「本物の家具」がもつ魅力を味方につけてもらうために、インテリアエディター「D」が厳選した大人のためのインテリアアイテムをご紹介する連載。身長156cmと小柄なエディターが、実際に家具を触ったり、座ったりしながら、女性ならではの視点でインテリア名品の魅力を掘り下げます。第8回はデパドヴァの「トンド」です。
シャープな輪郭と、ふっくらしたパディングのバランスが絶妙な「トンド」
背の高いスレンダーな女性のように、どこから見てもエレガントな印象のトンド。これまでのひとりがけソファのなかで、最も床占有面積がコンパクトながらも、おおらかなカーブが優美で、空間に置いた存在感は抜群です。
「美人は3日で飽きる」とか思いながら座ってみました。ところが、これがまた良いのです。シェルターのように控えめに包んでくれるおこもり感のあるハイバック、そこからなだらかに繋がるふっくらとしたアームが美しいだけでなく、ちょうどいい加減に囲われて落ち着きます。割とむっちり感のあるクッションも固すぎずやわらかすぎず、沈むことなく優しく受け止めてくれる感触が絶妙でした。ヘッドレストのクッションも、背の低い私には高さが合うか心配したのも束の間、首元の欲しい位置でこれまたいい仕事してくれます。姿勢良く座ってリラックスでき、立ち上がりもとてもスムーズです。
真に美しい椅子は、座る人も美しく見せてくれるのですね。巨匠、ヴィコ・マジストレッティのデザインと、デパドヴァのものづくりの精度の掛け合わせ、さすが育ちが違います。
北欧家具のような温かみとシンプルさを兼ね備えたイタリアンブランド「デパドヴァ」
デパドヴァは1956年に設立されたイタリアの家具ブランド。温もりのある北欧家具に魅せられたデパドヴァ夫妻が、当時モダンデザインが流行していたイタリアに初めて北欧家具を紹介し、セレクトショップを立ち上げて販売したことから始まりました。デパドヴァのイメージをリードし、クオリティーを維持し続けてきたマッダレーナ婦人は、ミラネーゼマダムの代表格のひとりとして知られ伝記が出るほどの人物。数々の著名デザイナーと共に、クラシカルなテイストをバランスよく取り入れたモダン過ぎないオリジナル家具を世に多数送り出します。
デパドヴァは、2017年にイタリア屈指のキッチンブランド「ボッフィ」傘下にはいり、ピエロ・リッソーニが両ブランドのアート・ディレクターとして、一層ミニマルで素材感の際立つ上質な空間を提案しています。
数々の名作を残すイタリアの巨匠、ヴィコ・マジストレッティ
1920年イタリア、ミラノ生まれ。ミラノ工科大学で建築を学び、卒業後父親のデザイン事務所でデザイナーとしての仕事を始めます。間もなく、カッシーナ、デパドヴァ、アルテミデ、といった超一流のインテリアブランドでデザインを手掛けるようになります。
1960年以降に建築家としても才能を大きく花を咲かせ、都市計画、建築、インテリアデザイン、インダストリアルデザイン、家具デザインなどの分野で活躍します。当時はまだ新素材であったプラスチックをいち早く取り入れた事で高い評価を得ており、他のデザイナーにも大きな影響を与えました。
マジストレッティは12点もの作品がMoMA(ニューヨーク近代美術館)に永久コレクションされ、コンパッソ・ドーロ賞も2度受賞、ミラノ・トリエンナーレでのグランプリ受賞、ケルン国際家具見本市での最優秀賞の受賞など数々の栄冠を手にしているイタリアの巨匠です。
問い合わせ先
- エ インテリアズ(ボッフィ代理店)
- 営業時間/10:30〜19:00
- 定休日/水曜・日曜
TEL:03-6447-1451 - 住所/東京都港区南青山4-22-5
- TEXT :
- 土橋陽子さん インテリアエディター
公式サイト:YOKODOBASHI.COM
- WRITING :
- 土橋陽子