この冬も「グレージュ」が素敵に見えるこれだけの理由
Preciousのテーマカラーのひとつとして、繰り返し取り上げてきた「グレージュ」の魅力と、今年の着こなしについて「グレージュ上手」と評判のファッションプロの3人が語ります。
喜多 Preciousといえば「グレージュ」といわれるほど、愛されている色。バックナンバーを見ても読者からの反響が大きく、特にこの季節の人気企画になっています。
白井 プレスの方にも「またこの季節が来ましたね!」とよく言われます(笑)。
大西 昔はオヤジ色といわれていたのに…。寒い冬にダークカラーを着るのは簡単だけど、あえて淡く、明るいトーンを、カシミヤやファーなどで贅沢に、上品に着る幸福感がいい…というところから始まったんですよね。最初はベージュ系のクリーミーグラデーションが主流だったのが、サンドベージュのような、少し辛口のグレージュが評判になって。
喜多 エルメスでいうトープ(=もぐら色)みたいな、グレーでもベージュでもない曖昧なニュアンスカラーの人気が出てきて…。
白井 最初は難しいと思っていたのに、着てみると上品で優しく、温かみがありました。
大西 若い人が着ると地味になってしまう。色自体に派手さはないから、素材でクオリティーを上げないといけない色。
白井 コットンだと老けて見えたり…。
大西 贅沢素材でないとダメだから、グレージュのおしゃれは「大人の特権」です。
喜多 なぜ、グレーやベージュでなくて「グレージュ」なのでしょう。
大西 ベージュは西洋人の肌や髪色には映えますが、日本人には難しいところもあります。また、黄みベージュや、はちみつ色、ゴールドベージュなどは、他の色と喧嘩しやすいのに、グレーは、どんな色とも仲よくできるので、人気がありますよね。
白井 とはいえ、グレーの濃淡だけだと冷たくて、女らしさに欠けて見えてしまう危険も。
喜多 グレーとベージュの間を埋めるグレージュは、日本人にちょうどよかったんですね。
大西 クリーミーグラデーションを経験したからこそ出合えたのが、グレージュだった。
色自体に存在感はないのに、トレンドを超えてすごく有能なベーシックカラー
喜多 実際に今シーズン、市場にグレージュは多いのでしょうか?
大西 実はあまり見かけません(笑)。トレンドとしてはないけれど、グレージュはすでに基本色。ベーシックカラーのひとつとしてそろえているブランドもあります。私自身「グレージュを着ているイメージ」とよくいわれるのですが、意外にグレージュのアイテムをもっていないんです。
白井 私も、あまりもっていないかも…。
喜多 なのにおふたりが「グレージュ上手」といわれるのはなぜでしょう?
白井 グレーとベージュを組み合わせるだけで、感覚的にグレージュと認識されているのかもしれません。
大西 例えばトップグレー×モカベージュのように、やわらかい色、淡い色を重ねれば、グレージュに見える。そもそもグレージュは、色自体に存在感はないのに、組み合わせると洗練されて、どんな色にも合う色。エレガントにもカジュアルにも着られて、一色ではあまり冴えないのに、すごく有能なんです。
喜多 では、料理のしがいのあるグレージュを攻略するために、より今年らしく着こなす方法を考えたいのですが、おふたりは今回、どのようにスタイリングされましたか?
大西 これまではグレージュを淡色でまとめてきましたが、今回は濃い色とも合わせて、新たな可能性を探りました。トーンではクールなサンドベージュ系や、グレー寄りのグレージュ。そこにキャメルを合わせたりして…。
喜多 今回は、キャメルがなかなかいい仕事をしていましたね。キャメルには黒と思い込んでいたけど、グレージュとも好相性!
大西 ひところブラウン系が低迷して、キャメルが封印されていた時代がありました。でもまた人気が復活。キャメルはグレー寄りのグレージュには合うけれど、ベージュ系に合わせると、古くさく見えるので気をつけて!
白井 難しい色といえば、モカベージュとは合いますが、やや紫がかったモーヴになると、もっさりして、切れ味が悪くなります。
大西 あずきバーの色ですね(笑)。グレージュはどんな色にも合うといいましたが、唯一、老けて見える配色かもしれません。
今年のグレージュはやや濃いめに振れ幅を広げて小物でモードに引き寄せる
喜多 大西さんのグレージュのコーディネートには、どこか抜け感があります。どんなことに気をつけていらっしゃるのですか?
大西 メリハリ配色は簡単でも、3色になった瞬間に、不快なずれが生じるので、できるだけ同じトーンのなかで微差を重ねていきます。コーディネートはつなぎが難しい。大切なのはうまくなじませるアイテムを探すこと。難しいときは白を入れるとニュアンスカラーがクリアになります。
喜多 小物はどうですか?
白井 今年は小物でコントラストをつけると楽しいので、グラデーションのなかにも、キャメルや淡いイエローの小物でメリハリをつけました。靴は、普通のヒールだと退屈なのでチャンキーヒールとか…。小物はモードに寄せるのがいいと思います。
大西 ジュエリーも、グレージュは控えめな色だからといって、やりすぎると老けてしまいます。ボリュームがあればいいわけではなく、スパイスとして、トータルコーディネートのなかでポイント使いすることが大切。
喜多 今回「目から鱗」だったのがベルト使い。
大西 グレージュは膨張色だから、前を開けてインナーを見せるのがいいと思っていたら、しっくりこなくて…。ふだんはアウターのベルトはあまり好きではありませんが、客観的に見て、ベルトをした瞬間、シルエットが引き締まって新鮮でした。
喜多 ファーも活躍していましたね。
白井 毛の凹凸で、着こなしに立体感が生まれるんです。派手なものでもグレージュだと上品に、さりげなく映えて、グラデーションのなじませ役にもなります。
大西 ゴージャスなだけでなく、顔も小さく見える。異素材をミックスすると、上級者っぽくてうまいなっていう雰囲気が出せるんです。
喜多 ファーの毛並みそのものに、グラデーションがあるからでしょうね。さりげない…といえば、柄も上品に収まっていました。
白井 無地一色のグラデーションより、柄でグラデーションに深みが出る。
大西 グレージュに存在感がないぶん、何かしたくなるんですよ(笑)。グレージュなら、ヒョウ柄が落ち着いて上品に見えるし、チェックも大人っぽくなる。コーディネートのしがいがある色です。
喜多 グレージュは贅沢に重ねてこそ生きる色。大人の冬はやっぱり、グレージュですね。
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