イタリア全土に及ぶ、ロックダウンが始まってからすでに1か月以上が経過したが、新型コロナウイルスに関する感染者の増加は、いまだ収まるところを知らない。

2016年度、世界ベスト・レストラン50で世界一に輝いたモデナの「オステリア・フランチェスカーナ」も例外ではなく、政府の要請が出ると同時にオーナーシェフのマッシモ・ボットゥーラは4月3日までレストランを休業するといち早く宣言。

これは、史上初の「ロックダウン」発令で戸惑うイタリア中のレストランに対してひとつの方向性を与えるものだった。イタリアで最も影響力あるシェフ、ボットゥーラの姿勢に共鳴し、事態の深刻さを理解したレストランが、次々と要請にしたがって休業を始めたのはまだ記憶に新しい。

2016年に世界一になって以来、いまや世界で最も予約が取りにくいレストランである「オステリア・フランチェスカーナ」は、昨年末の時点でキャンセル待ちが43万件あるとボットゥーラが正式に認めたが、そうした予約のほとんどが外国からの予約だったためことごとくキャンセル。

Purchase Futures!!

オステリア・フランチェスカーナの未来を購入する

モデナの「オステリア・フランチェスカーナ」も現在は休業中だが、シェフのマッシモ・ボットゥーラは再開に向けて力強い一歩を踏み出した。

しかし、休業中もボットゥーラの活動はやまず、連日自宅キッチンで料理する姿をインスタグラムを通じて発信。#kitchenquarantine=自宅待機キッチンと題して世界に向けてアップすることで7万5000ユーロ(約900万円)の義援金を集めることに成功。ボットゥーラはその義援金でモデナ市に救急車を寄付。いまだ感染者が衰えないモデナ市で今日も市内を走り回っているのだ。

通常「オステリア・フランチェスカーナ」の予約は3ケ月前の1日に1ケ月分の予約を受け付けるのだが、世界からのアクセスが集中して数分で完売してしまう。コロナ収束後の訪問を目指し、今も世界中から予約が殺到している。
通常「オステリア・フランチェスカーナ」の予約は3ケ月前の1日に1ケ月分の予約を受け付けるのだが、世界からのアクセスが集中して数分で完売してしまう。コロナ収束後の訪問を目指し、今も世界中から予約が殺到している。

現在、ボットゥーラは「オステリア・フランチェスカーナ」の他に、ラグジュアリースタイルのカントリーホテル「カーサ・マリア・ルイージア」、カジュアル・レストラン「フランチェスケッタ58」をモデナ市内に所有しており、現在全て休業中。しかし、ようやく収束に向けた灯りが見えてきた現在、ボットゥーラは再開に向けた新しい予約システムを発表した。

それは「パーチェス・フューチャーズ Purchase Futures =未来を購入」と呼ばれ、再開予定はまだ未定ながらも、レストランの未来を購入してほしいと世界に呼びかけたもの。購入者には、2021年12月31日までの優先予約特典が与えられた。つまりこれは世界一予約困難なレストランの予約を獲得すると同時に、現状営業できないレストランを救済するための投資でもあるのだ。

世界の大部分がまだロックダウン状態だというのに、この「パーチェス・フュ^チャーズ」は、発表直後に450名分が売り切れ完売となったのだが、それは「オステリア・フランチェスカーナでの食事」2人分950ユーロ(約11万4000円)と、4人分1900ユーロ(約22万8000円)合計450名分という高額なものだった。この反応についてボットゥーラはこうコメントしている。

「オステリア・フランチェスカーナの『未来』を購入してくれたのは主に外国の人々だが、もちろん多くのイタリア人も購入してくれた。これは、また以前のように旅行ができるようになった時、いかにイタリアが望まれているかを象徴している。そして、この現実はわたしに希望とエネルギーを与えてくれる。」

世界中の多くの国で、海外旅行どころか外出も困難な状況が続いているというのに、この事前予約完売はいかに多くの人々が「オステリア・フランチェカーナ」での食事を望み、また支えたいと思っているか、を如実に示している。これをうけてボットゥーラはあらたに「カーサ・マリア・ルイージア」「フランチェスケッタ58」というホテルとカジュアル・レストランを含めたパッケージ合計100名分の予約を開始した。

それは「オステリア・フランチェカーナ+カーサ・マリア・ルイージアでの食事と宿泊」2名分1250ユーロ(約15万円)、4名分2500ユーロ(約30万円)、「オステリア・フランチェカーナ+フランチェスケッタ58での食事」2名分1050ユーロ(約12万6000円)、4名分2100ユーロ(25万2000円)。

いまだ「オステリア・フランチェスカーナ」を体験したことない方、あるいは再び訪れたいと思っている方には同店をサポートする意味でも貴重な機会でもある。予約と購入は公式サイトから可能だ。

「オステリア・フランチェスカーナ」公式サイト

オステリア・フランチェスカーナ

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この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。