普段、何気なく見ている、身近な植物の花や実の数々。それらを改めて見つめてみると、洗練された規則的なフォルムで、機能美にあふれていることに気がつきます。
このような自然が生み出した「植物の美しいかたち」をコンセプトに、花、実、種を4cm角の透明のアクリルキューブに封入したのが、京都の「ウサギノネドコ」が販売する「Sola cube」です。
当初はキューブひとつひとつをインテリアオブジェとして販売していましたが、最近はサイドテーブルやマグネット、ハンドルに加工した商品も販売しています。その背景には、自然を大切にする想いがあるのだとか。美しく不思議な「Sola cube」の魅力とその開発ストーリーを、ウサギノネドコの代表取締役兼クリエイティブディレクターの吉村紘一さんに伺いました。
キューブの中に浮かぶ自然の造形美。一番人気はタンポポの綿毛
扱っている植物は季節や製造状況により異なりますが、全部で約30種あるそうです。なかでも、一番人気はタンポポの綿毛。ふわふわとした繊細で儚い綿毛が封入されていることに、見た目の美しさに感動するだけでなく、驚きを覚えます。
「一見お馴染みの素材ですが、この4cm角に入るサイズのタンポポの綿毛は実は10本に1本くらいの出現率しかないんですよ」(吉村さん)
カイガラソウなどの色が鮮やかな植物や、春限定のサクラも人気が高いそうです。
手のひらの上の「小宇宙」ができるまで。「Sola cube」で届ける自然の美しさ
自然の造形美を伝える伝道師になる――「Sola cube」開発のきっかけ
吉村さんが「Sola cube」を構想・開発したのは2006年。樹脂封入キットなどの材料を買いそろえ、自分で植物封入の作業を行い、試作したことがはじまりです。
着想のきっかけは、今も「Sola cube」の定番ラインナップとして存在しているモミジバフウの実を見たときなのだそう。
「街路樹などで植えられている身近なありふれた実なのですが、まるでウィルスのような不思議な放射状の造形を見たときに、グググと引き込まれるものがありました。『自然界にはなんて美しい造形が存在するのだろう!』と感動したことを、今でも覚えています」(吉村さん)
当時、吉村さんは「何か自分自身の表現をしたい、何かものづくりをしたい」と思っていたそう。しかし、このモミジバフウを見たときに「自分自身の表現など、この自然の造形美を前にしたら足元にも及ばない」と、自己表現のための創作は諦めたような感覚を持ったといいます。「それならば、自然界がつくり出した、かくも美しい造形物を伝える伝道師に徹しよう」と、ある種の使命感を強く抱き、「Sola cube」を開発するに至りました。
開発から10年以上経った今でも、ウサギノネドコのミッション(使命)として以下の言葉を掲げています。
私たちは、世界中の人々に自然の造形美を伝えていきます。
そして、誰もが生まれ持つ「センス・オブ・ワンダー」が呼び覚まされる感動体験を提供します。
自然の素材が相手だから、常に試行錯誤の連続
「Sola cube」製作について「むしろ難しくなかったことはありません(笑)」と吉村さんは話します。
製作をはじめたばかりのころは、どの植物なら封入できるかを知ることからスタート。経験を重ねてきた現在なら「これはうまく封入できそうだな」とある程度はわかるそうですが、基本的には封入しないと最後まで問題なく仕上がるかどうかわかりません。さらに気温や湿度の影響を受け、試作段階ではうまくできたのに商品として数をつくった途端に失敗してしまうこともあるといいます。
「アクリル封入はすべて熟練の職人による手仕事ですが、それでも常に試行錯誤の連続。植物素材は念入りに洗浄するなど封入する前のさまざまな下処理をしていますが、それでもうまくいかないこともあります。自然の素材を扱うのはそれだけ難しいことだなと感じています」(吉村さん)
「自然環境にできる限り負荷をかけたくない」という想いから生まれた「Side Table」「Magnet」「Handle」
職人の手でひとつひとつ丁寧に製作される「Sola cube」は、品質を保つために厳しい検品を経て商品となります。植物の大きさがあと少し基準に満たなかったり、キューブの中心からほんのちょっと植物がずれていたり、気泡やチリが混在してしまったり……。一見すると「え? これが理由で商品にならないの?」というものが、厳しい製品基準を設けているからこそ一定数存在します。
「自然の美しさを伝える商品だからこそ、これ以上自然環境へ負荷をかけたくない。そして職人が魂を込めて製作した、個性豊かな自然の造形美を余すことなく世の中に送り出したい」そんな想いを吉村さんはずっと抱いていたといいます。
そこで生まれたのが「Side Table」「Magnet」そして「Handle」。360度眺める 「Sola cube」には至らなかったけれども、十分に魅力を残したキューブを利用して開発したプロダクトです。「Side Table」は今年の1月に発表した新商品。「Magnet」と「Handle」は現在、本格展開へ向け準備中とのこと。新たな3商品について、それぞれ特徴を伺いました。
■1:世界で一つしかないデザインを楽しめる「Sola cube Side Table」
「Side Table」は36個の「Sola cube」をアクリル樹脂で新たに繋ぎ固めた天板を、専用に製作したステンレス製のフレームに載せたプロダクトです。
光の加減によって印象が変わるこのテーブル。デザインは、希望の2種類の「Sola cube」を選んで市松模様のように組み合わせる「Checkerboard」と、多様な「Sola cube」をランダムに入れた「Variety」の2タイプ。また、フレームは「Silver」と「Gold」から選べます。
■2:壁面を光の演出で彩る「Sola cube Magnet」
壁面などに磁石で固定する「Magnet」は、スチール家具や玄関のドア、冷蔵庫などに、加工なしで簡単に取り付けできます。どこでも気軽に付けられるため、季節や気分によって付け替えて模様替えを楽しむのに最適。きっとプレゼントにも喜ばれますよ。
■3:「Sola cube」がドアノブになる「Sola cube Handle」
「Handle」は30mm以下の板に5mmの穴を開けてネジとボルトで板を挟み込んで固定して使うプロダクトです。こちらはがっちりと固定できるため、ドロワーやドアノブとして使えます。クローゼットや戸棚の扉に付ければ、オリジナリティーあふれる家具になりますよ。
「Sola cube」と「Side Table」は、ウサギノネドコ京都店とウサギノネドコ online storeのほかに、全国のミュージアムショップやインテリアショップでも扱っています。ただし、店舗によっては扱っている植物に限りがあるので、「これが欲しい!」と決まっているときは事前に問い合わせましょう。
「Sola cube Magnet」と「Sola cube Handle」の今後の展開も楽しみですね。新たなプロダクトや季節限定プロダクトの販売開始はウサギノネドコ webサイトでお知らせが更新されるので、要チェックです。
最初はその造形美に目を引かれ、次第に自然の不思議を感じていく「Sola cube」。コレクションとして楽しむほかに、ギフトとしても人気なのだそう。それぞれの「Sola cube」にウサギノネドコが独自につけたメッセージ「宙言葉(そらことば)」でキューブを選ぶ人もいるといいます。
「封入された植物の整体や物語を咀嚼してひと言で表現する『宙言葉(そらことば)』をつけています。『永遠に美しく(サマーチェリー)』『大切に守る(センニチコウ)』『固い約束(モミジバフウ)』など、送る相手に伝えたいメッセージでお選びいただければと思います」(吉村さん)
心惹かれる「Sola cube」に出会ったらぜひ手に取ってゆっくり観察して見てください。きっと、いつもは何気なく通り過ぎている自然の造形美を新鮮に感じられますよ。また、いつか誰かの想いを乗せた「Sola cube」に巡り合えるかもしれないとも思うと、さらに楽しみが増えますね。
※掲載した商品の価格はすべて、ウサギノネドコonline storeのオープン価格、税抜です。
問い合わせ先
-
ウサギノネドコ online store
- ウサギノネドコ
- 営業時間/11:00〜18:30
- 定休日/木曜
TEL:075-366-8933 - 住所/京都府京都市中京区西ノ京南原町37
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- ウサギノネドコ
- WRITING :
- 加藤良子
- EDIT :
- 廣瀬 翼(東京通信社)