「わびさび」の「わび」と「さび」って何?「日本の美的感覚」の説明、あなたはすんなりできますか?
本日3月28日は、「茶聖」と称される茶人・千利休の忌日『利休忌』です。
千利休といえば、それまでの茶道でもてはやされていた「豪華」「高価」「希少」などのわかりやすい価値観と相対する、「質素な中にも宿る精神性の美学(のちに『侘(わび)茶』と称される茶道)」を確立した「茶聖」です。
本日は『利休忌』にちなんで「わびさび」という日本の美的感覚について、ひもといてみましょう。
1問目は、「わびさび」にも通じる「質素」という日本語を理解するための漢字クイズです。
【問題1】「素い」ってなんと読む?
「素い」という日本語の読み方をお答えください。
ヒント:「ありのままの状態」を表す読み方です。よく考えれば、知っている読み仮名のはずです!
<使用例>「彼女って、なんとなく素いイメージがあって、それが美しいのよね!」
さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 素(しろ)い です。
「その道の経験、知識がない人」という意味で「素人(しろうと)」という言葉がありますね?
あの「しろ」という読み方に通じるのですが、「素人」という言葉には、ややもすると「未熟」というようなマイナスイメージがありますね?
しかし「素」という漢字は、もともと「繭から取り出したばかりの生糸=染色されていない白い絹」という意味をもった漢字で、プラスもマイナスもない「ありのまま」を表しているのです。
「飾り気ない・ありのままの」という意味(用例:素顔)のほか、「あっさりとした」という意味(用例:素描)、「もとになる、はじめのもの」という意味(用例:要素)、「ふだんから」という意味(用例:平素)…すべては「繭から取り出したばかりの生糸」から派生した意味づけになります。
「質素」とは、「質」が「素(ありのまま)」であること、を意味します。
江戸時代になって『侘茶』と呼ばれるに至った「千利休による茶道」は、「ものごとの本質の美しさをとらえる美学」を貫いたものなのです。
利休の美的感覚を知るエピソードとして、「秋に、自ら落ち葉掃きをして綺麗にした庭に、最後に数枚の落ち葉をまいた」という話があります。驚いた弟子が理由を尋ねると、利休は「秋の庭には少しくらい葉が落ちているほうが自然で良い」と答えた、と言います。
「ナチュラルメイク」を連想しませんか?「ぱっちり二重」や「白肌」など、流行の画一的な美に妄信的に近づけるのではなく、「生まれ持った美しさ」を魅力的に整えて見せる。
「わびさび」の「わび(侘び)」とは、ナチュラルメイクのごとき、本質をクローズアップするための「引き算の美学」なのです。
利休は織田信長の茶会をとりしきるリーダー・茶頭(ちゃがしら)として取り立てられ、名を馳せた人物でもあります。
信長といえば、奇抜な策士として有名ですよね? 奇抜な策が成功するのは「ゼロからものごとを見直す目」あっってこそ。戦国時代の武将の茶会といえば、いつ敵対するかわからないような相手をもてなす、緊張感のある社交の場です。
信長は利休に、大変な観察眼を持った「面接官」的な役割も求めたのではないか?と言われています。
というところで2問目は「わびさび」の「さび」を考える問題です。
【問題2】「わびさび」の「さび」ってどう書く?
「わびさび」の「さび」の漢字表記として正しいものは、以下のどれでしょう?
1:錆び
2:寒び
3:寂び
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は・・・ 3:寂び です。
「寂び」の表現者の筆頭とされるのは、江戸時代の俳人・松尾芭蕉です。「古池や 蛙飛び込む 水の音」という句は、あまりにも有名ですよね?
俳句と言えば、芭蕉のように「静寂の美」を詠むのが王道…というイメージがありますが、実は芭蕉が登場する前は、華麗な句が全盛だったのだそうです。
芭蕉が生まれた時代は、徳川家光の治世です。約400年も続くことになる徳川の治世が安定してきた時代ですよね?
戦乱の世が終わってひと心地、「豪華なもの」「華麗なもの」を追い求める価値観が落ち着き、「静寂」や「経年劣化したものの趣」に目を向けられる「安寧」が定着して来た時代であったかもしれません。
芭蕉は、「時代に受け入れられる目を有した天才」「時代の寵児」だったのでしょう。
「わび」「さび」は、両方とも「陰性の美」を讃える言葉ですが、
「侘び」は前述したように、精神性が強く関係する「引き算の美学」。
「寂び」は、「枯れたもの、陰性のものの美」に注目する「嗜好性」を示す言葉です。
本日は、利休忌にちなんで、「わびさび」という言葉を理解するための日本語
・素(しろ)い
・質素
・侘び
・寂び
をクローズアップしました。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- BY :
- 参考資料:『正座と日本人』丁宗鐵(講談社)
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱