激変する市場と闘い続けた日々を経て、もっと自分を愛したいと思った

目の当たりにしてきた数々のシーンから見えてきたものすべてが、今につながっているという網本さん。

網本友加さん、45歳。京都府出身。東京で長年勤務したIT業界を経て、現在台湾在住8年目。日本の伝統文化や名産品をはじめ、地方自治体や日系企業の台湾展開をサポートする架け橋として、各地のマーケットを行き来しコーディネーター役をつとめるデュアルライフを実践されています。

日本ではどんなことをしていたのか、台湾との出合い、IT業界勤務から他分野に目覚めた理由や現在のスタイルを選んだキッカケ、網本さんが今注目している「台湾ヘルシーフード3選」もお伺いしてきました。

■Chapter1:激動の時代に当事者として過ごせた幸せと、そこからの転換

——今のスタイルへ転じる前、日本ではどんなことをされていましたか?

私は京都に生まれ、大学卒業までは関西で育ちました。新卒で入社したのは教育関連企業。入社2年目のとき、急にご縁も所縁もないドイツのデュッセルドルフへ転勤になって(笑)。いきなり異文化へ飛び込むことになり、ずっと関西で暮らすのだろうという殻を破るきっかけになった気がします。2年の駐在期間を終えるころ、転職を決意。それを機に上京したのが25歳のころです。

入社したのは、当時はまだまだマイナーだった携帯電話の情報コンテンツをつくるベンチャー企業。そのころ、日本ではPHS・携帯電話、PC・インターネットが一般向けに普及しはじめていました。それらのツールやIT技術を活用した情報配信やコンテンツの可能性に心惹かれたんです。

i-mode(99年)やYahoo!BB(01年)などの革命的なITサービスも生まれ、春夏秋冬、シーズンごとにメーカー各社から新端末が続々と登場。ITを利用したサービスやコンテンツも、毎日新しいものが生まれているんじゃないかと思うほど、活発な動きをみせていました。

当時私を含め、たった18人しか居なかったそのベンチャー企業も、あっという間に100人、数百人と規模を拡大し、数年後上場を迎えることになります。新しい市場と業界全体が拡大していくなか、今まで世の中になかった仕組みづくりに自ら関わることができる。なんてエキサイティングなんだろうって。

毎日〆切で、深夜1時2時なんてまだまだ同僚が沢山残っていた時代です。アドレナリンが常に放出されたような状態で、本当に1年で3~5年分が濃縮されたかのような日々は、あっという間に過ぎていきました。

急激に拡がる市場の中に身を置くと、関わる人の数はどんどん増えていく。それでも、見失ってはいけないことがある。

——大きな決断をする、前触れとなるような出来事や、架け橋になったことはありますか?

今でも鮮明に思い出す印象的な光景がひとつあります。当時あるプロスポーツチームのコンテンツを担当していて、注目試合へご招待頂いたんです。会場は超満員。3万人近くの観客の歓声が響き渡っていて、ハッとしました。あぁ…「3万人」って、こんなに沢山の、いろんな人たちの集まりなんだな、って。

普段、自分自身が携わっているサービスやコンテンツは成長し続けていて。数十万、数百万人規模のユーザを抱えているはずなのに、いつの間にかその実感が薄れていることに気がついたんです。10数年、激動する市場の当事者として目の前のことを急ぎすぎた結果、何かが見えなくなっていたかもしれない。リアルに「3万人」をこの目で見て、そのころ、心の中で感じはじめていた「このままでいいんだろうか」という、モヤモヤの正体がその日少し理解できました。自分を見つめなおすキッカケにもなったと思います。

気づけば入社10年以上が経過して、子会社の設立、広報など経営企画の仕事にも携わるようになり、年齢は30代半ばになっていました。いま思えば、趣味が実益を兼ねているようなところもありましたし、毎日周りで起きる刺激的なことに関わっていることで、プライベートも満たされているような錯覚があったのかもしれないですね。

■Chapter2:変わるなら大きく変わろう、と思った

——なぜ、台湾だったんでしょうか? キャリアチェンジと移住を同時に決めた理由は?

実は、元々同僚だった主人が台湾出身なんです。彼は先に会社を退職して台湾に戻り、自身で事業を始めていました。タイミングやご縁って不思議なもので、自分自身の今後と真剣に向き合いはじめると、まるで試されるかのように魅力的なオファーがやってくるんですよね。なかには世界的なエンターテイメント企業からのオファーもあって、かなり悩みました。

ただ、どんな生活になるかおよそイメージできてしまうからこそ、それを選択することは腑に落ちなかった。結果的に、まず会社を退職して主人の居る台湾へ行くのが現実的に思えたんです。

急成長するベンチャー企業に、職種や業務の垣根などあってないようなもの。いろんなことをやり切っていくなかで、一度立ち止まることは必然だったのかもしれない。

なんでしょう…たぶん、日本に居たままできることもありましたけど、いろいろな選択肢や取り巻く環境の変化に思い悩むうち、ただただ一度立ち止まりたいと思っている自分にも気がついたんです。台湾でこれを成し遂げたい! とか、特別な想いがあったわけでもなく、ただぼんやり「ちゃんと丁寧に生活をしたいなぁ」とか、「スピードや数だけでなく、自分がリアリティーを感じられることをやりたいなぁ」とか。

今まで私が見過ごしてきた言ってみれば「女子」な側面が、やっと出てきたのかもしれない(笑)。きっと社会に出てから今までの波乱万丈や激動である毎日が、当たり前になりすぎていただけなんでしょうね。

——日本にそのままずっといた自分を、想像することはありますか?

就職や転職で、他の業界や会社に入っていたらどうなってただろう。オファーのあった会社に入っていたら、会社員を辞めず日本に残っていたら…って、選ばなかった方の人生を想像すること、たまにありますよ。

いま住んでいる台北・天母というエリアは外国人居住者も多く、日系企業から台湾に駐在員として来られる日本人の方と知り合う機会も多いんです。ただ、会社員には人事の入れ替わりが毎年ありますから、歓迎会もあれば送別会もあって、毎年の恒例行事のようになっていて。出会いや別れがあるたび、起業やフリーランスで台湾に渡るのとは、また違うものが見えているんではないだろうか…とか、ふと考えたりはしますね。

■Chapter3:初めてづくしの毎日。知らない世界ってこんなにあるんだ…

——実際に台湾での生活を始めてみて、いかがですか?

実際に生活するようになって、改めて知ることはたくさんあります。移住してすぐのころは、まず言葉を学ばなくては! と思い、現地大学の中国語センターに平日朝8時~10時まで5日間通って、昼までは語学習得、午後からはフリーランスで頂いたお仕事をする、という生活を半年ほど過ごしていました。何もかもが新しい環境の中でも、家族と過ごす時間も増えて毎日の生活のペース配分ができたことで、心身も養生されていきました。

健康に対して特別な意識を持つというよりは、普段から毎日の食事を大切にする台湾の食習慣に興味を覚えた。

特に食べることに関しては、毎日の暮らしや心身の健康にも密接なので、よりリアルに感じます。薬膳や台湾漢方など、女性のウェルネス(健やかな生活)に対して想いが込められたものも多く。それが名産品やブランドもののように特別扱いされるわけでもなく、気軽にスーパーやコンビニに並んでいるんです。医食同源について、日本でもお好きな方や詳しい方はおられますが、ここまで一般的な食文化や習慣として浸透していることには驚きました。

そうやって自身の強い興味が向きはじめると、いつの間にか食に関する仕事が増えてくるんです。引き寄せるってこういうことなんでしょうか。結果的に、日台両方の食文化に対してこうなっていってほしいなと、自分自身の思いも乗せて取り組むことのできる環境にいられる。これは、ありがたいことだと思っています。

——日本とは? 台湾とは? 移住や多拠点生活が、あなたにもたらしたものは何ですか?

現地で知ることが多いのは当然かもしれませんが、それ以上に感じたのは「ヤバい、私、日本のこと知らなすぎる」でした(笑)。これは私の周りにいる海外移住組も異口同音に言うことなのですが、海外に出るとまるで「日本代表」のように、日本のことを聞かれる機会が確実に増えます。むしろ台湾に来てからの方が、日本市場をリサーチしたり、日本各地に旅行や仕事で行く機会が増えていて、日本のことを客観的に知ることになりました。

東京での生活もあれだけ刺激的と感じていながら、実はとても狭く限られた所で波に飲まれていたのでは、と思うことも。さまざまな価値観や人、生き方や環境に触れるようになって、こうあるべき、こうでないとだめ、そういう想いや不安は無くなった気がします。もし今後、他の国、東京、東京以外の都市で生活する展開があったとしても、そのときはそのとき。自分が納得して進む道を選ぶことはできそうな気がしています!

■Chapter4:いまの自分にとってプレシャスなもの

——オフタイムはどんな過ごし方をされていますか? 情報のインプットはどんなところで?

自身の養生のためでもあるのですが、台湾の「医食同源」という考え方をより深く理解したいと思っていて。プライベートでもいろんなお店を巡っています。老若男女問わずあたりまえに生活習慣として溶け込んでいる台湾食文化の在り方は、知れば知るほど奥が深く興味が尽きないです。実際に商品をつくっている方や、専門の方とコンタクトしてお話を伺うのもライフワークのようになっています。

お食事の内容はもちろん、「食べる」ことをどう楽しむかも大切。

お仕事につながる部分はあるとしても、まずは自分が喜ぶものってどんなものなのかを、もっと知りたいなと。これは運命の逸品! と思えるものに出合ったときは、テンション高いですよ(笑)。情報のインプットはちゃんと目を見て会って話せる「人」からが多いですし、どんどん意見を交換したい。実際に試してどう感じるかが大切だなって思います。

お土産にぴったりのレアアイテムも!「いま注目すべき台湾ヘルシーフード」3選

網本さんが感銘を受けた、台湾の「医食同源」という考え方。毎日の暮らしの中で実践するためには、ストイック過ぎても続きにくい…ということで、写真映えもバッチリ! な話題性の高いアイテムから、手軽に試せる本格的な薬膳まで幅広く取り扱うオーガニックスーパー「天和鮮物」の秀逸な品ぞろえをチェックしているんだとか。

台湾旅行で訪れる際に食べて欲しいものや、お土産にもピッタリの注目アイテムを3つ教えていただきました。

■1:食べるスープ!酵素の力で若さをキープ│精力湯(グリーンスムージー)

ゴリっと食材の姿も見た目にわかって、ご利益ありそう(笑)。ありそうでなかった食感、ハマりますよ。

「食べるエネルギースープ」として有名な精力湯は、豪快な見た目と異なり以外とあっさり。葉物特有の臭み等もなく、ザクザクとした食感がやみつきになります。約20種類の野菜や果物、穀物が入っています。普通の飲むスムージーもあります。(網本さん)

■2:台湾食材の変化球が楽しめる│きのこチップス

パッケージもおしゃれでギフトにもおすすめ!1箱150元。

台湾では「蜜銭」と呼ばれるお茶請け菓子として、このような乾燥チップスの種類が多いのですが、こちらのきのこチップス「講菇事」はお土産にするとかなりの割合で「日本で買えるの?」「もう一度買ってきて」とのお声が。きのこに特化し、栽培から製造まで一貫して手掛ける食品メーカー「鹿窯菇事」が発売しています。パッケージも素敵です。(網本さん)

■3:とにかくいっぱい集めたい!配りたい!│豊富な種類をそろえる調味料

こちらは麻油薑。生姜入りのごま油ですが茹でた素麺に和えて食べるとハマります!いろいろなメーカーがありますがこちらのメーカーのものが個人的におすすめ。1瓶250元。

いろんな物がたくさん並んでいて、どれを選べばいいのかわからなくても、とりあえず予算や見た目に惹かれたものをチョイスしても、中身はどれも良いものばかりが目利きされているので安心してください(笑)。組み合わせを楽しみたい方や、お土産で配ってワイワイしたい方へ嬉しいサイズ感やプチプラものもたくさん。お料理やオーガニック好きな方も納得の、日本では未入荷のものもあるので探して歩くのも楽しいですよ。Instagramで詳しいレポをされてる方もいらっしゃるので、ぜひチェックを(網本さん)

■店舗情報│天和鮮物 大直店(ATT 4 Recharge 4F)

天和鮮物 大直店(旗艦店)店舗内観。豊富なラインナップがそろっていて、お土産選びにも楽しいひとときが過ごせそう。
天和鮮物 大直店(旗艦店)店舗内フードエリア。実際に食べて試せる「体験型」のサービスも充実!
天和鮮物 大直店(旗艦店)店舗外観

OPENしたばかりの天和鮮物の旗艦店、大直店。店舗内に飲食エリアがあって、こだわりの食材を用いたレストランやジューサリーなども併設された「体験型」で楽しめるのがいい感じです。台北市内にもいくつか店舗はありますが、もし足を延ばせそうなら、一番新しく規模も大きいこちらの大直店を訪ねてみてはいかがでしょうか?(網本さん)

店舗名/天和鮮物 大直店(旗艦店)
URL/http://shop.thofood.com
住所/台北市中山區大直敬業三路123號(ATT 4 Recharge 4F)


現在は、日本の文化や商材を台湾へ展開する動きだけでなく、台湾ならではの伝統品や物産および現地トレンドの飲食店や雑貨などを日本へ紹介する「2WAYな架け橋役」も増えているそう。近しいようで実は奥深く、知られざる魅力がまだまだあるという網本さん。今後、ますます日本で見かける「台湾ルーツ」なものがどんな発展をしていくのか、楽しみですね!

網本友加 さん
桔想國際有限公司運営総監COO
(あみもと ゆか)東京で10年以上携わってきたIT業界から、40代を迎えるタイミングで、扱う商材や担当する業務にいたるまで大きなキャリアチェンジをはかり、台湾に移住。現在は日本の食文化や伝統工芸品のPRをメインに、地方自治体や日系飲食企業等の台湾展開などをサポート。幅広いコーディネーター役として活動を行っている。

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この記事の執筆者
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EDIT&WRITING :
飯塚美穂