お正月といえば「お餅」。新年のあらたまった集まりやパーティーで、お餅の入ったお雑煮やおしるこ、磯辺巻きやきな粉餅などを食べる機会があるかもしれません。人前でお餅を食べるなら、ぜひエレガントに食べたいもの。
今回は、あまり知られていないお餅の食べ方マナーを、マナー講師の新田純子さんに教えていただきました。
お餅は「手づかみ」で食べるのは…アリ!
まずお餅の食べ方マナーとして気になるのが、手づかみでもいいのか、箸が正解なのかということです。
「お正月に、家族以外の人前でお餅を食べるシーンといえば、めったに会わない親戚や友人などが集まる会や新年会などではないでしょうか。場所については、自宅に客人を招く場合もあれば、訪問先のお宅や飲食店でいただく場合もあるでしょう。
そのあらゆるシーンを考えたときに、いずれも『手づかみ』でお餅を食べるのは、はしたなくはありません。網焼きなどの外がパリっとしているお餅、つまり手で触っても手につかない調理法であれば、手づかみしてもいいでしょう」
お餅を手づかみで食べるのは、正式な場でも問題ないようですね。よりエレガントに食べるにはどうすればいいのでしょうか?
「基本的に、お餅の食べ方マナーというのは決まっていません。そこで、和食全般に通じるエレガントさのマナーを取り入れてみてはいかがでしょうか」
お餅をエレガントに食べるマナー
そこで新田さんに、和食マナーの基本から、お餅をよりエレガントに食べる方法を教えていただきました。
状況を見て「手づかみ」か「箸」かを判断する
「手づかみは恥ずかしい食べ方ではありませんが、周りの状況によって変える必要があります。ホストの方が手でいただいているのであれば、『手で失礼いたします』と言って手でつかんでいただきましょう。箸でいただいているのであれば、箸を使ってください。基本的に、箸が出されていたら、箸を使うのがマナーです」
お餅をエレガントに食べる「必殺3点セット」を使う
新田さんによると、お餅をエレガントにいただくには、1.懐紙、2.ウェットティッシュ、3.小皿の3つが必殺アイテムだそうです。それぞれの使い方を教えてもらいましょう。
■1:懐紙
「『懐紙(かいし)』というお茶やお菓子を包む紙を使うと、よりエレガントにいただけます。懐紙はあらかじめ持参し、サッとバッグからさりげなく出してお餅を取り、包む形でいただくとスマートです。あらたまった場、上司との席などでは、懐紙を持って行きましょう。着物の場合は、懐紙を胸元に入れておき、使ったら袖の中に入れて持ち帰ります」
■2:ウェットティッシュ
「ウェットティッシュは、ちょっとしたときに大いに役立ちます。バッグに入るサイズのものを選んでください。基本的に、提供される濡れたおしぼりは本来、手をふくものであり、テーブルの上をふいたり、口をふいて口紅で汚してはいけないのがマナーですから、例えば、口の周りにきな粉が付いてしまったときなどには、ウェットティッシュでサッと口周りを拭くことができます。
また、お茶碗に口紅が付くのが気になるときにも、事前にウェットティッシュを唇の上に当て、口紅を多少取っておくのにも使えます。拭いた後のウェットティッシュは、自分の手前横辺りのテーブル上に、汚れた部分が人様に見えないように置いておくといいです。そして持ち帰るときは、懐紙の中に包んでバッグに入れましょう」
■3:小皿
「小皿は、卓上に用意されているときとないときがあります。もしあれば、大皿から小皿にお餅を取り分けて、その小皿を持ってお餅を手でつかむか箸で取るかして、口元まで持っていきます。小皿があれば、海苔の粉や、きな粉などがパラパラ落ちても受け止められます。
もし小皿がなければ、『小皿(取り皿)ありますか?』と聞いて何枚かいただいてもまったく問題ありません。むしろ参加者の人数分を用意することは、大人のワンランク上の配慮の効いたマナーといえます。小皿もエレガントにいただくための必殺アイテムとして覚えておいてください」
お餅の食べ方別!エレガントな食べ方マナー
お餅は、さまざまな食べ方があり、マナー的に不安なことも異なります。それぞれの食べ方マナーを教えていただきました。
きな粉餅
「きな粉餅は、食べている間にサラサラときな粉が落ちます。きな粉はほとんどの場合、手づかみではなく箸でいただくでしょう。まず小皿に取り、箸で小皿の上でひと口大に切ります。
なぜひと口大に切るのかというと、会話をしながら食べるためです。相手に聞かれたことに即座に答えられるように、楽しく談笑するために、いつもひと口大で食べきれるようにしておくのが食事全般のマナーです。
それと同時に、喉にものを詰まらせてしまうから、というのもひと口大に切る理由のひとつです。『自分の健康を守る』というのもマナーのなかに入っているのです。
そして小皿を片手で持ち、もう片方の手に持った箸で、ひと口大のお餅を口元に運んでいただけば、きな粉が落ちても小皿で受けられます。ここで注意したいのが、“手皿”で粉を受けようとすることです。手皿は和食の食事マナーとしてNGです。小皿や懐紙で受けるようにしてください」
磯辺焼き
「磯辺焼きは、お餅が硬ければ手づかみでいただけます。ただ、海苔がパリパリの場合、食べているうちにパラパラと粉が落ちてくる可能性があります。この場合は、懐紙で包んでいただけば、海苔の粉を懐紙で受けることができます。
ここで注意したいのが、かじったときに、歯型が付いてしまった部分をどうするかということです。基本的に、和食マナーでは、ものをかじった部分を人様に見せてはいけません。お餅に限らず、和食の具材、すべてそうです。一度噛んだら、基本的に最後まで食べきるのが理想です。
ただ、大きくて食べきれないこともありますので、その場合は、小皿に置いても大丈夫です。しかし置くときに、歯型がついた部分を手前にして、人が見えない位置に置くのがマナーです。
また、小皿に入った醤油を磯辺焼きにつけていただくこともあるでしょう。醤油小皿を持つのはマナー違反だと勘違いされている方がいらっしゃいますが、取り皿の小皿同様、醤油小皿は手に持って食べてかまいません。それはお餅に限らず、お刺身のときも同様です」
おしるこ・お雑煮などの汁もの
「おしるこやお雑煮などの汁ものは、まず汁から味わうのがマナー。このとき、箸で具を奥のほうに寄せて押さえて飲みます。そして汁物のお椀は持ちながら食べてOK。万が一箸がすべって、お餅が汁の中に落ちてしまっても、お椀持っていれば汁がそれほど飛び散ることはないでしょう。もし大きいお餅が入っていた場合、お椀の中で、箸を使ってひと口大に切っていただきましょう」
納豆餅
「納豆そのものの食べ方マナーというのも決まっていません。そして、納豆は糸が引いて見た目が汚いと思われがちですが、納豆は発酵食品であり、糸が多少引くのは『持ち味』であることから、糸が引くこと自体、恥じることではないですし、隠すものでもありません。ですから、納豆餅を食べるときも、納豆の糸が引いて恥ずかしいと思う必要はないということです。ただ、エレガントな女性であれば、あまりにも糸が引くのを人に見せたくないとい思うかもしれませんね。その場合は、小皿を持っていただけば、糸が引きすぎることはないでしょう」
お餅が箸で切れなかったらどうする?
これらのお餅の食べ方マナーの中で、何回か、小皿やお椀の中のお餅を箸でひと口大に切るというマナーが出てきました。しかし現実的には、箸でお餅が切れるかどうかはケースバイケースではないでしょうか。
そこで新田さんに、もし、箸でお餅が切れなかったらどうすればいいかを伺ってみました。
「もちろん、和食の中では箸で切りにくい具材はあります。お餅も切りにくい具材のひとつですね。もしどうしても切れなかったら、小皿やお椀を持って箸でお餅を持ち上げて、かみ切るしかありません。『切れないな…』と悪戦苦闘し続けているのもよくありませんので、臨機応変に行動しましょう」
お餅は和食のひとつであることから、和食マナーに準じていただくと良いようです。お餅の食べ方マナーを意識することを通して、和食全般のマナーを学び、実践することができるというのはうれしいもの。ぜひ必殺3点セットを心得ておき、お餅をエレガントにいただきましょう!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利