手土産やお茶菓子として、古くから親しまれている和菓子の定番と言えば、羊羹。そして、羊羹といえば、和菓子の老舗「とらや」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

室町時代まで遡るとされている、長い長いとらやの歴史。本記事では、とらやの広報担当者さんにお店の歴史や、お店を代表する和菓子について、詳しくお聞きしました。

室町時代から続く老舗和菓子店!「とらや」の歩み

老舗和菓子店・とらやは、室町時代後期の京都で創業し、5世紀に渡り和菓子屋を営んできたとされています。長い歴史を持つとらやですが、担当者さんによれば「創業の地は京都、創業年は室町時代後期としていますが、創業年に関しては、実ははっきりした年はわかっていない」とのこと。

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大正14年正月「とらや」店頭風景

「御所御用商人の御用開始時期を記した『御出入商人中所附(おでいりしょうにんちゅうところづけ)』(1754年)という、とらやに残る古文書により、後陽成天皇の御在位中(1586~1611年)から御用を勤めていたことと、御所御用は、京都で2代、3代と世代を重ねて、社会的信用のある技術力の高い店でないと勤めることができないということから、後陽成天皇の御在位中からさかのぼり、少なくとも室町時代後期には、菓子屋として商いをしていた、としています。

明治2年(1869年)の東京遷都の折、明治天皇に随行して、京都の店はそのままに、新天地・東京に店を開設。東京に店をかまえて今年でちょうど150年目になります」(担当者)

長らく御所御用を中心に和菓子屋を営み、今や名実ともに日本を代表する老舗和菓子店として人気のとらや。人々に愛される和菓子ひとつひとつにも、とても長い歴史があります。

続いて、とらやの代表菓子をご紹介していただきました。 

人々に愛され続ける「とらや」の和菓子2選

■1:200年続く銘菓!文豪も愛した羊羹「夜の梅」

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「夜の梅」竹皮包羊羹(330g×2)¥2,800

こちらの「夜の梅」は、今年で誕生200年を迎えたとらや定番の和菓子です。小形羊羹(50g)から、大形羊羹(660g×2)までさまざまなバリエーションで販売されています。

「夜の梅」の歴史は長く、菓銘(菓子の名前)は、今から300年以上も前の元禄7年(1694年)の古文書に見ることができ、羊羹としてつくられた最初の記録は、文政2年(1819年)とのこと。

「夜の梅」という名前から梅味を想像してしまいそうな和菓子ですが、中身はシンプルな小倉羊羹。ではなぜ、「梅」という言葉が使われているのでしょうか。

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夜の闇にほの白く咲く梅の花のような、美しい断面の「夜の梅」

「切った断面に見える小豆の粒を、夜の闇にほの白く咲く梅の花に見立てて、銘がつけられました。また、『古今和歌集』に、夜に咲く梅を詠んだ、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の歌があります。

『春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる』
(春の夜の闇は無意味だ。梅の花の色が見えなくなってしまうが、その素晴らしい香りだけは隠れようもない)

このような和歌の世界観を思わせるのは、菓銘の持つ力と言えるかもしれません」(担当者)

こちらの「夜の梅」は、小説家・エッセイストとして人気を博した開高健(1930~1989年)も好んで食べた羊羹なんです。開高氏は、「夜の梅」とウイスキー「マッカラン」を一緒に味わう食べ方を楽しんでいたそうですよ。

また、文豪・夏目漱石や谷崎潤一郎なども、羊羹をこよなく愛したと言われています。

人々を魅了し続ける和菓子、羊羹。担当者さんに「夜の梅」が人々に愛されている理由をお伺いしました。

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小倉羊羹「夜の梅」と、黒砂糖風味の「おもかげ」各1点を、詰め合わせたもの

 「和菓子は五感の芸術と言われます。五感とは、味覚・視覚・触覚・嗅覚・聴覚のことです。口に広がるおいしさ、四季折々の花鳥風月をうつした意匠の美しさ、黒文字(楊枝)で切るときの触感や舌触り、小豆など素材のほのかな香り、そして、菓銘(菓子の名前)の響き。

『夜の梅』の小さなひと切れには、そんな楽しみが重なり合っているのかもしれませんね」(担当者)

竹皮で包んだ羊羹の歴史は古く、元禄15年(1702年)のとらやの古文書に、記録が残っているそうです。年末年始のご挨拶や、結婚のご挨拶など、あらたまったご挨拶にもぴったりの商品ですよ。

■2:限定のデザインがキュートな「干支パッケージ小形羊羹」

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干支パッケージ小形羊羹「おもかげ」「新緑」「夜の梅」 各¥240

こちらは11月後半より毎年販売になる干支パッケージ小形羊羹です。味わいは、シンプルな小倉羊羹の「夜の梅」、黒砂糖入りの「おもかげ」、そして抹茶が香る「新緑」の3種類です。

来年の干支(子)を描いた限定デザインなので、年末年始の贈り物にも好適。どこか重厚なイメージのあるとらやの商品の中では、比較的ポップな印象で、若い人でも気軽に手に取りやすそうなデザインです。

ちなみにとらやの「小形羊羹」は、まさに「たくさんの人に手に取ってもらいたい」という思いからつくられた商品なのだそうですよ。

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発売当初の「小形羊羹」のパッケージ ※現在の形で販売するようになったのは2008年から。

「小形羊羹は、15代店主・黒川武雄が考案したものです。大正時代、六大学の野球をよく観に行っていた武雄は、観戦の帰り道にいつも、『こんなに大勢の人にたやすく買ってもらえるお菓子をつくりたい』と考えていました。

そんな折、たまたまフランスのコティ社の香水をもらい、化粧箱の大きさや洒落たデザインを見て、『これだ!』と思いついたのが、『小形羊羹』でした。

こうして、昭和5年(1930年)、『夜の梅』と『おもかげ』を一本ずつアルミ箔に包んで、小さな箱に入れた小形羊羹が誕生。香水から着想を得ただけあって、清楚でありながら、どこか華やかさもあるパッケージが特徴でした」(担当者)

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干支パッケージ小形羊羹はセットでも販売されています。

小形羊羹は、通年の人気商品。通常の小形羊羹は、3種類の味わい以外にも、「はちみつ」や「紅茶」、地域限定の「白味噌」など、バラエティ豊かに取り揃えられています。

しかし、今だけしか買えない干支パッケージ小形羊羹は、まさに“今”見逃せない一品です。この機会を逃せば干支ひと回り出合えないパッケージを、ぜひこの機会に手にとってみてくださいね。


長い歴史を持つ老舗和菓子店のとらや。本記事でご紹介した羊羹以外にも、生菓子や焼き菓子など種類豊富に取り揃えています。店舗限定、季節限定の商品も見逃せません。

和菓子の老舗とらやが、今なお愛され続ける理由は、古くからの伝統を大切にしながらも、季節や時代の変化を巧みに活かした、新しい商品を生み出し続けているからなのですね。

みなさんも、大切な人への贈り物や、年末年始のご挨拶に、とらやの和菓子を選んでみてはいかがでしょうか?

※価格はすべて税抜です。

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問い合わせ先

  • とらや 赤坂店
  • 営業時間/平日 8:30〜19:00、土日祝 9:30〜18:00
  • 定休日/毎月6日(12月を除く)、2020年1月25日(土)、26日(日)、27日(月)
  • TEL:03-3408-4121
  • 住所/東京都港区赤坂4-9-22

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この記事の執筆者
フリーランスの編集者・ライター。グルメやスイーツ、ライフスタイル系の記事執筆・編集を中心として活動中。元システムエンジニア、プログラマの経験を持つ。二児の母。趣味は料理、SNS、写真を撮ること、美味しいものを食べること。麺類と辛いもの、自分のために買うご褒美スイーツが特に好き。
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WRITING :
伊東ししゃも