新型コロナウイルスの影響下により、在宅勤務や時差出勤などの働き方に変化があった人は多いのではないでしょうか。しかし睡眠の質が下がり、夜型や規則正しいとはいえない生活になっている人もいるようです。

株式会社ブレインスリープが2020年4月17日(金) ~20日(月)、緊急事態宣言が早期に出された7都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)の有職者1,000人を対象に実施したアンケート調査の結果から、在宅勤務・時差出勤になった人の「睡眠」事情や免疫力アップ対策などの生活実態を見ていきましょう。

働き方に変化があった人で「睡眠時間が長くなった」は27.8%

新型コロナの影響を受け、働き方に変化があった人は、変化がなかった人と比べて、睡眠時間が長くなった人の割合が多くなっていました。働き方に変化があった人は27.8%、変化がなかった人は8.8%です。

これだけを見ると、在宅勤務などになったことで長い時間眠れていると、良くなった印象があります。しかし「就寝時間・起床時間」の変化を見るとその実態が見えてきます。

リモートワーク、時差通勤になった人は時間帯が遅くずれこむ傾向に
リモートワーク、時差通勤になった人は時間帯が遅くずれこむ傾向に

就寝時間、起床時間ともに、働き方に変化があった人のほうが、変化がなかった人に比べて遅くなった人が多くいました。

働き方に変化があった人で、特に起床時間が遅くなった人は33.9%にも上り、通勤時間が減った分、“遅寝遅起き”傾向になっているようです。

睡眠の質が「よい」から「わるい」に変わった人も

夜型に移行しているとはいえ、睡眠時間が長くなり、きちんと睡眠が確保できていれば問題ないように見えますが、長く眠ればいいわけではなく、「睡眠の質」が大事というのは最近、よく耳にすることです。

本調査では「睡眠の質」についても問いがあり、新型コロナウイルスの影響後に睡眠の質が悪くなった人は、働き方に変化があった人で13.8%、変化がなかった人で7.3%となっていました。

睡眠の質にも変化が現れた
睡眠の質にも変化が現れた

睡眠の質が下がったのは、働き方に変化があった人のほうが多い結果となりました。

規則正しい生活を送れていない人は全体で28.5%

また、「規則的な生活が送れているかどうか」の問いに対して、働き方の変化の有無に係わらず、全体の28.5%の人が「規則正しい生活が送れていない」と回答しました。

平均して1/3近く人が規則的な生活が乱れがちに
平均して1/3近く人が規則的な生活が乱れがちに

そのうち、働き方に変化があった人は31.7%、変化がなかった人は24.0%となっており、特に働き方に変化があった人のほうが不規則な生活になってしまっているようです。

このことから、働き方の変化が、生活リズムに影響を与えている可能性が示唆されています。

免疫力向上対策の1位は「しっかり睡眠をとること」

睡眠は、多くの人に「免疫力向上対策」として意識的に取り組まれているようです。

「免疫力を上げるために現在取り組んでいることを教えてください」という問いに対して、1位は「しっかり睡眠をとる」で63.0%、2位は「健康的な食生活を送る」で60.3%、3位が「適度な運動を行う」で31.1%でした。

食生活よりも睡眠が上回る結果に
食生活よりも睡眠が上回る結果に

本調査でアドバイスを寄せているスタンフォード大学の西野精治さんによれば、睡眠には「免疫を増強する、記憶の定着や整理を行う、脳の老廃物を除去するという多様な役割があり、不適切な睡眠により種々の病気のリスクがあがる」ことが明らかになっているといいます。

また「睡眠不足では、風邪や、インフルエンザの罹患率も高まり、インフルエンザのワクチンを接種しても睡眠を取らないと抗体ができにくいといった報告もある」そうで、睡眠は今の時期、やはりしっかりとることが重要であるようです。

そして、「睡眠の質」と「規則正しい生活リズム」も重要であるといいます。

「睡眠と覚醒は表裏一体で、良い睡眠は朝からすでに始まっていて、良い目覚めが、日中のパフォーマンスを高め結果的に良い睡眠をもたらすことが可能となります。緊急事態宣言下では、家族ぐるみで、規則正しい生活を心がけ、生活リズムを保ち、良質な睡眠を得ることにより、免疫力をアップさせることが大切です」

在宅勤務や時差出勤で、まさに今、夜型になっている、睡眠の質が落ちている、生活リズムが乱れていると自覚している人は、ぜひ免疫力アップのためにも改善していくことが重要といえそうです。

ぐっすり眠ることのできる工夫をしながら、規則正しい生活リズム維持を心がけましょう。

西野 精治さん
医学博士、スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所所長、株式会社ブレインスリープ 最高経営責任者 兼 最高医療責任者、認定資格 精神保健指定医、日本睡眠学会専門医
(にしの せいじ)1955年生まれ、大阪府出身。大阪医科大学大学院からスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。2000年、グループの中心として突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の主たる発生メカニズムを突き止める。2005年にスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNL)所長に就任。2016年より一般社団法人良質睡眠研究機構の代表理事に就任。2019年5月、自身が代表を務める株式会社ブレインスリープを設立。ブレインスリーブホームページ

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この記事の執筆者
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WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子