少女漫画のレジェンド3人が夢の競演。美しい原画に心奪われる“無限”の世界へ

漫画関連の展覧会が増えてきた昨今、満を持しての少女漫画展が開催されます。しかも萩尾望都、山岸凉子、大和和紀という、少女漫画界の巨匠にして現役3作家を取り上げる贅沢さ! 胸を熱くした名作の数々を、美術として、文化として見てみると…担当学芸員の吉村さんに展覧会の見どころをご紹介いただきました。

吉村 麗さん
国立新美術館 主任研究員・漫画研究者
国立新美術館ではこれまでに「庵野秀明展」(’21年)、「ワニがまわる タムラサトル」(’22年)、「NACT View 02 築地のはら ねずみっけ」(’23年)、「CLAMP展」(’24年)などを担当。

【今月のオススメ】少女漫画・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展

展覧会_1
萩尾望都『ポーの一族』『週刊少女コミック』(小学館) 1976年10号 付録 バレンタイン・カード (C)萩尾望都/小学館
展覧会_2
山岸凉子『日出処の天子』『LaLa』(白泉社) 1980年5月号 扉 (C)山岸凉子
展覧会_3
大和和紀『あさきゆめみし』『月刊mimi』(講談社) 1983年4月号 扉 (C)大和和紀/講談社

国立新美術館開館20周年を記念して開催。1970年代、飛躍的に進化した少女漫画の中心にいた3人の創作の軌跡を、デビュー初期から現在にいたるまでの作品でたどる。カラーイラストや名場面の原画、貴重な資料の数々で、奥深い表現世界に迫る展覧会。国立美術館としては初となる試み。


「少女漫画」というジャンルは、日本を含めた東アジア地域に特有の「女性文化」のひとつで、欧米にはあまり見られません。皮肉なことですが、「男性向けの漫画を女性が読むのは生意気だ」という男女差別があったからこそ、「女性向けの漫画雑誌」が成立し、市場として確保されてきました。逆にフランスだと、バンド・デシネと呼ばれる漫画界は男性作家が9割がたを占め、女性が活躍するのはなかなか難しいんですね。日本にはそもそも少女漫画が育つ土壌があり、少女漫画家が職業として成り立つ社会だったことが、大きく発展を遂げた理由のひとつにあります。

今回の展覧会では、そうした少女漫画の地平を切り拓いた3人の画業をたどります。萩尾望都先生は『ポーの一族』『トーマの心臓』をはじめ、人間の内面を深く掘り下げる文学的な作品を描かれてきました。山岸凉子先生はバレエ漫画の『アラベスク』や『日出処の天子』といった作品で、スタイリッシュな絵と共に、人間の業や現実を描き出しました。大和和紀先生は、『はいからさんが通る』『あさきゆめみし』などで、歴史のなかで女性がどう生きてきたか、ということに切り込んでいます。

ヒット作があるということももちろんですが、3人とも、20歳そこそこでデビューして、80歳近くなった今も漫画家として活躍されているという点でも、まさにレジェンド! 男性社会だった出版界の周縁で果敢にチャレンジを続け、枝葉を伸ばしてきたことにも感銘を受けます。少女漫画を日本の美術史のなかで考え、お伝えすることができたらと思っています。(談)

<Information>少女漫画・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展

会場/国立新美術館 企画展示室2E(東京都港区六本木7丁目22−2)
会期/2026年10月28日(水)〜2027年2月8日(月)まで開催

問い合わせ先

国立新美術館

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

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EDIT :
剣持亜弥