米国時間の11月7日(土)、米国大統領選で、大統領にジョー・バイデン氏、そして副大統領にカマラ・ハリス氏が当確。その瞬間、ニューヨークの街は歓喜の声で湧き上がり、拍手があふれ、車もクラクションを鳴り響かせました。その夜に行われた勝利宣言で、次期大統領となるバイデン氏に先駆けてスピーチをしたのが次期副大統領カマラ・ハリス氏でした。
カマラ・ハリス氏が、女性初の米国副大統領に就任!「勝利宣言」が世界中で話題
女性初、黒人初、そしてアジア系初の副大統領として就任することが確実となったハリス氏。勝利宣言に登場した彼女は、アイボリーホワイトのパンツスーツに、同じくアイボリーホワイトで光沢の美しいシルクのボウタイブラウスという、全身白の装いで登場しました。
副大統領候補指名時、遊説、副大統領候補 討論会など、今まで公的な場に登場する際はダークなベーシックカラーの装いで、さらに遊説中はコンバースのスニーカーを愛用してアクティブに活動していましたが、この勝利宣言の夜はヌードカラーのパンプスでエレガントな足元が演出されていました。
「全身白の装い」へ込めた思いとは?
この全身白の装いには大きな意味があります。20世紀初頭、サフラジェット(女性参政権者達)が投票権を求めて戦っている間、真っ白な服を着ていたことから、彼女たちへのオマージュ(敬意)を示しているものといわれています。私たちの記憶に新しい、2016年にヒラリー・クリントン氏が最初の女性大統領候補になったときも、白いパンツスーツ姿でした。
このハリス氏が選んだ白は、アイボリーホワイト。彼女の暖色系褐色の肌と明るい表情をより一層引き立て、さらに知性と品性を際立たせるのは他のどの白でもなく、アイボリーホワイトなのです。
「勝利宣言」時のスタイルを紐解く3つのキーワード
それでは、彼女が全身白の装いで一層メッセージ力を強化するために加えた3つのキーワードであり、ステートメントともいえる「ボウタイブラウス」「パール」、そして「スーツのデザイナー選び」について解説していきましょう。
■1:女性のユニフォームともされる「ボウタイブラウス」
プロフェッショナルな女性のユニフォームのひとつとされるのがボウタイブラウス。ネクタイの女性バージョンともいわれています。長い間、英国初の女性首相マーガレット・サッチャー氏のパワークローズとして知られてきました。そしてこれからは、3つの初をもった次期米国副大統領カマラ・ハリス氏が勝利宣言の場で着たブラウスとしても知られていくことになるのです。
■2:ハリス氏を象徴する「パールのジュエリー」
真珠は、ファーストレディーから政治に関わる多くの女性において、長い間彼女たちのファッションの定番です。
大学時代から真珠を身につけているというハリス氏、今回の大統領選でもさまざまなパールのジュエリーを身につけている様子がうかがえました。実はそれには理由があります。彼女はハワード大学時代に、初の黒人女性のための社交クラブとして設立された「アルファ・カッパ・アルファ(AKA)」のメンバーであり、そのクラブの象徴が真珠なのです。
この勝利宣言の日、ハリス氏が身につけていたのは、ヴィンテージ風のパールイヤリング。ボウタイブラウス着用だったため、彼女がよくつけている胸元のパール・ネックレスはなかったものの、アイボリーホワイトのシルクブラウスの光沢が、パールを連想させると思ったのは私だけではないはずです。
■3:知性と品格の体現を叶える「デザイナー選び」
勝利宣言の日、ハリス氏が身に纏うことを選んだアイボリー・ホワイトのスーツは、NYに拠点を置くデザイナー「CAROLINA HERRERA(キャロリーナ・ヘレラ)」のもの。ジャッキー・ケネディ・オナシス、ローラ・ブッシュ、ミシェル・オバマ、メラニア・トランプなど含む、多くのファーストレディーもキャロリーナ・ヘレラの服を着ていました。
ハリス氏が着用したパンツスーツは、全体的にストレートなライン。曲線によるフェミニンさの表現はないものの、ブランドらしいエレガントさと上質な質感と仕立てが、彼女が登場した瞬間のはっと息を飲むような輝きと存在感を際立たせていました。
新たな歴史をつくった女性、カマラ・ハリス氏のドレス効果とは?
ハリス氏は女性初、黒人初、そしてアジア系初の副大統領になることを確実にし、歴史を変えました。ずっと破ることのできなかったガラスの天井を破ったのです。その瞬間を迎えるには、嬉しさと同時に、相当な覚悟を要したことでしょう。アメリカだけでなく世界が注目をしていたあの夜の、あのようなときこそ、心理学でいう「ドレス効果」が大きな力を発揮し、装いが彼女に次期副大統領としての自覚をさせて勇気を与え、大きな心の支えとなるのです。
そして、そのような場での「装う」という行為は、単なるファッションや流行ではありません。スピーチで語られる言葉とともに、アメリカの代表となる覚悟と、国民そして世界の人への姿勢を示すことであり、後世に語り継がれる歴史となるわけです。
ビッグ・スマイルとともに彼女が纏った全身白の装いに、先人へのオマージュと彼女の意思が見えました。そして彼女のスピーチのなかで最も刺さる一文は、未来への明るい希望を多くの人に感じさせたことでしょう。
「But while I may be the first woman in this office, I won’t be the last. Because every little girl watching tonight sees that this is a country of possibilities.」(私が最初の女性副大統領になるかもしれませんが、最後ではありません。なぜならすべての少女たちが今夜の光景を見て、この国は可能性の国だということを見ているからです)」
女性初、黒人初、そしてアジア系初次期米国副大統領、カマラ・ハリス氏の今後のご活躍が楽しみでなりません。
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- TEXT :
- 日野江都子さん 国際イメージコンサルタント
公式サイト:Real Cosmopolitan Inc.
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- PHOTO :
- Getty Images
- WRITING :
- 日野江都子
- EDIT :
- 石原あや乃