浅井さん)

気兼ねなく、新しいお皿でお料理を楽しみましょう。

■7:持ち帰りOKと書かれていないアメニティーグッズを持ち帰る

アメニティーグッズは持ち帰ってOKなものか確認を!
アメニティーグッズは持ち帰ってOKなものか確認を!

ホテルでは、個包装の石鹸やシャンプーなどのアメニティーグッズをお持ち帰り可としているところも。ただ、バスローブやタオルなど“お持ち帰りOK”のメッセージがないものを持ち帰るのはNGです。

「ホテルのお部屋は、基本的にその時間その空間にあるものは使っていいですよ、ということになっていますが、なんでも持ち帰るのはやはりいけませんよね。ものすごく極端なケースですが、壁に飾ってある絵画を持ち帰られたなどという極端な事例もないわけではないです(笑)

あとは、チェックアウト時、お部屋を出る際に電気を消していただくなど、当たり前のことをご自宅と同じようにしていただくことも大切かと思います。掃除をするハウスキーパーがどんな気分になるかを想像してみると、どうすればいいかが見えてくると思うんですね。マナーとは結局のところ、相手に対して敬意を表し、自分も気持ちよく過ごすためのものなのです」(浅井さん)

アメニティー使用後、うっかりそのままバッグに入っていることもあります。荷造りする際、よく確かめましょう。

マナーの基本は、相手も自分も気持ちよく過ごせるようにすること。この基本を心に留めて、ラグジュアリーな空間を気持ちよく楽しめるふるまいを身につけましょう!
 

浅井真紀子さん
人材育成トレーナー
(あさい まきこ)日本航空株式会社 客室乗務員、各研修会社における講師を歴任。自らの研修プログラムを確立すべく、株式会社スパークスの設立に参画。現在、ホテルインターコンチネンタル東京ベイ研修担当支配人兼 ホスピタリティ・アカデミー主催。一般社団法人 日本ホテル・レストランサービス技能協会テーブルマナーマスター講師、一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会認定シニアアンガーマネジメントファシリテーター等も務める。著書『仕事がデキると言われている人が必ずおさえている謝罪・クレーム対応の鉄則』小川 貴之・浅井 真紀子共著(クロスメディア・パブリッシング)他。
一般社団法人トラストコーチングスクール
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
よりみちこ