「本物の家具」がもつ魅力を味方につけてもらうために、インテリアエディター「D」が厳選した大人のためのインテリアアイテムをご紹介する連載。身長156cmと小柄なエディターが、実際に家具を触ったり、座ったりしながら、女性ならではの視点でインテリア名品の魅力を掘り下げます。第8回はデパドヴァの「トンド」です。

シャープな輪郭と、ふっくらしたパディングのバランスが絶妙な「トンド」

背の高いスレンダーな女性のように、どこから見てもエレガントな印象のトンド。これまでのひとりがけソファのなかで、最も床占有面積がコンパクトながらも、おおらかなカーブが優美で、空間に置いた存在感は抜群です。

コンパクトながらも存在感のある「トンド」
コンパクトながらも存在感のある「トンド」
トンドが置かれたインテリア
「トンド」の描くカーブと素材感が、空間に温かみを添えています

「美人は3日で飽きる」とか思いながら座ってみました。ところが、これがまた良いのです。シェルターのように控えめに包んでくれるおこもり感のあるハイバック、そこからなだらかに繋がるふっくらとしたアームが美しいだけでなく、ちょうどいい加減に囲われて落ち着きます。割とむっちり感のあるクッションも固すぎずやわらかすぎず、沈むことなく優しく受け止めてくれる感触が絶妙でした。ヘッドレストのクッションも、背の低い私には高さが合うか心配したのも束の間、首元の欲しい位置でこれまたいい仕事してくれます。姿勢良く座ってリラックスでき、立ち上がりもとてもスムーズです。

真に美しい椅子は、座る人も美しく見せてくれるのですね。巨匠、ヴィコ・マジストレッティのデザインと、デパドヴァのものづくりの精度の掛け合わせ、さすが育ちが違います。

トンドに座る女性
【ブランド】デパドヴァ【商品名】トンド【写真の仕様の価格】¥773,280(税込) 【サイズ】幅730×奥行き840×高さ1000 座面高430mm【材質】シート=レザー 脚:オーク
選べる皮のバリエーション
選べる革の色味もシックで、風合い豊かです

北欧家具のような温かみとシンプルさを兼ね備えたイタリアンブランド「デパドヴァ」

イタリアンブランド「デパドヴァ」
1956年に設立されたイタリアの家具ブランド「デパドヴァ」

デパドヴァは1956年に設立されたイタリアの家具ブランド。温もりのある北欧家具に魅せられたデパドヴァ夫妻が、当時モダンデザインが流行していたイタリアに初めて北欧家具を紹介し、セレクトショップを立ち上げて販売したことから始まりました。デパドヴァのイメージをリードし、クオリティーを維持し続けてきたマッダレーナ婦人は、ミラネーゼマダムの代表格のひとりとして知られ伝記が出るほどの人物。数々の著名デザイナーと共に、クラシカルなテイストをバランスよく取り入れたモダン過ぎないオリジナル家具を世に多数送り出します。

デパドヴァは、2017年にイタリア屈指のキッチンブランド「ボッフィ」傘下にはいり、ピエロ・リッソーニが両ブランドのアート・ディレクターとして、一層ミニマルで素材感の際立つ上質な空間を提案しています。

数々の名作を残すイタリアの巨匠、ヴィコ・マジストレッティ

イタリアの巨匠・ヴィコ・マジストレッティ氏
イタリアの巨匠デザイナー、ヴィコ・マジストレッティ

1920年イタリア、ミラノ生まれ。ミラノ工科大学で建築を学び、卒業後父親のデザイン事務所でデザイナーとしての仕事を始めます。間もなく、カッシーナ、デパドヴァ、アルテミデ、といった超一流のインテリアブランドでデザインを手掛けるようになります。 

1960年以降に建築家としても才能を大きく花を咲かせ、都市計画、建築、インテリアデザイン、インダストリアルデザイン、家具デザインなどの分野で活躍します。当時はまだ新素材であったプラスチックをいち早く取り入れた事で高い評価を得ており、他のデザイナーにも大きな影響を与えました。 

マジストレッティは12点もの作品がMoMA(ニューヨーク近代美術館)に永久コレクションされ、コンパッソ・ドーロ賞も2度受賞、ミラノ・トリエンナーレでのグランプリ受賞、ケルン国際家具見本市での最優秀賞の受賞など数々の栄冠を手にしているイタリアの巨匠です。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM
WRITING :
土橋陽子