髪のダメージやうねり、頭皮のかゆみなど、多くの女性が大小さまざまな、髪や頭皮に関する悩みを抱えていますよね。
中でも人には言えない、自分ひとりで抱えてしまいがちな、深刻な悩みに「円形脱毛症」があります。原因もわからず、「なぜ、自分が?」と悶々としてしまうことも……。
今回は、そんな円形脱毛症が発生するメカニズムや対処法に近づくべく、美容師である渋谷謙太郎さん、美容整形外科医である丸山直樹さんに、対談形式でお聞きしました。
多くの女性の髪や頭皮に毎日触れている美容師の見地と、体の悩みを医療行為を用いて解決する、医師の見地。この2つが交わることで、円形脱毛症の原因や対策、予防の仕方を解き明かそうという試みです。
円形脱毛症のメカニズムは?
--渋谷さん、丸山先生、朝早くから対談をお受けいただき、ありがとうございます。よろしくお願いします! さっそくですが……美容院にいらっしゃる方で、髪や頭皮に関する悩みを持つ方は多いと思いますが、ある程度年齢を重ねると、円形脱毛症に悩む方も多いと聞きます。
渋谷謙太郎さん(以下、渋谷)「そうですね。ただあくまで僕の印象ではあるのですが、50代前後のミドル世代の方だけではなく、一時的に30代の方にも表れることが多い印象です」
丸山直樹さん(以下、丸山)「円形脱毛症や女性の薄毛に関しては、まだ科学的に解明されていないことが多いのですが、ストレスやホルモンバランスが大きく影響しているのではないかと言われています」
渋谷「女性ホルモンの周期的なものに関わっているのかなと思っていたのですが、どうですか?」
丸山「中国の言い伝えで、女性は7の倍数の年齢で、さまざまな変化が起こりやすいと言われているので、その可能性はあります。
やや、非科学的ではありますが、30代となると結婚や出産に悩んだり、仕事でも昇進があったりなど、多くのストレスがかかる時期ではあるかもしれないですね。
私のクリニックにも、円形脱毛症や薄毛の相談に訪れる方がいるのですが、ストレスで悩んでいる方やうつ病や神経症を併発している方も多いです」
渋谷「わかります! 常連のお客様で円形脱毛症になったことのある方に対して『やっぱりあの時期、なんとなく病んでたよね?』という印象を、のちのちお話ししたことがありますね」
丸山「心身のストレスが原因で血行が悪くなることもあるので、それが頭皮の血行にも影響している可能性は十分に考えられますね」
円形脱毛症を発見! どこの病院に行けばいい?
--円形脱毛症は、実は本人が気づいておらず、美容院などで発見されてしまう、ということもありそうですね。
渋谷「結構多いですよ。特に先ほど話した30代の女性は頭頂部ではなく後頭部に円形脱毛症ができてしまうことが多い印象です。自分では気がつきづらい場所なので、こちらが発見することが多いですね」
丸山「そういった場合、なかなか指摘もしづらいですよね。デリケートな問題ですし」
渋谷「指摘することに気を遣うのもそうなのですが、円形脱毛症に悩んでいる方に対して、病院のどこの専門科をおすすめしたらよいのか、わからないんですよ」
丸山「まずその脱毛してしまっている原因が何なのか、という部分を見極めないといけないですよね。原因は大きく3つに分けることができて、
- ストレスなどからくるいわゆる原因不明の円形脱毛症
- アトピーなどの皮膚炎や感染症
- 自己免疫疾患や甲状腺異常によるもの
このあたりが原因になっていることが多いのです。
2番目のものは見てわかる場合も多いと思いますが、1つ目と3つ目は、なかなか外からではわかりづらいですよね。
一般的には皮膚科に促すのがよいですが、本当はその人を総合的に診断できるいわゆるホームドクター(家庭医)がよいのです。ただ、日本にはまだまだ少ないのが現状です。地域のある程度、大きな病院の内科でもよいかもしれません」
円形脱毛症に効果的な治療法とは?
--丸山先生のクリニックにも脱毛に悩む方が来られるとのことですが、丸山先生のクリニックではどのような治療を行っていますか?
丸山「そうですね、まず総合的に何が原因になっているのか? という部分を診断したのち、いわゆる円形脱毛症であった場合、ミノキシジルなどが配合された医薬品を処方しています」
渋谷「ミノキシジルの処方はよく耳にしますね。個人的にそういったサプリや錠剤を輸入して使用するというのも聞きます」
丸山「ただ、自己判断はやや危険な部分もあって、男性の脱毛である『AGA』などの薬剤は、男性ホルモンに作用する薬なので、女性が飲むとホルモンバランスを崩してしまうので、飲むことができません。そういった部分は注意してほしいですね」
渋谷「ほksにも何か、頭皮に直接作用するような治療はしていますか? 単純な円形脱毛症であれば、そのうち必ず生えてくるという印象があるので、僕ら美容師は特別治療したほうがよい、ということは、あまり言わないのですが」
丸山「そうですね。単純な円形脱毛症であれば生えてくる可能性は高いので、あえて治療しなくても大丈夫という側面はあると思います。
ただ頭皮に採血した血液から抽出したPRP(多血小板血漿)、脂肪幹細胞の培養液の上澄みから抽出したAAPE(HARG療法)や、プラセンタを直接針で注入していくという治療は、発毛に対して効果が高い印象です」
渋谷「やはり頭皮に直接注入するというところが、効果の高さに作用しているんですかね」
丸山「頭皮に対して針で刺激を与えることが、血行促進になっているということも要因としてはあるかもしれませんね。
私を指導してくださっていた医師の方が『バスキュラーコーンの理論』というものを唱えていて、これは1本の血管が、道路工事などに使う赤い三角コーンを逆さにしたときのように、皮膚に対して影響しているのではないか…という理論です」
渋谷「あぁ、なるほど。そこの血行が悪くなることで、円形状に皮膚にその影響がある、ということですね。円形脱毛症って、本当にその一部のエリアがキレイに丸く脱毛してしまいますもんね」
「血行促進」が円形脱毛症の予防につながる?
--今、血行の話が出ましたが、頭皮の血行を促すことが円形脱毛症の予防につながる、ということでしょうか?
丸山「科学的に解明されていない部分が多いので、はっきりと言えるわけではないのですが、その可能性は高いですね。ミノキシジルにも血行を促進させる作用がありますし」
渋谷「それでいうと、今需要が高くなっているヘッドスパなども、予防には効果が高そうですよね」
丸山「そうですね。あとは、ストレスを溜め込まないことなども、血行を悪くしないということに対して重要なことですね。
頭皮には前頭部から2つ、後頭部から2つ、大きな血管が通っていて、そこから頭皮全体に細かく枝分かれしていくのです。
首や肩から通っていく血管なので、頭皮だけでなく、全身の血行をよくすることを意識してケアしていくことが大切です」
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「髪は女の命」などと言われるように、女性にとって髪のトラブルは大きなストレスにつながります。特に円形脱毛症は、人にもなかなか相談しづらい問題です。
まずは、しっかり自分自身の心や体の健康と向き合い、ケアしていくことが円形脱毛症の予防になります。
そのケアが、万が一円形脱毛症というトラブルに見舞われても、適切な処置をしてもらうための材料にもなりえますね。
次回は引き続き、渋谷さん、丸山先生に「髪を染めるカラー剤によるアレルギートラブル」についてお聞きします。
シリーズ記事
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- rina onodera