食空間プロデューサー・内山ゆきさんの世界を旅する家

一歩足を踏み入れた瞬間、まるで世界中を旅しているような気持ちになる─。

器やトレイ、花瓶から、テーブルやチェストといった大きな家具まで。アジア、北欧、ヨーロッパ。世界各地の古いもの、新しいもの、愛らしいもの、ポップなものなど、個性豊かなモノたちが自然と調和した空間は、好奇心を掻き立てられます。

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まるで海外のホテルのような美しい寝室。壁紙はウィリアム・モリスの「ピンパーネル」、テーブルと椅子はイギリスのアンティーク。デイベッド下に置かれた使い込まれたトランクは「グローブトロッター」。

お気に入りのギャラリーを訪れたようなワクワク感と同時に、いったん椅子に腰かけてお茶でもいただこうものなら、時間を忘れて長居してしまう。この居心地のよさはいったい…?

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多くの人が集うダイニング。独特な風合いのテーブルは丹波焼の陶芸家・市野雅彦氏の作品。寝室、ダイニングともに、世界中を旅する内山ゆきさんの住まい。

昼夜問わず、仕事関係者から親しい友人まで多くの人が訪れるこちらの部屋に住むのは、内山ゆきさん。宿やホテル、個人宅の内装や設え、インテリアをプロデュースするほか、ケータリングなども手がける、食と空間のプロデューサーです。

内山ゆきさん
食空間プロデューサー
(うちやま ゆき)東京都生まれ。食と空間をプロデュースする「旬香舎」主宰。料理教室やケータリングのほか、インテリアや空間のコーディネート、コンサルティングなどに携わる。京都の宿や個人宅も多く手がけ、卓越したモノ選びと組み合わせのセンスに、職人やアーティストからの信頼も厚い。

内山ゆきさんのHouse DATA

間取り・・・5LDK
家族構成・・・子供ふたり
住み始めて何年?・・・約2か月

「アジア、北欧、ヨーロッパ。世界を旅して持ち帰った愛しいものは、古くても新しくても自然と調和するから不思議です」(内山さん)

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ダイニング中央には、辻村史朗氏の書が。「花という字を逆さに書いてくださったもので、包まれるような大らかさに気持ちが安らぎます」。施主様からの贈り物という愛らしい猿のランプとともにゲストの目を楽しませてくれる。アフガニスタンでつくられた赤い大判ラグと、陶芸家・市野雅彦氏の黒いテーブル、やわらかな光が美しいガラス作家・辻 和美氏の照明など。
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さまざまな色や素材が絶妙なバランスで調和している。

「仕事柄、打ち合わせや買い付けなど、日本国内だけでなく、世界中を訪れます。旅先で出合って『好き!持ち帰りたい!』と感じたモノたちだけがこの部屋に集結しています(笑)。

国や素材、質感や色、年代など、一見バラバラなように見えても、それらが仲よく暮らし始める瞬間が必ずあると思っていて。ゲストの方たちがくつろいだ気持ちになると言ってくださるのも、『モノの個性と自分の好き』が一致した空間だからなのかもしれません」

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急須は京都の骨董店「うるわし屋」で。
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同じく京都で見つけた骨董のライトは、和紙の傘に張り替えて使用。

「デザインはもちろんですが、どんな明かりで暮らしたいか。光の調節も大切です」

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「厳かなアンティークシャンデリアは存在感があるので、明るすぎると主張します。あえて中央に電球を入れず、優しい光にして使用」と内山さん。

「モノの個性と自分の好きが一致した空間は、楽しさとくつろぎをもたらしてくれます」

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試験管を連ねた「ツェツェ・アソシエ」の代表作「四月の花器」。その25周年記念で25点だけつくられた「アスティエ・ドゥ・ヴィラッド」のスペシャルエディション。
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一面だけ、あるいはひと部屋だけ。色や柄を思いきって変えてみるのも上級者のテクニック。「見慣れた風景が一変。室内の印象だけでなく、家具の表情もがらりと変わって楽しくなります」とのこと。

ひと月のうち3分の1は旅へ。京都や益子、沖縄、パリ、ロンドン、モロッコ、カンボジア…。旅先では、仕事の合間をぬってアンティークショップや蚤の市、美術館やギャラリーなどを精力的に訪れるとか。

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「アスティエ」のオブジェには、指輪や時計をつけて。
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銀のトレイはモロッコから持ち帰り、サイドテーブルの天板に。奥の置物は京都の骨董店で発見(3,000円!)。

「行きつけの店だけでなく、散歩途中で偶然見かけたお店でも、いい出合いが多いですね。そのへんの嗅覚は、ちょっと優れているかも。

幼いころから旅好きの祖母に連れられて、ヨーロッパの古城など世界各地を巡っていました。おしゃれな人で、洋服の生地やカーテン地、椅子の張り地など日本にないものを見つけては持ち帰っていました。

古いものも好きで、アンティークショップなどで、"なぜあんなガラクタのなかからこんな素敵なものを発見できるんだろう?"と幼心に不思議に思ったことも。ものを選ぶ目は、そんな祖母の影響をかなり受けていると思います」

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プライベートダイニングは北欧モダンに。
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モロッコで買ったクッションの中にはオフシーズンアイテムを。「祖母愛用のテーブルはイタリアのアンティーク。家具屋さんでメンテナンスしてもらいながら使っています」とのこと。
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内山さんがロンドンの蚤の市で買った干支デザインの鏡。何度引っ越しても目につく場所に配している。

大きな家具でも小さな生活道具でも、失敗を恐れて無難なものを選ぶより、自分が「好き」だと感じた気持ちを大切にしたほうがいい、と内山さん。

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季節の花は常に欠かさない。

「ものを選ぶとき、どう使うか、どこに置くかなどはあまり細かく決めません。家に持ち帰ってから、ひとりでコーディネート大会をします。この角度が意外と素敵、この組み合わせはアリ、磨いたら色や質感がよくなるかも…など、ブツブツ言いながら(笑)

モノ同士の個性がピタッとハマった瞬間や、思わぬ化学反応が起こり、想像を超えてなじんでいく楽しさがたまらなく好き。若いころに買った、今なら選ばないようなものだって組み合わせしだいで生き生きとしてきます。だから、もっと自分の『好き』に自信をもっていいと思うんです」

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オールドバカラの酒器セット。
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「寝室のテーブルは、レシピを書いたり、本を読んだり、裁縫したりと、作業に没頭できるお気に入りの場所。好みのオブジェや娘がつくったキャンドルなどを雑多に並べて、ミルクティーを飲むのが至福のとき」
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寝室の箪笥は、日本の古いもので益子の「ペジテ」で購入。引き出し内には衣類や小物を、棚には色鮮やかな巻き物を並べて。世界で出合ったカゴもアクセント。
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「ピュイフォルカ」のシルバートレイ上には、初めて自分で「清水買い」したシルバーのコーヒーセットが。「25年前、N.Y.のMoMAで。大切な思い出です」とのこと。
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アンティークのソーイングワゴンにはティッシュやカトラリー類を。ガラス蓋の器には菓子用の豆皿が。
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カラフルなクッションは京都「染司よしおか」、ぬいぐるみは「ドナウィルソン」。

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PHOTO :
川上輝明
EDIT&WRITING :
田中美保、古里典子(Precious)