夏野菜のひとつであるナス。そのナスの数ある種類の中でも際立った存在なのが、京野菜を代表する「賀茂なす」。大きくて丸いその形と黒紫色に輝くそのルックスは、独特のものがあります。その賀茂なすは、普通のナスとどのような違いがあるのでしょうか。

京の伝統野菜をはじめとした京都の伝統的な食文化を広める「京都料理芽生会」に所属し、京懐石 美濃吉本店 竹茂楼で調理総支配人を務める佐竹洋治さんに教わります。

意外と知らない、「賀茂なす」と「普通のナス」の違い 

賀茂なすはどのようなシーンで食べられるもの?

賀茂なす

賀茂なすは、京の伝統野菜のひとつに数えられ、一般的なナスよりも大型で、果肉部分は丸くて直径12~15cmほどもあるナスの一品種です。よく締まっている肉質、そして光沢があるのが特徴の、見た目も美しいナス。昔から、京都ではどのようなシーンで食べられてきたのでしょうか。

「やはり夏の代表的な高級野菜でありますので、夏の時期のさまざまな特別な日、いわゆる『ハレの日』にいただく食材のひとつです」(佐竹さん)

賀茂なすの揚げ出し
賀茂なすの揚げ出し

ハレの日の贅沢な食材、賀茂なす。ここで、その賀茂なすと、一般的に市販されている“長卵形ナス”といわれる品種を「普通のナス」とした場合の違いを佐竹さんに教えていただきました。

味と食感の違いは?

「賀茂なすのほうが、普通のナスより味が濃厚で、中の身が詰まっており、歯ごたえがあっておいしいです。ただ皮が固いのが難点ですが、それはそれで噛み応えがあり、旨みもあります」(佐竹さん)

値段の違いは?

「賀茂なすのほうがお値段は高いですが、値段相応の価値はあり、夏の高級野菜の代表格といえます」(佐竹さん)

手に入れる方法は?

「6~7月頃に旬を迎え、通常のルートで手に入ります。ただ、出回る時期が非常に短いために、時期によって手に入りにくい時期が多々あります」(佐竹さん)

料理法の違いは? 

「賀茂なすは油との相性が非常に良いので、“賀茂なすの揚げ出し”や、フライパンに多めの油をしいて焼き上げる“焼き賀茂なす”が代表的です。また“賀茂なす田楽”も有名です。料理屋によってさまざまな方法でつくられますが、一般的にはフライパンで油を多めにしいて焼き上げ、串を打ち、炭火で焼き上げ、その後に田楽味噌を塗ってさらに焼き上げます。いずれも賀茂なすの食べ応えや旨みが存分に生かされた調理法といえます」(佐竹さん)

保存方法の違いは?

「保存方法は通常のナスと変わりはありませんが、若干、賀茂なすのほうが普通のナスより劣化は早いです。ゆえに新鮮なうちに早めに料理する必要があります」(佐竹さん)

賀茂なすを料理に使うポイントは「歯ごたえ」

賀茂なす田楽
賀茂なす田楽

佐竹さんは、京懐石 美濃吉本店 竹茂楼の調理総支配人として、賀茂なすを調理する際にはあるこだわりがあるといいます。

「賀茂なすの料理で一番大事なのは、火の通し方です。出回る時期が非常に短い賀茂なすでありますが、1週間ごとに、中の種子の固さが微妙に違ってきます。例えば出回る初期の6月初旬頃は、比較的すぐに火が通りやすいですが、7月下旬頃になると中の種子が固くなり、6月初旬頃と比較すると、かなり火が通りにくくなります。このように時期により火の通し方が違ってきますので、いかに“良い歯ごたえを残す火の通し方ができるか”が一番のポイントになります」(佐竹さん)

もし賀茂なすを調理する機会があれば、ぜひ素材の固さと火の通し方に気を配りたいですね。

フランス人は賀茂なすの種子を「キャビアのような食感」と例える

賀茂なすは、欧米の人たちにも認知され、愛されつつあるようです。そのようななか、日本人とは違う角度から賀茂なすが評価される面もあるそうですよ。

「賀茂なすは8月下旬や9月初旬になりますと中の種子が大きくなり、粒々の食感が出てきます。この食感は日本人ではあまり好まれる方は少ないですが、フランス人の方には、この種子の食感がまるでキャビアのような食感である、と好まれます。」

今後、ますます新しい賀茂なすの魅力が広がる可能性もあります。日本人として、京の伝統野菜を代表する賀茂なすに親しんでみるのもよさそうです。

今回ご紹介した京野菜をはじめとした伝統的な京料理を楽しめるイベントが定期的に行われており、次回の開催は2018年9月25日(火)。京都・洛北の老舗料亭「山ばな 平八茶屋」にて「『月見の宴』~月を愛でる~」が開催されます。これは佐竹さんも所属する「京都料理芽生会」とぐるなびが主催するプロジェクト「KYOTO365」によるもの。

京都の北エリアを代表する老舗料亭が集まり、1日限定のスペシャルな懐石料理と日本酒のマリアージュが楽しめるほか、和蝋燭を灯した中での横笛の演奏、「京の月見」などが楽しめるそう。秋の行楽シーズンに、足をのばしてみるのもよさそうです。

問い合わせ先

問い合わせ先

  • 開催日時/2018年9月25日(火)17:30受付開始
  • 開催場所/山ばな 平八茶屋
  • 料金/¥20,000(税込)自由席
  • チケット購入先/https://gurusuguri.com/shop/kyoto365/ev20180925/ ※予定人数に達し次第、受付終了
  • 問い合わせ先/京都料理芽生会「『月見の宴』~月を愛でる~」事務局(株式会社ぐるなび内)
  • TEL:06-6442-8443(京都料理芽生会「『月見の宴』~月を愛でる~」事務局 ※ぐるなび内、受付時間/10:00~18:00 ※平日のみ)
  • 住所/京都府京都市左京区山端川岸町8-1
佐竹洋治さん
京懐石 美濃吉本店 竹茂楼 調理総支配人
(さたけ ようじ)1716年創業の美濃吉10代目当主。佐竹力総の次男として生まれ、立命館中学、立命館高校を経て、立命館大学経済学部卒業後、南禅寺「瓢亭」にて板場修行の道に入る。3年間の勤務を経て、実家の京懐石 美濃吉本店竹茂楼厨房に入る。 以後、ベルサイユ宮殿晩餐会を担当するなど、世界各国での事業に参加し、国内活動は、各地方自治体及び各企業の料理教室、また、小学生、中学生、高校生の食育授業の講師も実施済。大学時代、茶道部に所属していた関係もあり、裏千家淡交会にも所属している。
京都料理芽生会
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利
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