毎日の食卓に欠かせない卵。生でも焼いてもゆでても、手軽に食べられる便利な食材ですが、こんなに身近なのに、意外と知られていないこともあるようです。

そこで今回は、たまごソムリエのまりこさんに卵料理の裏技や、意外と知られていない卵のトリビアをお聞きしました。

最後には、まりこさんが好きな卵料理ベスト3も! 卵好きもそうでない人も、新たな発見がきっとありますよ!

知っているともっと料理が楽しくなる!卵料理の裏技5つ

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「朝ごはん丼」(調理・撮影:たまごソムリエ まりこ)

まずは卵料理の裏技を5つ、夫婦ふたりで年間700個以上の卵を食べるという、まりこさんに教えていただきました。

■1:オムライスはフライパンに「オーブンシート」を敷いて作ると失敗しない

「オムライスをつくるときに、チキンライスを卵焼きで包むのが苦手、卵を焼きすぎてしまい見た目が美しくないなどの場合は、フライパンにオーブンシートを敷いて、その上に卵を流し入れて焼いてみてください。熱の通りが少し抑えられるので、卵の上にチキンライスをのせる作業で焦らなくてもよくなります。

チキンライスをのせたあとはシートごとフライパンから取り出し、卵がチキンライスに包まれるようにシートの端をつまんでスライドさせながらお皿の上にひっくり返せば、破けることなくきれいなオムライスをお皿に盛り付けることができます」

■2:目玉焼きの黄身を中心にするには「殻」を使う

「目玉焼きは、白身の中心に黄身があったほうがおいしそうと思うなら、ぜひ試して欲しいのがこの裏技。フライパンに卵を落としたあとのたったひと手間で、黄身を中心にすることができるのです。割り落としたら、すぐに割った殻半分を黄身にかぶせ、真ん中に移動させます。

焼いている最中は目を離さず、白身がうっすら固まり始めたら、かぶせた殻を外します。こうすると、黄身が中心になり、見た目の美しい目玉焼きに仕上がります。新鮮な卵を使いましょう」

■3:ゆで卵は「冷蔵庫で寝かす+氷水」でむきやすくなる

「ゆで卵は、殻をむかなくてはならないのがちょっと面倒ですが、むきにくかったらもっと面倒ですよね。そんなときは、少し冷蔵庫で寝かした卵を使うことが、殻をむきやすくするコツのひとつ。その理由は、新鮮な卵ほど、卵白に炭酸ガスがたくさん含まれているからです。

その炭酸ガスの影響で、殻と白身がはがれるのを防いでいるので、ゆで卵にしたときに殻がむきにくいのです。このガスは時間を置くことで抜けていくため、産まれてから1週間前後寝かせたあとでゆで卵をつくるほうが、殻がむきやすくなるのです。

さらにもうひとつ、ゆでたあと、氷水で冷やす工程を入れると、もっとむきやすくなります。ゆでて膨張した卵内が瞬間的に冷やされ、中身が引き締まり、殻と白身の間に隙間ができるためです」

■4:「ラップ」で簡易味玉ができる

「味玉をつくろうと思っても手間がかかりますし、漬け終わった漬け汁の使い道も困ってしまいますよね。実はラップを使えば簡単に一つだけでも作ることができるんです。用意するのは、ゆで卵と麺つゆとラップ、あればキッチンペーパー。キッチンペーパーを使えば、均一に漬け汁がしみます。

広げたラップに、殻をむいたゆで卵をキッチンペーパーで巻いたものをのせて、麺つゆ大さじ1をたらして包みます。そのまま冷蔵庫で半日以上おけば完成。夜つくっておけば、翌日のお弁当にも使えそうです」

■5:卵白の泡立ては「アク取り」を使うと簡単

「お菓子づくりなどの際に『卵白1個分だけ泡立てたい』『電動ミキサーを使うほどではないが、簡単に泡立てたい』というときには、アク取りを使ってみてください。ホイッパーよりも細かい目がたくさんあるので、空気を卵白に取り込むのに効率がよいのです。ボウルに卵白を入れて、アク取りでクルクルとホイッパーのように泡立てるだけ。これは生クリームにも応用することができます。お菓子づくりの役に立つ裏技です」

意外と知らない卵のトリビア4選

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ゆで卵は、寝かせた卵でつくったほうがおいしい!

まりこさんは、卵の成分・栄養や、卵の歴史、養鶏など関する知識が問われる「タマリエ検定」の三ツ星タマリエに合格しているそう。その知識と経験をもとに、あまり知られていない卵のトリビアを教えていただきました。

■1:ゆで卵は新鮮なたまごを使うのが一番おいしいとは限らない

「『食材の最高の瞬間は採れたて』というのは、ほとんどの食材に当てはまります。しかし卵については、ゆで卵にする場合、寝かせてから使ったほうが便利で、おいしくなります。

便利になる理由は、裏技のところで紹介したように、卵は時間を置くと卵白に含まれる炭酸ガスが抜けることから、殻がむきやすくなるからです。

また、おいしくなる理由は、炭酸ガスが抜けると味もまろやかになり、食感もプリッとするから。実は新鮮な卵をゆで卵にすると、えぐみとぼそぼそとした食感を残してしまうんです」

■2:ゆで卵と生卵を一瞬で見分ける方法がある!

「ゆで卵と生卵は、見た目ではどちらかわからないですが、実は道具を使わず、一瞬で見分ける方法があります。それは、卵を横に寝かせ、コマのように回すこと。安定感のある回転ならゆで卵、不安定な回転なら生卵です。

ゆで卵は、中身が固まっており、中心が安定しているので高速で回転しますが、生卵は中身がまだゲル状のため、中心が動き、フラフラした不安定な回転になります。ゆで卵を冷蔵庫で保存中にわからなくなったら使えるワザです。ただ、ゆでてしまった卵は賞味3日以内といわれていますのでご注意を!」

■3:卵を食べる習慣を持つと「美髪」に

「卵の黄身には『ビオチン』という髪の毛の生成に働きかける成分が入っています。髪の毛の成分であるたんぱく質の代謝を促し、頭皮の血流を改善し、健康的なツヤ髪の効果が期待されるといわれています。

ビオチンを効率よく摂取するには、ゆで卵や卵焼きなど卵白を加熱させる調理法が適しています。卵白にはビオチンの吸収を妨げる成分があり、加熱すると、その影響を抑えることができるといわれているためです。

ビオチンは生えてしまったあとの傷んだ髪には補修効果がないそうなので、日々の卵料理を食べる習慣が美髪の秘訣といえそうです」

■4:カラザには母乳と同じ成分が含まれている

「生卵を割ると、白身に白い紐のようなものがついていることがありますが、それを『カラザ』と呼びます。実は、カラザはとても栄養豊富な部分。カラザには『シアル酸』という成分が含まれています。『シアル酸』とは出産後の初乳に多く含まれる、細菌やウイルスの感染から細胞を守り、免疫力を高める働きをしてくれる成分のことです。ほかにも卵にはカルシウム、リン、鉄、カロチン、ビタミンB1・B2など私たちが取りたい栄養素がたくさんなので積極的に食べたいですね」

これらの裏技やトリビア、何かと役に立ちそうですね。ぜひ、日々の卵料理に生かしてみましょう!

たまごソムリエが好きな卵料理ベスト3

卵の知識や扱い方を知り尽くしているまりこさん。どんな卵料理が好きなのか、気になりませんか? そこでまりこさんに好きな卵料理ベスト3を挙げてもらいました。

■第1位:「お義母さんのミートローフ」

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「お義母さんのミートローフ」(調理・撮影:たまごソムリエ まりこ)

「旦那の母が教えてくれたメニューのひとつです。私の披露宴用のメインディッシュで私が仕込み、ホテルのシェフに仕上げてもらい、参列者に食べてもらいました。

そんな思い出のミートローフは旦那が小さいころから食べてきた思い出の味で、私好みの味でもあります。お義母さんのように子どもの記憶に残る卵料理を私もつくりたいと願望が生まれた料理です」

■第2位:「卵たくさんホワイトシチュー」

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「卵たくさんホワイトシチュー」(調理・撮影:たまごソムリエ まりこ)

「我が家のホワイトシチューはゆで卵が入っているのが正解。固ゆで、半熟、丸々、崩して…と、色んなゆで卵が楽しめるシチューです。卵入りのシチューを経験したら、一般的なシチューに物足りなさを感じてしまうようになってしまいました!」

■第3位:「だし玉うなぎ」

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写真提供「佳肴 三佐和」

「だし玉うなぎは、荒川区の谷中銀座にある『佳肴 三佐和』という割烹料理を提供するお店の一品。出汁で最高の卵の味が楽しめます。中心に山椒の実がアクセントになったうなぎが入っていて、出汁玉子とのバランスが絶妙にいいのです。

ひと口食べるほどに鼻でうなってしまうくらい。気になる方はぜひ食べに行ってみてください。お店の雰囲気のなかで食べるとおいしさが倍増します」


これらの卵料理の裏技や卵のトリビア、ぜひヒントにして毎日の卵料理に生かしてみましょう!

まりこさん
たまごソムリエ
(まりこ)千葉県出身、東京都在住のフードコーディネーター。社会人を経験後、料理家・フードコーディネーターのアシスタントを経て、映画、CMの動画料理を手がけるほか、卵に詳しいたまごソムリエとしてテレビ、Webに情報提供を行う。0歳児の母。ブログでは、たまごソムリエ・フードコーディネーターとして卵や卵料理に関する情報発信をしている。https://profile.ameba.jp/ameba/marikokkonotamag
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子、榊原淳