不安定な経済や将来への不安から、マンション購入や住み替えを検討する人も多いこのごろ。しかし、マンション選びを失敗し、後悔している方もいらっしゃるようです。

そこで宅地建物取引士で「一般社団法人 女性のための快適住まいづくり研究会」副代表の白石博美さんに、よくあるマンション購入後の失敗のうち、「マンションの立地」「マンションの共有部分」に続き、「マンションの専有部分」に関する失敗と、選ぶときのポイントを教えていただきました。

居住用マンション購入後にマンションの専有部分で後悔した例

専有部分1
モデルルームはきらびやかだけれど…

■1:部屋の狭さや梁の存在に苦労!

  • ・室内の小梁(こばり)が邪魔で手持ちの家具が入らなかった。
  • ・食器棚が置きたい場所にはスペースがあったが、分解できない食器棚だったので廊下が狭く部屋まで運べなかった。
  • ・廊下面積が多く、部屋面積が狭かった。
  • ・図面だけを見て新築物件を購入したが、完成後の室内を見たら、かなり大きい梁(はり)がでていて圧迫感を感じた。
  • ・新築マンションのモデルルームを見学したときは部屋が広く見え、きらびやかで夢見心地だったが、実際購入した部屋は思ったより狭く感じ、がっかりした。

■2:ウォークインクローゼットがあっても収納スペース不足

  • ・服がウォークインクローゼットにすべて入らなかった。
  • ・大きなウォークインクローゼットが魅力で購入したが、洗面室にリネン庫がなく、バスタオルの収納場所に困った。

■3:隅々まで見なかったがゆえの使いにくさや粗が目立つ

  • ・中古物件の内見の際、住人の家具が置かれていたため、隅々まで見ることができなかった。購入後、部屋の床の角に若干の隙間があるなど、仕上げが雑な部分があったのに気付いた。
  • ・部屋と眺望と価格を気に入って購入したが、給湯器やTVやネットの端子の位置、電気スイッチの位置など細かい部分をよく見ていなかったので、すぐに取り換えが必要だったり、家具のレイアウトが限られてしまったりと後悔している。

■5:中古物件の設備がすぐに故障した

中古物件だったため、住み始めてから、設備がすぐ故障するなど、不具合が連発した。

マンションの専有部分のチェックポイント6つ

専有部分2
専有部分はどこを見るべき?

これらの失敗を踏まえると、マンション選びの際に、専有部分については何を注意すれば良いのでしょうか? 白石さんに教えていただきました。

■1:部屋の広さや収納について

「手持ちの家具のサイズ測るのはもちろんですが、実際に配置できるかどうか、動線までしっかり見極めてレイアウトしてみること。高さのある家具を設置する際は、天井高だけでなく梁下の高さも確認しましょう。

キッチンやお風呂などの水廻りも、モデルルームより小さいことが多々あるので、事前にサイズ感も確認しておくこと。バスタブの大きさや、吹き抜けなどの天井高は、光熱費にも影響するので注意が必要です。

また収納は十分かどうか、自身の荷物の量を把握してから検討を。LDKだけでなく、玄関、洗面室の各部屋の収納も確認しましょう。収納は小型収納がいろいろな場所にある方が使いやすいですよ」

新築マンションの注意点

「新築の図面だけでマンションを購入する場合は、デットスペースになる廊下面積や梁(はり)や柱が部屋にあるかどうかは見落としがちです。専有面積(平米数)だけではなく、間取り(部屋の形)を見ることが大切です」

■2:部屋の向きについて

専有部分3
部屋の向きは要注意

「部屋の向きは南だからといって、日当たりが良いわけではないので、事前に自分の目で見て確認しておく必要があります。タワーマンションは眺望が良い代わりに、日照時間が長く、暑すぎるという声もあります。

方角にこだわりが強い場合は、朝昼晩と時間帯を変えて見学をするのをおすすめします。完成物件を選ぶと、すでに入居している人の実際の声も聞けるため安心です」

■3:設備について

「中古物件の場合、給湯器がすぐに交換が必要だったり、浴室暖房乾燥機を取り付けたり、ドアフォンがカメラ付きではなく後から変更する必要があったりと、追加出費がかかることがあるので、しっかりと確認する必要あります。例えば先に不具合が確認できていたら、設備工事負担を売主に交渉できる場合もあります」

■4:修繕・リフォームについて

「中古マンションなら『旧耐震基準(※)』の物件はなるべく選ばないこと。築年数とリフォーム歴を確認し、購入前に、どこまで、いつまで売主側が保証してくれるのかをしっかり確認しておきましょう。また自分が負担することになった場合、現金の準備ができるのかを事前に計算しておくといいですね」

※旧耐震基準とは:1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた建築物の地震に耐えることのできる構造の基準。以後は新耐震基準となった。

■5:個別の希望は事前に明確に

「楽器を演奏する、ピアノを搬入したいなど個別の希望があるなら、防音対策はどうなっているのか、管理規約で演奏時間の制限などはあるのかなど、物件ごとに決まりがあるので、物件探しの段階からしっかり条件に合うものに絞って探しましょう」

■6:建て替え可能かどうか

「中古を購入する場合、建て替え可能かどうかの確認もしておきましょう。新築当初と条例が変わっていて、同じ土地に同規模のマンションを建てられない場合もあり、建て替え後に住むことができない、あるいは負担金が大きくなる可能性もあるためです」


専有部分は、最も長く過ごす場所。隅々まで確認し、マンション購入後、満足できるようにしたいですね。

白石 博美さん
「一般社団法人 女性のための快適住まいづくり研究会」副代表
(しらいし・ひろみ)宅地建物取引士、ライフスタイルコーディネーターとして、代表の小島ひろ美の研究会設立の理念にそって活動。1991年に設立した「女性のための快適住まいづくり研究会」の「女性のためのかしこいマンション購入術講座」で講師を務める傍ら、20歳代~70歳代の幅広い年代の女性たちのマンション購入に関する相談にのり、会員に寄り添ったライフスタイル・プランニングの活動などを行う。ホームページ

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WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子、原田恵子(イクシアネクスト)
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