髪のお悩みに対する解決方法やヘアケア方法は数あれど、試してもなかなか効果がない! なんて悩みを持っている人は多いはずです。その原因、もしかしたら「自分の髪質タイプ」をしっかり把握していないからかも!?

そこで、人気美容師として数多くの有名人の髪型を手がけてきた美容師・渋谷謙太郎さんに、髪質タイプ別の悩みやケア方法についてうかがいます。

渋谷謙太郎さん
ヘアサロン「SUN VALLEY」代表
(しぶや けんたろう)青山の有名美容室で「予約の取れない美容師」として活躍後、当時はまだ小さかった美容室「air(エアー)」に参画。13年7か月の在籍期間中、東京都内2店舗から全国規模の大型ヘアサロンへと育て上げ、銀座や青山、大宮などの各店で多数の客を抱えるスタイリストとして活躍。執行役員ディレクターとして後進の育成にも力を注ぐ。20年以上のスタイリスト経験の中で、常に新しいものに挑戦し続けるスタイルで、多くのマスコミ、メディア注目されている。2018年5月に自身が代表となるヘアサロン「SUN VALLEY(サンバレー)」を表参道に設立。その高い技術力で、モデルやタレントからも絶大な支持を集めている。
ヘアサロン「SUN VALLEY(サンバレー)」

【1回目】8万人以上の女性の髪を切った超人気美容師が教える「今日すぐできる髪の毛ケア」

■1:髪質タイプ別のヘアケアとは?

スキンケアをするときには、自分の肌タイプに合わせて化粧水や美容液を選んでいますよね。しかし、スキンケアにこだわりのある人でも、「自分の髪質に合ったヘアケアを行う」ことについては、あまり注意を払っていないのではないでしょうか?

「自分自身の髪質を知ることで、本当に合ったヘアケア方法が見えてくる」と話す渋谷さん。髪質には大まかにわけて3つのタイプ別があり、それぞれによって髪のケア方法も違ってくるそうです。

日本人の髪質は大きく分けて3つ!

自分の髪質タイプをしっかりと見極めよう
自分の髪質タイプをしっかりと見極めよう

--(編集部)渋谷さん、今回もよろしくお願いします! 早速ですが、髪質のタイプというのは、ざっくりとどのように分けられるのでしょうか?

渋谷謙太郎さん(以下、渋谷)「細かく分けてしまうと、本当に人それぞれのレベルで細分化されてしまうのですが、ざっくり分けるとこの3つに分類されます。

・細くてやわらかい猫っ毛タイプ
・太くて硬いタイプ
・くせ毛タイプ​

--確かに、多くの人がこの3つのうちのどれかに分類されそうですね。日本人に多いの髪質は、どのタイプなのでしょうか?

渋谷「基本的に日本人は髪が硬く、くせ毛の人が多いと言われています。髪の量が多い人も多いです。

髪の毛は紫外線や日光から頭皮を守る役割もあるので、赤道に近くなればなるほど、硬く多く、癖が強まる傾向があります。その方が頭皮に紫外線を通しづらくなりますからね。髪が黒くなるのもそのひとつです。黒で日光を吸収して守っているんです。

美容院でカットやカラーをしていても、髪の毛のクセが強いな、髪の毛の量が多いなと思ったら九州や沖縄の人だった、なんてこともありますよ。やはり南の方に行けば行くほど紫外線も強くなりますからね。

逆に北欧等の北にすむ人が髪が細く少なく毛が白いのもその表れだと思います」

--しかし、年齢とともにハリコシがなくなるという話はよく聞きますよね。年齢で髪質が変わることはあるのでしょうか?

渋谷「そうですね、年齢とともに髪質が変わるということはあり得ますね。

まず、人は年齢と共に髪の毛の量が減少します。肌のターンオーバーと一緒で、髪を作らなくなり、その途中経過で髪が弱くなったり癖が強まったり……。軟毛になることでボリュームが減少します。

また最近、25歳以下の人たちは軟毛の人が増えているという話を聞きますね。

食生活やホルモンバランス等原因はたくさんあるのでしょうが、現代人は髪質がどんどん変わってきていると言われています」

■2:それぞれの髪質、どんな特徴がある?

ケア方法を知るにはまず、自分の髪質の特徴を理解することから
ケア方法を知るにはまず、自分の髪質の特徴を理解することから

--なるほど……。日本人に多いのはこのタイプ! というものがあったとしても、やはりその時々の自分の髪質を理解していないと、適切なケアは難しくなってきますね。それでは、各タイプの特徴を教えてください。

渋谷「それぞれ、メリットとデメリットがあるのですが、まずはそれぞれの髪質のメリットから話していきますね」

  • 【1】細くてやわらかい猫っ毛タイプ

渋谷「まず猫っ毛タイプですが、このタイプはカラーの傷みに強く、色がキレイに入りやすい傾向があります。ブローやブラッシングでツヤが出やすいのもこのタイプの特徴ですね。髪の毛が乾きやすく、コテなどで巻いた時にもカールがつきやすいです」

  • 【2】太くて硬いタイプ

渋谷「太くて硬いタイプの人は、髪の傷み全般に強いですが、特にパーマによる傷みに強いですね。熱に強いため、なかなかカールはつきづらいのですが、カールの持続力があるため、一度巻いてしまえば髪型がくずれにくいタイプです」

  • 【3】くせ毛タイプ

渋谷「髪が硬いかやわらかいかにもよるのですが、くせ毛タイプの人も猫っ毛タイプの人と同じく、髪が乾きやすい傾向があります。また、太くて硬いタイプと同じくカールの持ちがよいのも特徴ですね。美容師にもよるのですが、ある程度クセがある方がカットしやすく、髪型の提案の幅も広くなります。まとめ髪やアレンジなどもしやすいですよ」

■3:髪質によるデメリットや悩みは?

髪質によりトラブルや悩みも様々
髪質によりトラブルや悩みも様々

--本当にタイプによってまったく違うのですね。逆にそれぞれの髪質でのデメリットはどのようなものなのでしょうか?

渋谷「デメリットがイコール、髪の悩みにつながってくると思うので、自分自身がどのタイプか? という部分は、デメリットを見ることで判断するのがよいのではと思います」

  • 【1】細くてやわらかい猫っ毛タイプ

渋谷「まず猫っ毛タイプの人はボリュームが出づらく、吸水力が強いためシャンプー時などに絡まりやすいという特徴があります。ふわっとしたヘアスタイルにしたいのになかなかうまくいかないという人が多いですね。

あとは先ほど、カラーの色が入りやすいとお伝えしたのですが、逆にカラーの色落ちがしやすいという傾向もあります。カールもつきやすいのですが持続力が弱いです」

  • 【2】太くて硬いタイプ

渋谷「このタイプは猫っ毛とは逆にボリュームが出やすいのですが、まとまりづらいのが特徴です。カラーに関してもなかなか色が入りづらく、特に寒色系のアッシュ、マット、グレー等の色には染まりづらいですね。パーマの痛みにも強く、持続力もありますがそもそもパーマがかかりづらいんですよね。髪の毛が乾きづらく、まとめ髪やアレンジがしづらいと感じる人も多いと思います」

  • 【3】くせ毛タイプ

渋谷「くせ毛タイプの人は、特に髪に対して悩みを持っている人は多いように思います。まずくせ毛の場合、ボリュームが出やすい反面、キレイに収まりづらいという傾向があります。うねりがあるので、ブラッシングをしてもツヤが出づらいという悩みを抱えている人も多いですね。

あとはやはり、くせ毛タイプの人の悩みで最も大きいのは、カラーやパーマの薬剤に弱く傷みやすく乾燥しやすい、切れ毛になりやすいという部分ではないでしょうか」

■4:髪質によって合うシャンプーも違う?

なんとなく、はNG!? シャンプー選びもヘアケアの重要なポイント
なんとなく、はNG!? シャンプー選びもヘアケアの重要なポイント

--うかがっていると、どの髪質とメリットとデメリットが表裏一体、という感じですね。メリットやデメリットがこれだけ違うと普段自宅で髪をケアする方法もだいぶ変わってきますよね。

渋谷「そうですね。例えばいちばんわかりやすいのが、シャンプーの選び方ではないでしょうか。最近はオーガニック系などのシャンプーも流行っていますが、猫っ毛タイプの人はオーガニック系などの軽めのシャンプーを使うと、髪の毛にきしみが出てしまうんですよ」

--オーガニック系シャンプーで髪質タイプの合う・合わないがあるとは! シャンプー選びにも髪質は大きく関わってくるのですね。

渋谷「逆に、太くて硬いタイプの人は、シリコン系のしっとりしたシャンプーを使うとベタつきが出やすくなることがあります。これはシリコンが髪や頭皮にたまりやすいことが原因です。くせ毛の人は広がりやすく乾燥して見えてしまうため、アミノ酸系のしっとりとしたシャンプーがおすすめですね。

いずれにしても、シャンプーで強弱をつけてトリートメントでしっとりさせるという方法がよいので、リンスINシャンプーはあまりおすすめできません」

■5:髪質は年齢とともに変化する!

美しい髪を手に入れるには、加齢での変化を理解することも不可欠
美しい髪を手に入れるには、加齢での変化を理解することも不可欠

--冒頭で、髪質が年齢とともに変化することがある、とおっしゃっていましたが、それぞれの髪質タイプに年齢とともに出やすい変化はありますか?

渋谷「基本的に、真逆にタイプに変化してしまうというよりは、今までの髪質のデメリット部分が大きくなってしまうという傾向が強いように感じています」

  • 【1】細くてやわらかい猫っ毛タイプ

渋谷「猫っ毛タイプの人は、これまでに話した特徴であるボリュームが出づらいというデメリットをより感じやすくなる人が多いですね。トップや生え際の後退が目立ちやすく、薄毛で悩む人が多くなります。

このタイプの人は、特に年齢で髪質が左右されやすいのですよね。出始めるタイミングも他の髪質に比べると早いと思います。年齢を重ねるとショートにしてパーマをかける人が多いのも、軟毛の方の特徴です。加齢から来るトラブルは、美容師では治しづらく、皮膚科医など医療の手を借りたほうがいい場合も多いので、早い段階からのケアが必要です」

  • 【2】太くて硬いタイプ

渋谷「年齢とともに大きなうねりが出やすくなるのはこのタイプの特徴です。また、乾燥しやすくなり、ごわつきが出ることも。

実は意外と、歳を重ねてちょうどよくなったりするケースもあるんです。いくつになってもロングで艶をキープしている人もいられるくらい、加齢には比較的強いタイプだと思います。ただ、白髪が出やすい傾向があり、出始める時期も早い気がしますね」

  • 【3】くせ毛タイプ

渋谷「くせ毛タイプの人は、大きなクセが細かなクセになりパサつきやごわつきが出やすくなります。髪自体も極端にもろくなり、切れ毛や生え方のムラが出やすくなってしまう場合が多いですね。

くせ毛の人も猫っ毛の人と同じく年齢とともにさまざまなトラブルが起きやすく、髪の水分量も減るため、どんどんまとまりづらくなっていきます。美容院での施術だと、ストレートパーマも効きづらくなるため薬選びも難しいです。

ただ、髪質のおかげでボリュームは出るので、カーラーやアイロンで熱を加え艶を出すと髪型的にはキレイになるケースが多いです」

■6:髪質を知れば、美容院でのオーダーにも役立つ

より美しい髪に見せるためには美容院でのオーダーも重要
より美しい髪に見せるためには美容院でのオーダーも重要

--髪質により、持っている性質の延長でよりトラブルが多くなったり、逆にとまとまりやすくなったりするのですね。それでは、それぞれのタイプでカットやカラーの際に気をつけたいことがありますか?

渋谷「それぞれの髪質によって、似合うカラーや、自分でもまとめやすい髪型も変わってきます。なのでしっかりとこれまで話した部分から自分の髪質を理解して、美容院でのオーダーを考えてみてほしいですね」

  • 【1】細くてやわらかい猫っ毛タイプ

渋谷「猫っ毛タイプはボリュームが出づらいので、ショートヘアなどは扱いが難しくなってしまいます。やわらかなイメージなりやすいのでミディアム〜ロングの方が似合わせやすいですね。

すきバサミを入れすぎたり、レイヤー(段)を入れすぎたりするとキレイな髪型としてまとまりづらくなってしまうので注意が必要です。

カラーに関して言うと、比較的様々な色を出しやすいので、キレイな仕上がりなることが多いです。

ただ先ほどデメリットの部分でお話ししたように、色落ちしやすいので、時間が経つと思ったよりも明るくなっていることが多いです。美容院の段階では希望の色よりもやや暗めに仕上げると、一週間くらいでちょうどよくなりますよ!」

  • 【2】太くて硬いタイプ

渋谷「このタイプは猫っ毛タイプとは逆に、カットである程度すきバサミやレイヤーを入れないとまとまりづらくなります。ただし、量の減らし方やレイヤーの入れ方によってはパサついたりはねたりするので注意が必要です。

カラーは赤みが出やすく明るくなりやすいので、一回で理想の色にするのはなかなか難しいですね。特にアッシュ系やマット系等のいわゆる“外国人風カラー”は表現しづらくなってしまいます。どうしても理想にしたい場合はダブルカラー(一回ブリーチ等でメラニン色素を取り、流した後にもう一度色素を加える)をすると、キレイに色が出る場合が多いです。

猫っ毛タイプに比べて強いカラー剤を使う事が多いので、カラーを繰り返すとダメージが大きくなるのでカラーの頻度には注意が必要です」

  • 【3】くせ毛タイプ

渋谷「くせ毛タイプは、カットですきバサミを入れすぎると細かなクセに見えやすく、パサつきが出てまとまりづらくなってしまいます。やや重めにきってレイヤーを入れて調整すると、キレイに仕上がります。

カラーは色むらが出やすいため、ハイライト(毛束で取り線を入れるカラー)などで動きを表現するカラーがおすすめです。

クセがあるおかげでやわらかい雰囲気に仕上げやすいので、外国人風カラーが似合いやすいのですが、見た目がパサついて見えてしまうこともあるためケアは十分に行って欲しいですね」

以上、自分の髪質を把握し、それに合うケア方法について、6つの項目で詳細にチェックしてきました。

「自分の髪質のタイプを知れば、ケア方法も変わるだけではなく美容院でのオーダーもしやすくなりますよ」と語る渋谷さん。

美容師に、ただ希望の髪型を伝えるだけではなく、髪質までを考慮してお願いすることで、今まで知らなかった「本当に似合うヘアスタイル」に出合うこともできそうです。

自分の髪質をしっかり理解しておけb、普段のケアにも指針ができ、より楽しむことができそう!

3回目となる次回は、今回よりもより深く、頭皮のタイプから悩みやその解決方法をうかがいます。

この記事の執筆者
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EDIT&WRITING :
渋谷謙太郎