日本全国に温泉宿は数多あれど、情報の海のなかから本当に満足度の高い一軒を見つけ出すのは至難の業。そこで、本連載では、国内外の温泉を巡りその神髄を知り尽くした温泉ジャーナリスト・植竹深雪さんに、自ら足を運び五感で確かめた上質な宿をピックアップしてもらいました。

極上の湯に癒されるのはもちろん、その土地ならではの美食やホスピタリティで心ゆくまでリフレッシュしたい! そんな大人の女性のニーズに応える至福の旅をナビゲートします。今回ご紹介するのは、静岡県・伊豆天城温泉郷 吉奈温泉にある「源泉かけ流しの湯 御宿さか屋」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の4000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『おとな「ひとり温泉旅」のススメ』(三笠書房)、『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

歴史とアートに触れる6種の湯処で伊豆最古級の名湯を心ゆくまで!

伊豆半島の中央部、修善寺駅から車で約15分。豊かな自然に囲まれた天城湯ヶ島の里山に、ひっそりと湧く名湯があります。約1300年の歴史を誇り、伊豆最古級とも伝えられる吉奈温泉は、徳川家康側室のお万の方ゆかりの温泉地。この地で室町時代に造り酒屋として創業し、江戸時代から湯宿として旅人をもてなしてきたのが、今回ご紹介する「源泉かけ流しの湯 御宿さか屋」です。

御宿さか屋の玄関
「御宿さか屋」の玄関。

館内には、それぞれ風情の異なる6つの湯処があり、そのすべての浴槽が、加水・加温・循環・消毒を一切行わない希少な源泉100%かけ流し。泉質は単純温泉で、刺激が少なく優しい浴感の湯が旅の疲れをゆっくりとほぐしてくれます。

6つの湯処のなかでも宿を象徴するのは「お万さん風呂」。徳川家康の側室・お万の方が湯治に訪れた後、子宝に恵まれたという言い伝えにちなむ檜造りの湯で、深めの浴槽に身を預けると、まるで包み込まれるような心地よさに癒やされます。

「お万さん風呂」。

また、「御宿さか屋」を50年以上にわたり常宿としていたという岡本太郎氏が自らデザインした「太郎さん風呂」も必見。人の体に自然と寄り添う独創的なフォルムは、芸術作品であると同時に実用性も兼ね備えた、この宿だけの特別な湯船です。

「太朗さん風呂」。
酒樽の湯
貸切露天風呂「酒樽の湯」。

さらに、かつて造り酒屋だった宿の歴史を受け継ぐ貸切露天風呂「酒樽の湯」や、天城の山並みを望む「オリオン座風呂」、つげ材のやさしい肌触りが心地よい「白藤の湯」など、個性豊かな湯処が揃います。

「こちらの宿の魅力は、源泉かけ流しの温泉はもちろん、造り酒屋だった頃の面影を生かした非日常空間そのものを楽しめること。湯巡りをしながら、お宿が紡いでいた物語に触れられるのが格別です。長い歴史の積み重ねが醸し出す落ち着いた空気のなかで名湯に身を委ね、心穏やかに過ごせる一軒だと感じました」 (植竹さん)

オリオン座風呂
「オリオン座風呂」。
白藤の湯
「白藤の湯」。
貸切露天風呂「子宝の湯」。

旅人をもてなす創作会席と地酒で伊豆の恵みを堪能

夕食は、創作会席「天城越え」かジビエ料理「大名焼き」の2種から好みのコースをチョイス。なかでも女性の支持を集めるのが「天城越え」です。

かつて難所として知られた天城峠を越えて訪れた旅人を、料理でも温かく迎えたいという思いが込められた創作会席で、駿河湾の海の幸や天城の旬菜が多彩に散りばめられています。全18品という圧倒的な品数でありながら、一品ずつのボリュームは控えめ。「おいしいものを少しずつ」という欲張りなニーズを満たしてくれます。また、品数を絞った軽めコースを選択することも可能です。

創作会席「天城越え」
創作会席「天城越え」。
ジビエ料理「大名焼」
山の幸ジビエの猪肉と地元野菜をいただく「大名焼」。フランスでジビエ好きになった岡本太郎氏の発案がきっかけとのこと。

また、造り酒屋をルーツとする宿だけに、地酒のセレクトもこだわりが。入手困難な稀少な銘柄も揃い、美食との極上のペアリングを堪能できます。 

朝食では、天城野菜や地元の豆腐、いわしのつみれなどを鰹だしでいただく宿名物「御館鍋」が登場。朝から体を温め、やさしく胃を目覚めさせたいという思いから生まれた一品で、長年愛され続けています。さらに、沼津産のアジの干物や西伊豆産のひじきなど、夜に続き朝も地元産の食材がふんだんに取り入れられ、出発前のひとときを穏やかに彩ります。 

朝食一例
朝食一例。

以上、吉奈温泉「御宿さか屋」をご紹介しました。6つの源泉かけ流し風呂を巡り、天城の旬を凝縮した料理を味わう豊かな時間を過ごしたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)