寒い冬は、熱いおでんを食べたくなる季節。コンビニ各社でもレジ横でおでんを販売しており、そのおいしさと手軽さでつい、買ってしまうことも少なくないですよね。そんなおでんですが、主食として食べますか? それとも、ご飯のおかずとしていただきますか?

おでんにはつくね串や卵など、ご飯に合いそうなおかず系の具材が多いですが、ちくわぶやもち巾着など、主食としてもよさそうな炭水化物の具材も入っているので、判断に迷うところですよね。

そこで今回調査してみたところ、意外な事実がわかったので、お伝えしたいと思います。

おでんは主食か? おかずか? 各データを調べてわかった新事実

■ 紀文の「鍋白書」アンケートでは、わずかにおかず派が優勢!

おかずの一品として出されるおでん
おかずの一品として出されるおでん

おでん種メーカーの紀文が1994年から毎年発表している「紀文・鍋白書」では、鍋やおでんの最新情報やアンケートの結果がまとめられています。

こちらの2018年の調査結果を見てみると、実はおでんを「主食として食べる」が47.0%「おかずとして食べる」が53.0%と、わずながらおかず派が優勢

ただし、2016年では主食派が23.6%、2017年では42.6%ときて2018年と47.0%と上昇傾向。そのため、今後もこのままいけば主食派が増えていくことが予想されます。

そしてこのデータを年代別で見てみると、主食派が最も多いのは20代(57.5%)。年代が上がるにつれて減っています。

つまり、若い人ほどおでんを主食としてとらえている様子。これは、糖質制限の流行も影響していると言えます。よって今後は、「おでんは主食」という流れが加速していく可能性が、非常に高いです!

■インターネット上には「おやつやお酒のつまみ」として食べるという人も

おでんはおつまみにとしても最高のメニュー
おでんはおつまみにとしても最高のメニュー

Twitterや掲示板サイトなどで調べてみると、さまざまなおでんの楽しみ方があることが判明。

「ごはんにおでんで時々、味噌汁つき」という完全におかず扱いの人、「もち巾着やじゃがいもから炭水化物を摂取するから、ごはんはいらない」と完全に主食扱いの人と、やはり意見が分かれています。

中には、「うどんの上に、好みの具だけトッピング」「おでんの汁をご飯にかけるとおいしい」と、おかずなのか主食なのか、微妙なラインの意見も。

さらに「つくねとかソーセージとかの肉系が入ってたらメインのおかずになるけど、大根、卵、はんぺんとかだけなら副菜」など、具材によっておかずの中でも意味合いが変わってくる、という意見もありました。

「子どものころはおでんはおやつだった」「大人になってからは、お酒のつまみ」など、その年代によっておでんの楽しみ方が変わるケースもあるようです。

■関西風のおでんは「だしが薄味」なので、ご飯が食べられない!?

おかずとして扱われないあっさり味のおでん
おかずとして扱われないあっさり味のおでん

食べ方の調査中、興味深い見解をふたつ発見しました。

ひとつめは、「味噌のおでんならおかず」「味付け次第。濃くて味がしみたおでんならおかず」といった具合に、味付けでご飯に合うかどうかが変わるというもの。確かに、だしの味によって食べ方を変えている人にとっては、一概に主食かおかずか、決められないですよね。

もうひとつ気になったのは、「地域によって具も味も違うから、言い争うだけ無駄」という意見です。確かにおでんには地域差があり、味付けや具材は全国各地でさまざまな違いがあります。

例えば、関東風おでんの特徴は、かつお節のだしをきかせて、濃口しょうゆで味付けしていること。味が濃いので、白いごはんがほしくなりそうですね。

対して大阪では、おでんのことを「関東煮」といい、かつおだしの江戸のおでんが関西に伝わって、新たに昆布だしが加えられ、深みを増したもの。本格的なだしの味が楽しめますが、薄味のため、「ご飯には合わない」とする声もありました。

さらに、静岡のおでんは、濃口しょうゆに牛すじ肉でだしをとった、黒いつゆが特徴。福岡では、鶏からとっただし汁に、餃子巻きを入れた博多風おでんが主流です。また、かつおだしに八丁みそを加えて煮る、名古屋風おでんも有名ですね。

香川や徳島では、おでんにからしみそ、愛媛では「みがらしみそ」という麦みそベースのからしみそをつけていただくなど、つけだれに特徴が。このように、ひと口におでんといっても、その土地によってかなり違いがあるのです!

■関東では定食が多めだが、関西ではお酒のつまみが主流だった!

関東ではわりとポピュラーなおでん定食
関東ではわりとポピュラーなおでん定食

それでは、全国のおでんの名店では、おでんを主食として提供しているのでしょうか? それとも、おかずとして提供しているのでしょうか? 外食おでんの食べ方を見ていきましょう。

まず、東京の日本橋にある関東風おでんの老舗「お多幸本店」。こちらのおでんは、半世紀以上守り抜いたという、継ぎ足しの秘伝だしで煮込んだ甘辛く濃いめの味付け。「とうめし」という、味のしみた絹ごし豆腐が豪快に載ったご飯が人気で、ランチではおでん定食があったりと、おでんをおかずとして提供している印象です。

東京・神田の「尾張屋」でも、ランチのみおでん定食を提供。東京・立石の「おでん丸忠」では、おでんとおじやを合わせた「おじん」、おでんとうどんを合わせた「うじん」なるユニークなメニューもあります。

以上のことから、関東のおでんはどちらかというと、ごはんとおでんを一緒に食べるおかずとしてのイメージが強い感じです。味が濃いめなので、白いご飯によく合うのでしょう。

一方、関西ではおかずのイメージがかなり弱いです。

大阪・北新地にある「万ん卯 本店」のおでんは、枕崎のかつお節と道南の真昆布、野菜でとったスープをブレンドした、上品なだしが決め手。一品で提供され、ベースのだしは同じであるものの、醤油やポン酢など味付けを変えていて、具材によって味の変化が楽しめます。定食はありませんが、〆にはミニおにぎりなどのメニューが。

同じく大阪・北新地の「かさね」では、〆のおすすめにおでんのだしを使用した、カレーうどんが提供されています。また、大阪・玉造の「きくや」では、〆にうどんか肉吸いが定番。こちらのうどんは麺が細く、かつおの風味が効いただしと絡み合って、おでんをたくさん食べたあとでも、ペロリと食べられてしまうそうです。

以上のことから、薄いけどしっかりとだしがきいた関西風おでんは、ごはんに合うというよりは、お酒のつまみとして、一品料理で出されることが多いようです。

続いて、黒いつゆが特徴の静岡おでんのお店を調べてみました。地元の人々に愛される静岡おでんには、静岡茶を焼酎で割った「静岡割り」をお供にする人も多いよう。お店での提供も多いです。

だし粉をかけて食べる静岡おでん
だし粉をかけて食べる静岡おでん

静岡駅構内にお店を構える「三久」では、時期になると「生しらす丼」が登場するので、おでんと合わせて注文することも可能。2008年と2014年におでんフェアで優勝した有名店「海ぼうず本店」でも、しらす丼はもちろん「桜海老ピザ」というメニューもあります。海に面した、静岡ならではですね。

また、青葉横丁の「おでんや おばちゃん」では、おでんのほかにはんぺんフライやちくわフライなど、揚げ物も多種用意。ご飯にも合いそうですが、ご飯の提供はなく、静岡割りなどのお酒をお供に食べるようです。

静岡おでんは、駄菓子屋や焼き芋屋、おにぎり屋などで提供されていることもあり、静岡の人々にとってはなじみの深いソウルフード。気軽に楽しむ駄菓子感覚なのか、定食としてご飯と一緒に食べるというよりは、おかず、もしくはおやつのような感覚でおでんを食べていると言えます。

結局何が言いたいのかと言うと、地域ごとに味付けの違うおでんは、その味付けごとに「主食」になるか「おかず」になるかが、変わってくるというわけです。

その場その場で具も味も違うので、言い争うのはナンセンス! 他の家庭でおでんを食べるときは自宅との違いを楽しみ、ご当地おでんを食べるときは、そのお店ならではの看板メニュー通りに楽しむのが正解と言えます。

日本全国で愛されながら、その土地土地に合った発展を遂げて、親しまれてきたおでん。誰かの食べ方を否定するのではなく、他の地域では「同じ”おでん”という名前が付いた別の食べ物」として捉えてみてはいかがでしょうか?

この記事の執筆者
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WRITING :
こばやしあさみ