小学校の教室でもよく飼われている、身近な魚であるメダカ。実はメダカにはさまざまな種類があり、見た目がとても美しい種類もいることをご存知でしょうか。以前に取り上げた錦鯉と同様、特に美しい個体は100万円以上の値がつくとも言われています。

そこで今回は、高額なメダカの実態を探るべく、メダカ専門店「めだかの館」大場貴保さんに伺いました。このお店では、一匹100円程度の「黄メダカ」から、5000円〜数万円の高級なメダカまでさまざまな品種を販売しています。

高級メダカ、その最高額はおいくら…?

500種類以上の改良メダカが「高級メダカ」になる理由

金魚のような朱赤色の体色を持つ「楊貴妃メダカ」 画像提供:「めだかの館」
金魚のような朱赤色の体色を持つ「楊貴妃メダカ」 画像提供:「めだかの館」

一般的に、家庭で飼育されているのは改良されたメダカ。その改良メダカのなかで、稀少さゆえに価格が高騰するメダカがいます。

高級メダカの代表的な種類は、鱗の一枚一枚に黒い縁が見られる「ブラックリム」や、黒目部分である瞳孔が小さい「スモールアイ」、錦鯉のように朱赤と白と黒の体色を持つ「3色メダカ」など。それぞれ1匹1万円程度の価格で販売されており、血統や、色の良し悪しといった個体差によって価格が変動します。

野生のメダカと同じ体型の「普通種」よりも体長が短い「ダルマメダカ」 画像提供:「めだかの館」
野生のメダカと同じ体型の「普通種」よりも体長が短い「ダルマメダカ」 画像提供:「めだかの館」

大場さんによると、改良メダカの特徴は大きく分けると以下の4点。

1:朱赤、白、黒、ラメ(光沢のある鱗)など「体色」の違い
2:「ダルマメダカ」などに見られる「体型」の違い
3:「スモールアイ」や「出目メダカ」などに見られる「目」の違い
4:「ひれ」の大きさや形の違い

「現在、改良メダカの種類は500を超えています。そのなかでも観賞魚として人を惹きつける魅力を持つ品種や、新種、珍しい品種、前述した体色や体型などの特徴が最大限に引き出された個体には高値がつくんです」(大場さん)

100万円の値がついたメダカも…!

「琥珀透明鱗スモールアイサムライメダカ」  画像提供:「めだかの館」
「琥珀透明鱗スモールアイサムライメダカ」  画像提供:「めだかの館」

「めだかの館」で最高額がついたメダカは、2010年につくられた「琥珀透明鱗スモールアイサムライメダカ」という品種。めだかの繁殖に携わって約10年になる大場さんも、この品種を目にしたのはこの1匹だけ。なんと、100万円の値がついたそうです。

「『琥珀透明鱗スモールアイサムライメダカ』は、瞳孔が小さい『スモールアイ』の特徴である眼光の鋭さに加えて、クールな印象の体色をもっていました。これらのことから、ニックネームは『信長』とつきました。繁殖して生まれる確率がとても低い品種だったので、100万円という高値がついたんです」(大場さん)

「信長」の特徴のひとつである「スモールアイ」は、スモールアイ同士を掛け合わせてもなかなか産まれることがないそう。非常に珍しいと大場さんは言います。

「スモールアイ同士で繁殖させた場合でも、1000匹中1匹もスモールアイが産まれないケースがあるほど希少なメダカ。はじめて作出された18年前から、継続してコアなファンがいる品種です」(大場さん)

改良メダカの価格は、品種自体の稀少さに加えて、前述した4つの特徴が大きく出ていると、さらに高額になります。「信長」はその典型例なのだとか。

錦鯉や金魚ではなく、メダカを選んで購入する理由

メダカを選ぶわけは? 画像提供:「めだかの館」
メダカを選ぶわけは? 画像提供:「めだかの館」

では、なぜ錦鯉や金魚、熱帯魚など数多ある魚のなかから、メダカを好んで購入するのでしょうか? その理由について、「身近な存在として親しまれている存在であることに加えて、飼いやすいため」だと大場さんは指摘します。

「錦鯉や金魚を本格的に飼うためには、ご自宅に池が必要です。しかしメダカは小さいスペースで飼育ができ、世話の手間も少ないのが魅力。飼育の仕方は一部を除いて、どのメダカも基本的に同じです。ヒーターやポンプといった多くの機材を必要とする熱帯魚などと違い、メダカは初期費用もそれほどかかりません」(大場さん)

メダカは、店で購入するような水槽でなくても、くりぬいたペットボトルや小瓶でも飼うことができるそうです。また、改良メダカは、繁殖する楽しさもあると大場さんは言います。

「例えば3色メダカの色をどれだけ綺麗に出すかといった品種改良も、どんなに長い年月をかけても答えが出ません。それだけメダカの繁殖は奥深いんです。

また国内で日本メダカ協会が主催する品評会が年に2回あります。そこでは、愛好家の方たちが珍しい改良メダカを出品しています。もし当店で買ったメダカで繁殖した改良品種が優勝することがあれば、それは店にとっても名誉なことです」(大場さん)

錦鯉の3色模様に類似しているメダカ「3色錦」
錦鯉の3色模様に類似しているメダカ「3色錦」

高額メダカ4品種!

次にご紹介するのは、現在「めだかの館」で販売されているなかでも特に高額なメダカ。キラキラと光る品種や、体が透き通ったものなど、珍しい品種を教えてもらいました!

■1:「オロチラメ」/一般的な価格:¥10,000

光沢のある鱗を持った品種は「ラメ」と呼ばれるそう。こちらの「オロチラメ」は通称「ブラックダイヤ」と呼ばれています。画像提供:「めだかの館」
光沢のある鱗を持った品種は「ラメ」と呼ばれるそう。こちらの「オロチラメ」は通称「ブラックダイヤ」と呼ばれています。画像提供:「めだかの館」

「オロチラメ」は2018年に作出された新種。大場さん曰く「目新しさから価格が上がっているため、今最も高値の品種のひとつ」とのこと。真っ黒な体色と、泳ぐとキラキラと光る美しいラメを持っています。

■2:「オレンジ黒ブラックリム」/一般的な価格:¥10,000

頭部には色鮮やかなオレンジの発色。珍しい品種の「オレンジ黒ブラックリム」画像提供:「めだかの館」
頭部には色鮮やかなオレンジの発色。珍しい品種の「オレンジ黒ブラックリム」画像提供:「めだかの館」

「ブラックリム」の特徴は、鱗の輪郭が黒くはっきりとでていること。こちらの個体はブラックリムの特徴を持ち合わせた、「オレンジ黒ブラックリム」と呼ばれる品種です。体色のオレンジが色鮮やかに出ていることや黒い模様がハッキリと表現されていることが珍しく、高額な値段がついたそうです。

■3:「3色ラメ幹之」/一般的な価格:¥5,000

通称「3色ラメ幹之(みゆき)」と呼ばれる品種で、価格は柄によって変動します 画像提供:「めだかの館」
通称「3色ラメ幹之(みゆき)」と呼ばれる品種で、価格は柄によって変動します 画像提供:「めだかの館」

3色の体色に、「ラメ」と呼ばれる光沢する鱗を持っている個体。動くとキラキラと光るため、泳ぐと一層美しく見える品種です。3色柄になるのは10%程度で、そのなかでも美しい模様のものはさらに高値がつきます。ちなみに、写真のメダカは、朱赤・白・黒の色がそれぞれ濃く出ており、さらにラメがのっているため、高額な値段がついたのだとか。

■4:「ブラックスワローヒカリ」/一般的な価格:¥10,000

ひれの長さや形で価格が大きく変動する品種で、写真の個体は1匹1万円の上物。画像提供:「めだかの館」
ひれの長さや形で価格が大きく変動する品種で、写真の個体は1匹1万円の上物。画像提供:「めだかの館」

「ブラックスワローヒカリ」は、黒い体色に「スワロー」の特徴である長い尾びれと、「ヒカリ」の特徴である大きい背びれとひし形の尾びれを併せ持っています。「ブラックスワローヒカリ」につく値段は1,000円から 1万円までと幅広く、ひれの長さや形が価格に大きく影響する品種なのだとか。

忙しい女性にもおすすめ!メダカのアクアリウムを楽しもう

家にメダカのアクアリウムをつくってみてはいかがでしょうか。画像提供:「めだかの館」
家にメダカのアクアリウムをつくってみてはいかがでしょうか。画像提供:「めだかの館」

最後に、大場さんに女性に人気なメダカを教えてもらいました。

「『楊貴妃メダカ』や『流星』など、色鮮やかなメダカや背中に光があるメダカが人気です。楊貴妃メダカは数百円、流星は2,000円と気軽に購入できる価格。高額なメダカでなくても、美しいメダカはたくさんいます。キャンディポットに砂利を敷いてマリモや水を入れるだけでも、可愛いアクアリウムができるのでおすすめです」(大場さん)

背中の青い光が流れ星のように見える「流星」。画像提供:「めだかの館」
背中の青い光が流れ星のように見える「流星」。画像提供:「めだかの館」

改良メダカの寿命は2〜3年。近親交配をするため野生のメダカよりも短命ですが、警戒心の強い野生のメダカと違い、大切に育てれば手の上に乗るなど懐くことがあるのだとか。また他の観賞魚に比べて、飼育に手間がかからない点も、忙しい女性に喜ばれているようです。

500種類以上いる種類の特徴を見比べるだけでも、鑑賞する楽しみが広がるメダカ。奥深い改良メダカの世界を覗きに、一度店頭へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2019.1.23 更新
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石水典子
EDIT :
高橋優海(東京通信社)