広島観光といえば、広島市や厳島といった、沿岸部の印象がどうしても強いのではないでしょうか? しかしながら、県の北東部、山間部にも見どころがあります。それは中国地方のほぼ中央に位置する「庄原市(しょうばらし)」。

1200m級の高峰と森林に囲まれ、この地の沢を源流域とした河川が日本海、瀬戸内海に注ぎ、水と緑に恵まれた心和む里山の風景に懐かしさを覚えます。

そこでPrecious.jpでは3回に渡って、庄原市の魅力にフォーカス! 1回目となる本記事では、庄原市内の古民家を再生させた2つの宿「長者屋」「不老仙」をご紹介します。

築約100年以上の古民家をリノベーションした、せとうち古民家ステイズHiroshimaの「長者屋」と「不老仙」の魅力を紐解きます

広島の隠れ里とも言える庄原市内には、築100年~250年の古民家がいくつもあります。それをリノベーションした宿が誕生したと聞き、Precious.jpが訪れたのは「長者屋」「不老仙」という2つの宿。

伝統的風情を生かしつつ、快適性を追求した宿の空間からは、すぐ目の前に美しい里山の眺望が広がります。日常の喧騒を忘れさせてくれる2つの宿の設えを、じっくりとご紹介しましょう。

訪日外国人にも喜ばれそう! 掘りごたつや縁側のある「長者屋」

広島空港から中国山地に向かって北上していくと、周囲には緑が増え、石州瓦という山陰地方にルーツを持つ赤茶色の瓦屋根の民家もまばらに。車で2時間ほど走った頃に、山あいに建つ「長者屋」が見えてきます。

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「長者屋」の前には白く、可憐な蕎麦の花が咲いていました

築約250年の入母屋造の古民家をリノベーションした「長者屋」の中に入ると、広い三和土があり、その隣には駄屋(だや)と呼ばれる、家畜のための部屋があります。昔から農業を営んできた庄原は、牛や馬を大切にする文化があり、家畜も室内で暮らした伝統がうかがえます。

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インバウンドの方も過ごしやすいよう、掘りごたつにリノベーションしています

広い三和土の左手にあるのは、囲炉裏。残念ながら、こちらで火を起こすことはできませんが、囲んで食事やおしゃべりを楽しむと、郷愁に誘われそう。

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最大6名宿泊できるため、ベッドを使用する以外の人は和室に布団を敷いて寝るスタイル
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窓枠が額縁のようになり、まるで絵を鑑賞しているかのような気分に浸れます

三和土の正面には2つの和室が。その右手には縁側があり、庄原の里山が堪能できます。

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梁などは生かしつつ、快適に眠れるようクリーンにリフォーム

和室の隣にはダブルサイズのベッドを2つ用意した寝室があります。爽やかなヒノキの香りに包まれ、ぐっすり眠ることができました。

また、忘れてはならないのがバスルーム。

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こちらもヒノキの香りに浸りながら、入浴できます

2〜3人は同時に入れるシックなバスタブを中心にした、和な雰囲気の浴室に旅情を感じられます。

出張シェフサービスで、庄原ならではの食材を使ったディナーを

「長者屋」は簡単な朝食は用意されていますが、基本的に自炊するスタイル。ですが、「長者屋」では有料オプションでシェフに出張してもらい、ディナーを作ってもらうことができます。

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シェフは東京のレストランや滋賀県のオーベルジュで10数年修行し、Uターンしてきた三河功治さん

できるだけ庄原産の食材を使ったコースは、和やフレンチ、アジアンなど、さまざまなテイストがフュージョンした料理が並びます。庄原ならではのジビエといえば、イノシシ。

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前菜は「イノシシのミンチをのせた焼きなす」。ミンチはタイ料理のような少し辛さのある味付け
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メインの「うりぼうのロースト」。ロースとバラ、ヒレに、甘みのあるさつまいもペーストをつけていただきます

イノシシ=臭いイメージがありましたが、その日捕れたイノシシを適切に処理しているため、臭みどころか、肉そのものの旨味がしっかりと感じられました。

もちろん、畑からの幸もふんだんに。

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品種の違うかぼちゃを、それぞれに調理した「4種のかぼちゃ」

かぼちゃひとつにしても、庄原ではさまざまな品種が採れるため、食べ比べも楽しい。坊ちゃんかぼちゃ(写真右上)は和風の煮ものに、油脂の多いスコッシュ(左下)はバターで焼いてあり、品種が持つ甘みを堪能できます。

生食用のコリンキー(左上)はラペにしてシャキシャキした食感に! そして変わり種がそうめんかぼちゃ(右下)。茹でることで繊維状になる品種で、火を入れたかぼちゃとは思えぬ、ツルツルとした食感が新鮮です。

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トマトときのこを入れて炊いたごはんに、薄焼き卵とトマトから出汁をとった和風のあんをかけた「卵茸の卵とじ オムライス風」

さくらしめじやポルチーニなど、秋の味覚がたっぷり。和風オムライスとも言える味わいに、ほっとした気持ちになることができました。

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庄原らしい美しい棚田の中に建つ「不老仙」

「長者屋」からさらに北上し、仙人が暮らしたという言い伝えがある場所に立地するのが「不老仙」。

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「不老仙」は美しく整えられた棚田の近くにあります

谷間にあるためか、「長者屋」よりも緑深い環境にある「不老仙」は、築約100年の古民家をリノベーション。

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建物の後ろすぐには鬱蒼とした林が。大自然を間近で感じられます

周囲に民家がほとんど見当たらないため、いっそう非日常感を味わうことができます。室内は「長者屋」同様、新しくリノベーションされていますが、こちらはキッチンがゆったりとしているのが特徴。

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当時のかまどを残したダイニング・キッチン。窓のすぐそばにまで裏山が迫っています

ダイニング・キッチンは当時のレイアウトを生かしたつくり。緑や風を感じながら、調理や食事を楽しむことができます。

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縁側のある二間続きの和室も「長者屋」と同じ
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床の間だった場所にソファを入れ、今のライフスタイルやインバウンドの方に合わせています
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ベッドはロータイプで、布団に近い感覚で眠れます

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柱や梁釘など、当時の資材をそのまま利用しつつも、現代のライフスタイルに合わせているのが両宿の特徴。冷暖房や床暖房を完備し、キッチンやバスルームなどの水回りは新調し、心地よい空間に。どちらも一棟貸しで、気兼ねなく庄原の里山や空気感を味わいたい方におすすめです。

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この記事の執筆者
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WRITING :
津島千佳
EDIT :
石原あや乃