世界各国、メジャーな国への旅はひととおり終えて、毎年の旅先もそろそろマンネリ化…。そんなときには新たな感動と出合う、ワンランク上の旅に出かけましょう。次なる旅先を探している大人のキャリア女性に向けて、自分だけの「聖地」ともいえる場所への最高に贅沢な旅のプランを、各ジャンルで活躍する旅のプロに教えていただきました。

今回は、洗練された美食とアート、カルチャーを楽しみたい人におすすめしたい「ヨーロッパエリア」の旅先を紹介します。

■1:イタリア・ローマ「コロッセオ」の世界遺産が舞台のコンサート

写真は’09年4月のイタリア中部地震で被害を受けた、音楽学校の再建を目的に行われたチャリティコンサートの様子。過去にアーティストのライブなども開催されている。 ©Sipa Press/amanaimages
写真は’09年4月のイタリア中部地震で被害を受けた、音楽学校の再建を目的に行われたチャリティコンサートの様子。過去にアーティストのライブなども開催されている。 ©Sipa Press/amanaimages

世界各地を演奏会で飛び回っている雅楽師の東儀秀樹さんが選んだのは、イタリア・ローマの「コロッセオ」。「演奏会で訪れた土地は、少ない時間でも必ず観光します。その際、事前リサーチはしないですし、ガイドブックに載っていないところにも平気で行くタイプ。まるで昔からそこで暮らしている人…みたいな顔をしていると、いろいろ大丈夫みたい(笑)」。

そんなふうに、どんな場所にいても楽しむ準備は万端という東儀さんが大好きな国のひとつが、イタリア。「歴史的建造物と現代的なものがうまく融合しているところや、気さくな国民性なども含めて、日本に通じる部分があると感じています。そんなイタリアにあるコロッセオのような、とてつもなく古くからある世界遺産で、笙の演奏ができたら最高! コロッセオと同じく、笙も2000年以上前に生まれた歴史ある楽器で、古代の人はその音色を『天から差し込む光』と考えていたんです。古の時代から、雅楽の音色にこうして宇宙を感じていたなんて、とてもロマンを感じます。西洋人に演奏の感想を聞いて『懐かしい』と答えるのも、どこか納得。コロッセオでの演奏が実現できたら、次はピラミッドの頂いただき、さらには国際宇宙ステーションでの演奏も実現させたいです」

問い合わせ先

  • コロッセオ 
  • 約1940年前に建てられた円形闘技場で、世界遺産に指定された古代遺跡。かつては5万人を収容できたという巨大建造物。

■2:バルト海に浮かぶボーンホルム島で、繊細で先鋭的なディナーを

バルト海
バルト海

人気フラワーアーティストのニコライ・バーグマンさんが選んだのは、デンマーク・ノーンホルム島への美食の旅。「バルト海の宝石」とも称されるボーンホルム島までは、コペンハーゲンからフェリーで7時間。「デンマークで、夏のバカンスを過ごすのに最適な場所がここ。とにかく自然が美しく、ここでしか見られない白い砂、花の色や植物の形、香り、空の色、夕日…すべてがアートに感じられる島です」

2007年にオープンしたレストラン「カドー」 ©Marie Louise Munkegaard
2007年にオープンしたレストラン「カドー」 ©Marie Louise Munkegaard

そして、日本・デンマーク国交樹立150周年親善大使も務めるニコライさんにインスピレーションを与えてくれるものが、レストラン「カドー」の料理。島で採れる素材をうまく取り入れた、繊細かつ先鋭的な味わいに、わざわざ足を延ばしたくなるのだそうです。「10年前は無名だったシェフのニコライ・ノアゴー氏が、今ではミシュランで星を獲得するまでになったことに驚きます。でも、彼の根底にある優しさ、温かさは、今も料理に表れていると思います」。海を見ながらのディナーもまた、ニコライさんのクリエイティビティの原動力となるのです。

問い合わせ先

  • KADEAU(カドー) TEL:+45-5697-8250
  • 「ノーマ」をはじめ北欧料理の有名店シェフも注目する食材の宝庫、ボーンホルム島で、島出身のシェフが幼なじみと一緒に始めた店。 営業期間は4~9月。夏休みにはランチも。※営業時間は要問い合わせ。

■3:フランス・パリ「リッツ パリ」ココシャネルスイートに宿泊

ココ・シャネルが常宿としていたスイートルームもリニューアル。ココ・シャネルスイート1泊€18,000~(約¥2,335,500〜相当)
ココ・シャネルが常宿としていたスイートルームもリニューアル。ココ・シャネルスイート1泊€18,000~(約¥2,335,500〜相当)

「若いころは、海外でファッション撮影をする機会が多く、公私ともによくパリに訪れていました。現地で、メゾンからの貸し出しに奮闘していたあのころが懐かしいです。当時は『リッツ パリ』に宿泊するのは時期尚早と思っていましたが、昨年、大規模な改装を終えてリオープンしたということで、再び思いを馳せるようになって」。そう語るスタイリストの長友妙子さんは、現在、各界の一流の人々も顧客にもつパーソナルスタイリストとして活躍中。

彼女へのオマージュとして、金張りのミラーや漆塗りの装飾、黒と白で統一したインテリアが施され、ラグジュアリーな品格を放つ
彼女へのオマージュとして、金張りのミラーや漆塗りの装飾、黒と白で統一したインテリアが施され、ラグジュアリーな品格を放つ

「今後の展望として、『ハイブランドのオートクチュールもアテンドできるようになりたい』と考えています。それにはまず、自分がオートクチュールをつくりたいです。それも『リッツ パリ』の真裏にあるカンボン通りのシャネル本店で。そして、新しいキャリアに向かうにあたり、自分を奮起させる意味も込めて『リッツ パリ』の「ココシャネルスイート」に泊まることができたら、もう最高の気分です」

【関連記事:リッツ パリの歴史的なココ・シャネル スイートを堪能】

問い合わせ先

  • リッツ パリ TEL:+33-143-16-30-30
  • 建築家ティエリー・デスポンにより、4年の歳月をかけた大規模なリノベーションを終え、2016年6月にリニューアル。外壁のほか、レストランやバーなども修復・改装されて、大人の贅沢を味わえる。

■4:スペイン・ビルバオ「アスルメンディ」でバスク地方の伝統食を

オマール海老とテクスチャーの違うウニ
オマール海老とテクスチャーの違うウニ

美食の街として知られる、スペイン・バスク地方の中心にあるビルバオ。その中でも急成長を遂げる店がこの秋、東京にもオープンするという情報を聞いて、レストランジャーナリストの犬養裕美子さんはその味を確かめにスペインへ。

サクサクの生地の上にホウレンソウのピュレを敷き、5色のトマトを盛り付けたスペシャリテ。コースは€180(約¥23,000相当)
サクサクの生地の上にホウレンソウのピュレを敷き、5色のトマトを盛り付けたスペシャリテ。コースは€180(約¥23,000相当)

「レストラン『アスルメンディ』は、小高い丘の上にあります。スペイン最年少の36歳でミシュラン3つ星(’13年版)を獲得したエネコ・アチャ・アスルメンディ氏の手がける料理は、どの皿も色彩豊かで、味・テクスチャーのバランスがとても革新的。たとえば、写真上は『オマール海老とテクスチャーの違うウニ』。皿の淵右の「ウニを巻いたオブラート」と、左に散らした「ウニのエスプーマにのせた赤い花。オマール海老は赤いソース(パプリカ、麺つゆ、魚介の出汁)との組み合わせが妙に親しみを感じる。バスク料理を礎に受け継ぎながらも、時代の最先端を行くエネコ氏の料理は、衝撃と感動を呼ぶこと必至です」

問い合わせ先

  • アスルメンディ TEL:+34-944-558-359
  • 2015年、スペインガストロノミー賞を受賞。今秋、六本木に「エネコ東京」がオープン予定。※要予約

■5:バルト海「シルバー・クラウド」の北欧クルージング

シルバー・クラウド
シルバー・クラウド

北半球の夏、白夜の季節には、たくさんの船がバルト海を周遊しています。2万島以上もある小さな島の間を静かに進むクルーズ船には、そこからしか見えない景色があります」。大人の船旅を提案しているクルーズコンシェルジュの保木久美子さんのおすすめは、ラグジュアリー船での旅。「船上で暮らすように過ごすことが旅の目的の場合、これまでに7日間のクルーズで各寄港地では下船しなかったことも。何もしない、という選択肢も贅沢です」

問い合わせ先

  • シルバー・クラウド TEL:03-5405-9213(ICM)
  • 全室スイート、バトラー付きの、ラグジュアリー・クルーズ船。ストックホルムを出航してサンクトペテルブルクへ向かうコースがおすすめ。

■6:オランダ「クレラー・ミュラー美術館」で近代絵画を鑑賞

クレラー・ミュラー美術館 ©bridgeman images/amanaimages
クレラー・ミュラー美術館 ©bridgeman images/amanaimages

キュレーター・林 綾野さんが選んだのは、世界的に有名なゴッホのコレクター、クレラー・ミュラー氏の私設美術館。ゴッホを含めた多彩なコレクションもですが、広大な森林公園の中というロケーションも素晴らしい。野の花や豊かな緑を楽しめ、園内フリーの自転車で森の中を走るのは、最高に気持ちがよく、野生のリスや鹿に出合えることも」。図版でしか見たことのない絵画を、実際に自分の目で確かめ、感じたい。その欲望が、林さんを旅へと駆り立てます。

問い合わせ先

  • クレラー・ミュラー美術館 
  • オランダのデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内に建つクレラー・ミュラー美術館。ゴッホコレクションは、世界でも2番目の規模を誇る。『夜のカフェテラス』など名作も多く所蔵。庭園にはロダンなどの彫刻作品が点在している。

■7:クロアチア・アドリア海沿岸「ドブロヴニク旧市街」を散策

ドブロヴニク ©Alper Uke/500px/amanaimages
ドブロヴニク ©Alper Uke/500px/amanaimages

紺碧の海をバックに建ち並ぶ白い壁とオレンジの屋根。クロアチア南部のドブロヴニク旧市街は、「アドリア海の真珠」と称される街。「美しい世界遺産を巡りたい」という建築家・永山祐子さんの欲望をかなえる、街自体が世界遺産になった場所です。「旅先では、その土地の日常を見たいので、観光客が歩かない住宅街やお店などに行くことも。ドブロヴニクでも城壁や要塞だけでなく、街の中を散策して人々の暮らしを感じたい」

問い合わせ先

  • ドブロヴニク TEL:03-3265-1640(ユーラシア旅行社・ヨーロッパ担当直通)
  • クロアチア南部の小さな港町。13世紀ごろから地中海交易の拠点として栄えた要塞都市。
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以上、大人の欲望を満たす至福のディスティネーション「ヨーロッパ編」はいかがでしたか? あの絶景、あのホテル、あのひと皿…こだわりの「あの」に出合うための贅沢な旅プランを、次の旅先の参考にしてみてください。

EDIT :
谷 侑希美、海渡理恵、宮田典子、剣持亜弥(HATSU)、佐藤友貴絵(Precious)
RECONSTRUCT :
渋谷香菜子