「満月」から「新月」へ、やがてまた「満月」に…月が一定の周期で満ち欠けを繰り返し形を変えることは、誰でも知っていますが、「ではその理由は?」と聞かれてきちんと説明できますか? わかってるようで実はよくわかってない…そんな論理を誰にでもわかりやすく説明できたらカッコいいですよね! 今回のテーマは「満月」。月の満ち欠けの仕組みをはじめ、月の呼び名や、満月と新月が環境や体調に与える影響についても解説します。

【目次】

月は太陽の光に照らされて光ります。
月は太陽の光に照らされて光ります。

【月はなぜ形が変わる?満月から新月への周期は?「基本事項」】

■なぜ月は形を変えるの?「理由」

月が満ち欠けを繰り返して形を変える理由は、大きくふたつあります。
1)月が地球のまわりを回る衛星であること
2)月は自分自身で光っているわけではなく、太陽の光を反射して光っていること

月の満ち欠けを説明する際に大切なのは、月自体は発光しないという事実です。私たちが月を認識できるのは、月が太陽によって照らされているから。月が光って見える部分は、太陽の光に照らされているところ。そのため月が地球の周りを回るにつれて、光って見える部分も変化します。私たちが地球から月を見るとき、月が太陽に対してどの方向にあるかによって、月の形は決まります。

■「新月」「満月」とは?月の形が変わる理由

地球から見て、月が太陽と同じ方向にある時が新月です。地球からは、太陽の光が当たらない、月の「夜」の部分しか見えません。だから、私たちには月が見えない、認識できないのです。月の公転(地球の周りを回ること)により、太陽の東、角度90度の位置にいれば、地球からは月の西半分が光って見える半月です。これがすなわち、上弦の月。太陽と地球、月が一直線に並ぶ位置、角度としては太陽と180度の位置にくれば、月全体が照らされ、満月となります。さらに太陽の西90度のところにくると、月の東半分が光る下弦の月になります。そして再び、月は太陽と同じ方向の位置となり、新月になるのです。

■月の満ち欠け「周期」は?

月の満ち欠けの周期は、「朔望月(さくぼうげつ)」といいます。「朔望月」は、平均29日12時間44分です。実は、月が地球のまわりを1周する公転周期は27日7時間43分なのですが、その間に地球も太陽の周りを少し回っているため、同じ位置関係に戻るのに約2日ほど余計にかかるのです


【月の満ち欠けによる名前、呼び方】

月は趣ある呼び名を数多くもっています。ここでは、そのなかのいくつかを、月齢とともにご紹介します。

■「月の呼び名」を知る前に…「月齢」って何?

「月齢」とは、月と太陽が同じ方向にきたときからの経過時間、つまり新月から何日経過したのかを示す数字です。新月を0として、翌日が1、その次の日が2と、1日経過するごとに1ずつ数が増えていきます。先に説明した通り、月の満ち欠けの周期は、平均29日12時間44分。月の運動には遅速があるため、最大0.6日程度の前後はありますが、上弦の月齢は「7.4」、満月は「14.8」、下弦は「22.1」となります。つまり、月齢を知れば、月の見かけの形や明るさの見当をつけることができるのです。

では次に、月齢にからめて、月の呼び名をご紹介していきましょう。

新月:月齢0(1日目の月)

 ※太陰暦では、月の初日を朔日(1日目の月)としたため、月齢とは1.0~2.0日のズレが生じます。

新月は、月の満ち欠けが始まる月。地球から見て、月が太陽と同じ方向にあるため、私たちは月の姿を見ることができません。「1日目」を意味する「朔」という文字を使い、「朔月(さくげつ)」とも呼ばれます。

■三日月:月齢2(3日目の月)

3日目の月が「三日月(みかづき)」です。三日月も、二日月同様、日没ごろに西の低い空で見られます。

■上弦の月:月齢6(7日目の月)

「上弦の月」は、満月を縦半分に切った形の月で、7日目に見られます。この形が、弓の形に見えることから「弓張月(ゆみはりづき)」とも言います。満ちていく月です。

■十三夜:月齢12(13日目の月)

13日目の月が「十三夜(じゅうさんや)」です。この月は、満月の次に美しいといわれています。

■満月:月齢14(15日目の月)

15日目になると、満月を迎えます。満月は、月がもっとも丸い状態になることです。私たちは満月だけは、一晩中見られるんですよ。ご存知でしたか? 15日目の月なので、「十五夜(じゅうごや)」とも呼ばれます。

■十六夜:月齢15(16日目の月)

16日目の月を「十六夜(いざよい)」といいます。ここから、新月に向かって少しずつ欠けていきます。

■下弦の月:月齢22(23日目の月)

上弦の月が反転し、左側半分の月が「下弦の月」です。ほぼ夜中の12時前後にのぼります。

■二十六夜月:月齢25(26日目の月)

26日目の月が「二十六夜月」です。三日月と反対を向いていて、夜中の1時から3時の間に東の空に見られます。

■明けの三日月:月齢28.2(28、29日目の月)

新月の前ころに見られるのが「明けの三日月」です。明け方に輝いて見えることから、そう呼ばれています。


【「満月」「新月」の影響は?】

■「潮の満ち引き」

干潮や満潮などの潮の満ち引きは、月が引き起こす現象です。要因は、月の引力。海水は液体で、自由に動くことができますから、地球上で月に向いた面の海水は月の引力に引かれて少し持ち上げられ、満潮になるのです。

ところが、ちょうど月の反対側にあたる所でも満潮になります。これは、月の真下にあたる点と、地球の中心、月の真反対の点にはたらく月の引力を考えることで説明できます。月の引力は、真下の点でいちばん強く、地球の中心では中ぐらいに、反対の点ではいちばん弱くなりますので、地球上で見ると月の反対側でも海水が盛り上がって満潮になるのです。そして、月と直角な方向では海水が低くなり、干潮になるという理屈です。

■「出産」

「満月は出産が多い」とよく言われますが、科学的な根拠やメカニズムなどは明らかになっておらず、月と出産の関係性は不明です。ではなぜ、「満月は出産が多い」と言われているかというと、満月のときは大潮になるように引力が最大になります。これが人間の体にも影響があるのでは?という考えからです。

■「体調」

昔から月の満ち欠けは、体調にも少なからぬ影響を与えると言われてきました。先に説明した通り、潮の満ち引きは月の引力が引き起こすものです。人の体は60~70%が水分でできていますから、その影響を受けたとしても、不思議ではないかもしれません。特に女性の場合、月の満ち欠けの周期である「約29日半」は、月経周期やお肌のターンオーバーの約28日とほぼ同じです。「月経」という文字からもわかるように、月との関係が深いとも言われていますね。

新月から満月の間、月が少しずつ満ちていくにつれ、人間の体は吸収するはたらきが強くなり、体の中にさまざまなものを蓄えようとする作用が起こるという説もあります。また、満月のときには、栄養や水分を取り込む力が最も強くなるとも。 一方、新月の日には気分が落ち込み、ぼーっとしてしまう傾向にあると言われているそう。 もし、体調の変化を感じたら、それは月の満ち欠けが影響しているのかも。そうだとしたら、新月から満月への周期に、体調を整えるヒントが見つかるかもしれませんね。

■「願いごと」

満月、新月には、月のパワーが最大限になるといわれています。占星術においては、新月とは太陽と月が重なり、同じ星座となるとき。スタート地点であり、幸せの種を蒔いたり計画を立てるのに向くとされています。一方で満月は、太陽と月が真向かいの星座となるとき。満ちたもの、成就したものを収穫して感謝するときです。不要なものを手放すことにも向くとされちます。約2週間ごとにやってくる、新月と満月のサイクルを取り入れると、願望達成の確率が上がると言われていますよ。

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「恋しさは おなじ心に あらずとも 今宵の月を 君みざらめや」 (源信明 拾遺和歌集)

恋しく思う気持ちは同じではないかもしれませんが、今宵の月をあなたもどこかで見ているでしょうか)

和歌や小説、そして映画でも、月を効果的に使った名場面が数え切れない程あります。NHKの大河ドラマ『光る君へ』でも、柄本祐さん演じる藤原道長に「誰かが今、俺が見ている月を、一緒に見ていると願いながら、俺は月を見上げてきた」と語らせるなど、月を使った演出が光ります。満月と新月、月の満ち欠けの理論がわからなかった昔はなおさら、月を神秘的な存在と捉えていたのかもしれませんね。文豪・夏目漱石が「I love you」を「月がきれいですね」と訳したという逸話もあるほどで、日本人は月に格別な思い入れをもっていると言われています。10月17日の月は、2024年の中では地球から最も近い位置で満月(スーパームーン)になります。ひとりでしみじみ、あるいは誰かと和やかに、月を眺めてみませんか。

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参考資料: 『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /国立科学博物館「宇宙の質問箱」https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/moon/moon00.html /国立天文台「暦Wiki」https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B7EEA4CECBFEA4C1B7E7A4B1.html :
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