手紙の基本要素である「時候の挨拶」。「できるだけシンプルに」を心掛けたいビジネスメールにおいても、コミュニケーションを円滑にするための「挨拶文」の基本は押さえておきたいところです。今回のテーマは「梅雨の挨拶文」。この時期にふさわしい「時候の挨拶」や「結びの言葉」について、そのまま使える実践例文とともに解説します。

【目次】

季節や天候にマッチした挨拶の文章を書けますか?
季節や天候にマッチした挨拶の文章スキルは大人のたしなみのひとつです。

【そもそも「時候の挨拶」って何?】

■時候の挨拶とは?

「時候」とは、「四季折々の気候やその時々の陽気」のこと。つまり「時候の挨拶」は、その季節や天候に合わせた挨拶のフレーズです。手紙や挨拶状、案内状などに用いられます。手紙は一方的な連絡手段なので、要件だけを伝えては、相手にぶしつけな印象を与えてしまいます。そこで、「時候の挨拶」が必要となるのです。まずは手紙の基本的な構成からおさらいしましょう。
1)書き出しで季節の移ろいに触れつつ(時候の挨拶)相手の近況を伺う……前文
2)気持ちが和んだところで要件を記す……主文
3)最後に相手の健康を願って心地よい読後感へ導く……末文
4)日付や差出人など……後付
上記4つが、手紙の基本的な構成要素です。

■「時候の挨拶」にはどんなものがある?

・「挨拶状」「案内状」などで多用されるのは「漢語調」
 「時候の挨拶」は、手紙の最初に書かれた、季節を表す言葉を用いた挨拶の文章です。 「漢語調」と「口語調」の2種類があり、「漢語調」とは、古い中国の言葉が用いられた形態で、「春陽の候」「初夏の候」といったフレーズ。「候」は、季節や気候の意味を表す言葉で、「そうろう」ではなく「こう」と読みます。改まった印象を与えるため、ビジネス文書でよく使われます。

・ビニネスメールでも使われる「口語調」
「口語調」はややカジュアルな雰囲気。たとえば、「新緑が美しい季節となりました」や「暑い日が続いていますが」といった話し言葉に近い文章です。相手に親しみやすい印象を与えるので、ビジネスメールでも多用されます。「漢語調」と「口語調」は、手紙を送る相手やシーンによって使い分けるとよいでしょう。


【ビジネスメールに「時候の挨拶」は必要?】

ビジネスメールはできるだけシンプルであることが求められます。そのため手紙とは異なり、一般的に「時候の挨拶」は必要ないと言われています。特にお詫びのメール要件を早急に伝えなければいけない場合、また、同じ案件で何度もやりとりしているときなどには、時候の挨拶は不要でしょう。とはいえ、季節感を取り入れた挨拶文は相手とのコミュニケーションに役立ちます。事務的な要件に入る前のワンクッションにもなりますから、覚えておいて、必要なときいつでも使えるようにしておきたいものです。


【梅雨時期の「時候の挨拶」例文】

梅雨の時期には、大きく3つに分けることができます。それは「梅雨入り」と「梅雨のなか休み」、「梅雨明け」です。ここでは、それらの時期に合った季語を使った「時候の挨拶」例文をご紹介します。漢語調、口語調は、相手との関係や状況に応じて使い分けてくださいね。

■梅雨入り

入梅も間近となりましたが、貴社におかれましては、ますますご健勝のことと存じます。
長雨の候、ますますご隆盛のこととお喜び申し上げます。
入梅のみぎり、いかがお過ごしでしょうか。
梅雨の季節となりました。
入梅の折から、蒸し暑さが続く毎日です。

■梅雨のなか休み

梅雨晴れの候、貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
梅雨晴れの候、皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
梅雨晴れで、夏本番を思わせる暑さとなりました。
梅雨のなか休みで青空がひろがり、久しぶりに気持ちよく過ごしています。
梅雨夕焼けが美しい時期を迎えましたが、いかがお過ごしでしょうか?
梅雨入りしたというものの、今年は例年より雨が少ないようです。
・今年は空梅雨のようで、連日好天が続いています。
・まるで梅雨が明けたかのような、夏の陽ざしが降り注いでいます。
梅雨明けが待たれる季節です。

■梅雨明け

梅雨明けの候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
梅雨明けのみぎり、貴殿ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
・ようやく梅雨もあがり、気持ちのいい青空が広がっています。
雨上がり、草木の緑も一層深まったように感じられます。
梅雨が明け、いよいよ夏本番ですね。
梅雨が明け、夏を迎える前の清々しい季節を迎えました。
梅雨明けとともに初夏の気配が色濃くなってまいりました。

■梅雨を象徴する「紫陽花」を季語に使って

・紫陽花の候、皆さまにはいっそうご活躍のこととお慶び申し上げます。
・紫陽花のみぎり、貴社いよいよご繁栄のこととお慶び申し上げます。
・紫陽花に雨つぶが落ち、より美しさを感じます。
・紫陽花の七変化が楽しい今日この頃、皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。
・紫陽花が見ごろを迎えています。


【梅雨時期、6月全般のビジネスメールの「末文」「結び」は?】

末文(結びの言葉)には、「相手の健康・幸せ」を願う言葉を添えます。ビジネスメールの場合、季節に関連した挨拶は省いてしまってもいいでしょう。

梅雨時期は… 

・(思わぬ梅雨寒が続いております)お風邪など召されませんよう、ご自愛ください。
・(梅雨空が続き)体調を崩しやすい季節です。健康にはご留意ください。
・(梅雨が明ければいよいよ夏本番。お元気に夏をお迎えください。
・(梅雨明けが待ちどおしい今日この頃)お健やかにお過ごしください。
・すっきりしない天気が続きますが、お体おいといください。

■6月全般に使える「末文」や「結びの言葉」は?

・末筆ながら、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
・まずは略儀ながらお礼かたがたご挨拶申し上げます。
・皆様のますますのご活躍を祈念いたしております。
・日増しに暑さが増す季節、お体にお気をつけください。
本格的な夏を待ちわびつつ、まずは御礼のみにて失礼いたします。

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梅雨時期の挨拶には、つい「うっとおしい雨」や「蒸し蒸しとした暑さ」など、ネガティブなワードを並べたくなってしまいます。しかし、これらの言葉は相手にも不快な思いが伝わってしまうこともあるため、避けたほうが賢明です。 6月の美しい情景を切り取るような豊かな言葉で、季節の挨拶をしたいものです。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『心が通じる 手紙の美しい言葉づかい ひとこと文例集』(池田書店) :