東京・青山、骨董通りの先。ビルの一室に店を構える「ブリフトアッシュ」。扉を開けると、まるで隠れ家バーのような空間が広がります。ここは、これまでの靴磨きのイメージが覆るような、カウンターで磨くバースタイルの靴磨き店です。

「ブリフトアッシュ」の靴磨き職人、山地悠介さん
「ブリフトアッシュ」の靴磨き職人、山地悠介さん

今回は、お仕事やあらゆるシーンで活躍するレザー素材のパンプスの上手なお手入れ法を「ブリフトアッシュ」の靴磨き職人 山地悠介さんに教えていただきました! 自宅で簡単にできる基本ステップを、ダイジェスト版のムービーとともにご覧ください!

使用するアイテムは、左から、馬毛ブラシ、クリーナー、豚毛ブラシ、乳化性クリーム、布
使用するアイテムは、左から、馬毛ブラシ、クリーナー、豚毛ブラシ、乳化性クリーム、布
メンテナンスを始める前のパンプス
メンテナンスを始める前のパンプス

靴磨きのプロのよるメンテナンスは5ステップ

■まずは靴のメンテナンスを2分動画でチェック!

■STEP1:ほこりを落とす

しなやかな馬毛ブラシで細部のほこりまで払っていく
しなやかな馬毛ブラシで細部のほこりまで払っていく

「デイリーケアにおいて、ほこりを落とすことがとても大事です!」と力説してくださった靴磨き職人の山地悠介さん。馬毛のブラシで往復しながらブラッシングをし、表面に付着したほこりを落としていきます。馬毛ブラシには、比較的やわらかな素材である馬のたてがみ部分の毛を使っています。

「ほこりは、蓄積するとカビの原因になってしまいます。ほこりの多い環境に靴を置いておくと、ほこりが靴から油分と水分を吸い取り、乾燥してバキバキとした革の状態になってしまうんです。そのため、汚れを落としてあげることがお手入れの基本ですね」

見逃しがちなカーブ部分や金具の周りも、まんべんなくブラッシングするのがコツだそう。

「歯磨きをするときのように、隙間にもブラシの毛先を駆使してほこりを落としていきましょう」

■STEP2:クリーナーで拭き取る

表面の汚れをきちんと汚れを落としていく
表面の汚れをきちんと汚れを落としていく
一度につける量は500玉くらいが目安
一度につける量は500玉くらいが目安

次に、クリーナーを使って汚れを落とします。

「クリーナーの量もポイントです。大量につけてしまうとシミの原因になってしまいます。目安は、500円玉ぐらいの量です」

布を指に巻きつけクリーナーを染み込ませたら、さっそく表面の汚れを取っていきます。使うクリーナーは、上記の量を片足分で2回ほど。ちょっとしたコツですが、クリーナーを布につけたら一度タオルなどの上でなじませると最初に触れた部分に多くクリーナーがつき過ぎるということを防ぐことができます。

「ポイントは、洗顔と同じような感覚で指に力を入れないこと。ゴシゴシと必要以上に力を加えると、革を傷めてしまいます」

また、ここで使用する布はできるだけ毛羽立ちの少ないものを用意するのがオススメ。繊維が革に付着するのを防ぐためです。「ブリフトアッシュの場合は、契約しているホテルから不要になったシーツを買い取っているんですよ。廃棄されるシーツの有効活用にもなりますし、素材がぴったりなんです」

ここまでが、汚れを「落とす」作業。クリーナーを使用することで、ブラシで落とし切れなかった汚れや古いクリームまできちんとオフすることができます。

■STEP3:クリームを塗る

スキンケアでいう、保湿&栄養補給になる
スキンケアでいう、保湿&栄養補給になる
クリームで保湿
クリームで保湿

続いて、クリームで保湿をしてゆきます。今回は無色のタイプを使用します。

「通常、黒い革靴には黒色のクリームを使います。男性では、革靴の色に合わせて何色かクリームを持っている方も多いですよね。でも女性の場合、何色もそろえるというのは大変かと。無色のものをひとつ持っていると、比較的どんな靴にでも対応できるので重宝すると思いますよ」

つける量は、片足あたり人指し指先端に少量が目安です。指で塗るのが気になるときは、クリーナーで使用したような布またはブラシを使って、薄くまんべんなく伸ばしていきます。

「指で塗ることのメリットは、体温でクリームの浸透がより良くなるんです。表面の保湿ではなく、“浸透させる”ということを心がけています。ラップを指に巻く、というのも指が汚れないオススメの裏技です」

クリームをつける量は、その靴の乾燥具合によっても変わってくるそうです。

「もうクリームが入らない“お腹いっぱい”という合図は、革の表面にクリームの膜が残るような状態。これが、もう保湿が十分されているというサインです」

たっぷりと保湿剤が浸透した革は、やわらかくてしなやか。返りも良くなるので、歩きやすくなるというメリットもあります。

■STEP4:クリームをなじませる

ブラッシングをすることで、クリームが革にしっかりと浸透
ブラッシングをすることで、クリームが革にしっかりと浸透

続いて、やや硬めな豚毛素材のブラシでマッサージ。先ほどのクリームを全体になじませながら均等に広げるイメージで手を動かしていきます。

「傷がつく心配はほとんどないので、適度な力を入れながら全方位にブラッシングをします」

硬さのある豚毛ブラシを使うことで、革にちょうど良い“テンション”を加えることができます。

「マッサージをしてあげると、よりクリームが中に浸透して革がやわらかく、なめらかになっていくんですよ。ひび割れ防止にもなりますし、足を入れたときの履き心地も格段に良くなってきます」

同じレザーでもバッグや財布と違い、靴は“硬くなる”理由があるそうです。

「足から出た汗に含まれている塩分が、革を硬くします。靴に限らず、革に塩を付けると硬化してしまうんです」

日々汗を吸っている革靴こそ、こまめなお手入れが必要なんですね。

■STEP5:乾拭きをする

余分なクリームを拭き取ると、ツヤが出てくる
余分なクリームを拭き取ると、ツヤが出てくる

いよいよ最終工程。布で乾拭きをし、表面に残ったクリームを拭き取っていきます。乾拭きをすることで、ツヤが出てきます。これまでの同様に毛羽立ちの少ない布を指に巻きつけて、常に布のきれいな面で全体を軽く拭くのがポイントです。布のほか、着なくなったTシャツもオススメだそう。ツヤが蘇ったところで、ケアは完了です!

仕上がりはこちら
仕上がりはこちら

金具の装飾がある場合は、薄めたアルコールを含んだ布で優しくクルクルと撫でるように。「iPhoneの画面を拭くような力加減ですね」力を入れるとメッキが剥がれてしまうこともあるので注意が必要です。

「ブリフトアッシュ」では、パンプスや革靴、ロングブーツまで対応
「ブリフトアッシュ」では、パンプスや革靴、ロングブーツまで対応
オリジナルのクリームは、化粧品会社との共同開発により、人の肌に塗っても問題のない成分でつくられている
オリジナルのクリームは、化粧品会社との共同開発により、人の肌に塗っても問題のない成分でつくられている

そろそろサンダルから、パンプスのおしゃれが楽しい季節。ビジネスシーンにおいても「靴」は大切な要素です。靴まで手が行き届いてることで、品がありスマートな印象をもたらすことができます。8〜10回ほど履いたら、一度はお手入れをするのが目安だそう。お気に入りの靴を長く愛するためにも、定期的なケアを習慣にしてみるのはいかがでしょうか。

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この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
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EDIT&WRITING :
八木由希乃