誰しも一度は聞いたことがあるであろう「とらやの羊羹」。室町時代後期に京都で創業した和菓子の老舗「とらや」は、長い間、人々に愛される和菓子を生み出してきました。

そんな「とらやの羊羹」と言えば、やはり、黒くてつやつやとした煉羊羹(ねりようかん)を思い浮かべますよね。「夜の梅」や「おもかげ」といった商品名で親しまれている煉羊羹は、目上の方への手土産などにも定番の商品です。

【関連記事】誕生200年を迎える「とらやの羊羹」の秘密!室町時代から続く老舗和菓子店「とらや」が今なお愛される理由

しかし、実は「とらやの羊羹」は、煉羊羹だけではありません。四季折々の美しさを表現した「季節の羊羹」も人気の商品なんですよ。

本記事では、数多くの「季節の羊羹」の中から、とらやの広報担当者さんに、四季ごとに2種類ずつ、全8種類の「季節の羊羹」を厳選していただきました。

咲き誇る花の美しさを表現した「春」の羊羹2選

■1:300年の歴史を持つ羊羹「雲井の桜」(3月)

和文化_1,手土産_1,プレゼント_1,スイーツ_1,ショップ_1
「雲井の桜」 竹皮包 ¥3,600、中形 ¥1,800 販売期間:3月上旬~4月上旬

こちらは「春」の羊羹、「雲井の桜」。初出年は正徳元年(1711年)で、江戸時代の中期から続く歴史ある「季節の羊羹」です。

「雲井(居)」は雲の居るところ、はるか遠くという意味から宮中を表す言葉です。「雲井の桜」は、春の日差しの中、宮中の庭に咲き誇る桜を表しています。

■2:貴族たちの雅やかな宴「藤の棚」(4月) 

和文化_2,手土産_2,プレゼント_2,スイーツ_2,ショップ_2
「藤の棚」 竹皮包 ¥3,600、中形 ¥1,800 販売期間:4月上旬~5月上旬

4月から5月にかけて登場する「藤の棚」は、平成3年(1991年)に初出。緑の煉羊羹と、白、紫の道明寺羹で、藤棚に房をなして咲き誇る花を意匠化しています。

藤の花の紫色は、古くより高貴な色とされています。また、平安時代には花盛りの藤花の下で、「藤花の宴」と称し、貴族たちの雅やかな宴が催されたそうです。咲き誇る花の美しさと、上品さの感じられる季節の羊羹ですね。

自然の涼やかさを感じられる「夏」の羊羹2選 

■1:夏も近づく八十八夜「新茶の雫」(5月)

和文化_3,手土産_3,プレゼント_3,スイーツ_3,ショップ_3
「新茶の雫」中形 ¥1,800 のみ 販売期間:5月中旬~下旬

「新茶の雫」の初出年は、平成17年(2005年)。日本の歌百選に選ばれた「茶摘み」という歌に「夏も近づく八十八夜」という有名な歌詞があるように、5月中旬から下旬にかけて、茶所では茶摘みの最盛期を迎えます。

この「新茶の雫」は、静岡産煎茶を使った、爽やかな新茶の風味の羊羹です。茶畑を思わせる緑の煉羊羹には、少し粗めに挽いた新茶の粉末を、空を表す琥珀羹の部分には、細かい粉末が使用されています。

ひとしずくの煎茶に凝縮された旨味を味わうように、安らぎのひとときを楽しんで欲しい、そんな想いも込められているそうです。

■2:透き通るブルーの羊羹「水の宿」(7月) 

和文化_4,手土産_4,プレゼント_4,スイーツ_4,ショップ_4
「水の宿」 竹皮包 ¥3,600、中形 ¥1,800 販売期間:7月下旬~8月下旬

初出は平成11年(1999年)。夏限定の「水の宿」は、陽に照らされ、きらめく渚や泉を思わせる意匠です。透き通るブルーは、和菓子としてはやや珍しい色合いですよね。

夏には、小川のせせらぎや海辺の波音で涼を感じたり、打ち水をして暑さをやわらげたりと、水がやすらぎを与えてくれます。「水の宿」は、白道明寺羹と青琥珀羹で涼やかな水を表現した、繊細なひと品です。

日本の景観美を表現した「秋」の羊羹2選

■1:名月の里にちなんだ羊羹「新更科」(9月)

和文化_5,手土産_5,プレゼント_5,スイーツ_5,ショップ_5
「新更科」 竹皮包 ¥3,600、中形 ¥1,800 販売期間:9月上旬~9月下旬

「新更科」は初出年が安永2年(1773年)頃と、こちらも大変長い歴史を持つ季節の羊羹です。

更科(更級)は、信濃国(現在の長野県)の北部にあり、古来、名月の里として知られてきました。名月の里、更科にちなんだ「新更科」の意匠は、山と満月を表現しています。

古来よりずっと変わらない、日本の景観の美しさを堪能できる名品です。

■2:あかあかと陽に照り映える美しさ「照紅葉」(10月)

和文化_6,手土産_6,プレゼント_6,スイーツ_6,ショップ_6
「照紅葉」 竹皮包 ¥3,600、中形 ¥1,800 販売期間:10月下旬~11月下旬

「照紅葉」の初出年は平成元年(1989年)。秋の野山を彩る紅葉の美しさは、古来、歌にも詠まれ、絵画に描かれ、日本人に親しまれてきました。季節の羊羹「照紅葉」は、あかあかと陽に照り映える紅葉の美しさを表しています。

厳しい寒さに春を待ちわびる「冬」の羊羹2選 

■1:令和元年新作!「春陽の子」(12月〜1月)

和文化_7,手土産_7,プレゼント_7,スイーツ_7,ショップ_7
「春陽の子」 竹皮包 ¥3,600、中形 ¥1,800 販売期間:11月下旬~1月下旬

こちらの「春陽の子」は、2020年の干支である「子」にちなんでつくられた羊羹で、黄煉羊羹でやわらかな春の陽射しを、黒煉羊羹で春の訪れに胸を躍らせるねずみの姿を表しています。

とらやの長い歴史の中に、新しい風を吹き込む新作の干支羊羹。令和初のお正月、和菓子のひとときにも、きっと素敵な彩りを添えてくれますよ。

■2:百花にさきがけて咲く梅の花「紅梅の橋」(1月) 

和文化_8,手土産_8,プレゼント_8,スイーツ_8,ショップ_8
「紅梅の橋」 竹皮包 ¥3,600、中形 ¥1,800 販売期間:1月中旬~2月下旬

「紅梅の橋」の初出年は昭和61年(1986年)です。まだ寒さも厳しい頃から百花にさきがけて花が咲くため、「花の兄」とも呼ばれている梅の花。清楚で気品のある風情は古くより好まれ、奈良時代までは、花といえば梅を指すほどだったそう。

季節の羊羹「紅梅の橋」は、橋を挟んで咲き誇る紅梅・白梅の美しさを意匠化した、華やかな羊羹です。


これらの季節の羊羹は、一本ずつ職人の手作業でつくられています。

長い歴史の間に培われたとらやの「技術」が生み出す「四季の羊羹」は、どれも美しい四季の彩りを表現し、繊細で上品な見た目や味わいを楽しめます。

通常の煉羊羹だけでなく、道明寺羹や琥珀羹などを組み合わせたものは、食感や風味も豊かだそうですよ。

和文化_9,手土産_9,プレゼント_9,スイーツ_9,ショップ_9
四季折々の彩りを楽しめる「季節の羊羹」

とらやの「季節の羊羹」はこのほかにも、季節ごとにさまざまな意匠の商品が販売されています。味も間違いない羊羹ですが、視覚的にも日本の四季の美しさを堪能できる「季節の羊羹」にも注目してみてください。

※価格はすべて税抜です。 

問い合わせ先

  • とらや 赤坂店
  • 営業時間/平日 8:30〜19:00、土日祝 9:30〜18:00
  • 定休日/毎月6日(12月を除く)、2020年1月25日(土)、26日(日)、27日(月)
  • TEL:03-3408-4121
  • 住所/東京都港区赤坂4-9-22

この記事の執筆者
フリーランスの編集者・ライター。グルメやスイーツ、ライフスタイル系の記事執筆・編集を中心として活動中。元システムエンジニア、プログラマの経験を持つ。二児の母。趣味は料理、SNS、写真を撮ること、美味しいものを食べること。麺類と辛いもの、自分のために買うご褒美スイーツが特に好き。
Twitter へのリンク
WRITING :
伊東ししゃも