すべての働く女性たちに一歩踏み出す勇気を。覚悟を決めたら修羅場に飛び込んで!

女性活躍推進が叫ばれる時代にあっても、日本の女性管理職の割合は先進7カ国で最下位となるわずか12%(2018年国際労働機関発表)。ジェンダー平等発展途上であるなか、日本を代表する食品メーカー、キユーピーの女性初・最年少の上席執行役員に就任した藤原かおりさん。昨日公開した【キャリア編 Part1】では、マーケティングの道を極めていた彼女が経営者を目指すようになった背景や、現職の醍醐味を臆さずに語っていただきました。 

藤原かおりさん
キユーピー株式会社 上席執行役員 新規市場開発担当
(ふじわら かおり)1974年埼玉県生まれ。1997年慶應義塾大学法学部を卒業後、旭硝子に入社。新商材のビジネスデベロップメント業務に従事。2001年にマッキャンエリクソンに転職し、広告のストラテジックプランナーとしてBtoCマーケティングに携わる。その後、電通の契約社員を経て2007年にダノンウォーターズオブジャパンへ入社し、「ボルヴィック」のブランドマネージャー職に従事。2011年カルビーに転職。2012年から「フルグラ」のマーケティングに従事し、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」ベストマーケッター賞を受賞。2017年よりカルビー執行役員 フルグラ事業本部長を務める。2020年3月より現職。

キャリアインタビュー後編となる本記事では、食品ビジネスの未来を見据えようとする、藤原さんの女性ならではの視点がより明らかに見えてきます。

キユーピー上席執行役員・藤原かおりさんへ10の質問

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今年9月、新規事業「フレッシュストックᵀᴹ」のオンライン記者発表会を成功へ導いた

──Q6:コロナ禍の影響による仕事の変化とは?

4月の緊急事態宣言発令後、完全在宅勤務に切り替わりました。キユーピー入社1か月後に立ちはだかった在宅勤務の壁にどうしたらいいのかわからなくなり、信頼する方にビジネスコーチングを受けました。

その方は、以前私がマッキャンエリクソンに勤務していた当時、人事・広報・総務を統括する本部長として女性初・最年少の執行役員でいらした木村純子さんという女性。木村さんはエグゼクティブコーチとしてのちに株式会社ピュア・エッジを設立し、ファシリテーション型リーダーシップ開発セミナーを運営するなど、組織リーダーの育成に注力されています。

20代後半から定期的に木村さんのコーチングを受けているのですが、コロナ禍でも彼女のアドバイスに背中を押され、オンラインで積極的にほかの役員たちから話を聞いたり、自分のチームとも円滑にコミュニケーションを図ったりすることができました。

キユーピーでは働き方改革を推進中。今はテレワークと出勤を併用していますが、オンラインでは対面以上に「人の話を聞くスキル」が大事。チーム一人ひとりのジョブを明確に、タスクごとのスケジュール管理をしっかりすることも重要だと再認識しました。

食を通じて、世の中の「共感」を生み出すことがミッション

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「フレッシュストックᵀᴹ」事業で販売中の惣菜の一例。作りたて感をキープしながらも30日冷蔵保存可能

──Q7:職場において、女性の働く環境は整っていますか?

従業員の約半数を女性が占めているとはいえ、自分以外のキユーピー執行役員は全員男性です。女性管理職比率が20%を超える(2020年4月現在)カルビーと比べると、これからのところではあるものの、女性スタッフが生き生きと楽しそうに仕事をしている姿が印象的。ただ、もう少し女性管理職が増えてほしいですね。

マーケティングに強い人間を探しているなかで自分が執行役員に選ばれたのは、女性の活躍推進に取り組むキユーピーグループの姿勢の表れ。私自身が成果を出すことが、若い女性社員たちにとっても励みに繋がると信じています。

新規事業のマーケティング戦略については、いかにして世の「共感」を生んでいけるかを模索中です。日本の女性たちの間には、出来合いのものを買ってはいけない、自分でイチから手作りしなくてはいけないといった風潮がいまだにありますよね。

女性の活躍躍進が進む欧米では、デリカテッセンを購入するのがごく日常的だというのに、日本の社会は慣習にとらわれたまま。即食の食品や簡便調味料を誰も後ろめたくなく買える、そんな世の中をつくりたいんです。

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数多くのメディアの取材を受け、「フルグラ」の価値を自ら伝えていたカルビーでの藤原さん

──Q8:女性が活躍する秘訣、キャリアアップに必要な能力とは?

やるのかやらないのか、どこまでやるのか。まず、覚悟を決めなければいけないと思います。プライベートが大事、これ以上仕事に時間を割かれたくないという生き方も、もちろん尊重します。自分の中で「仕事のウェイトをこれだけ大きくする」という覚悟を決めたら、私は頑張ると自己主張すべきです。修羅場を経験せねば得られないものがあるからこそ、自ら修羅場に飛び込んでいき、成功にとことん執着する。

修羅場へ飛び込む「勇気」、それからビジネススキルという「武器」は必須です。男性にも負けないくらい勉強して、ビジネススキルを習得すべき。

壁にぶち当たったとき、私の場合は、前述の木村純子さんにコーチングを受けることがしばしば。話すことで考えが整理されるコーチングの効果は絶大です。ただ多くのケースは、いったん引いて問題を眺めると、壁だと思い込んでいることがほとんど。「俯瞰して事態を客観的に見つめ直す」という作業を通して、最近は自分でも解決できるようになってきました。

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前職カルビー時代、プロ経営者として名高い松本元会長(上段左から3番目)を囲んでの一枚

弱点を個性に変える!コーチングを積極的に活用

──Q9:影響を受けた人物とは?

外資系広告代理店マッキャンエリクソン時代の先輩であり人生の師、木村純子さん。自己啓発のために個人的にコーチングを学び始めたことがきっかけで、マッキャンエリクソンで戦略プランニングの仕事に従事する傍ら、同社に社員教育部門を立ち上げた女性リーダーでした。

私が旭硝子からマッキャンエリクソンへ転職した当時、美しい女性リーダーが活躍する場を目の当たりにし、「ここは欧米?」と衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。

前述のとおり、木村さんは現在、組織開発を支援する会社ピュア・エッジを主宰しながら、エグゼクティブコーチとして活動中ですが、コーチングスクールの株式会社アート・オブ・コーチングも設立。その会社が一般公開しているグループ研修「アート・オブ・コーチング」講座に、私も参加したことがあります。

それは自分の内面と向き合い、自分の弱さがどこにあるのか意識しながら、その弱点を個性として認めてあげつつ、対人能力を磨いていくというもの。そのノウハウによって、対人関係のストレスが解消されました。

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中学では軟式テニスで県大会ベスト8まで出場。写真は高校時代、インターハイ出場を目指していた頃(右から2番目が藤原さん)。「攻め」の仕事ぶりの原点は青春時代にあり。

──Q10:原動力となる言葉は?

為せば成る、為さねば成らぬ何事も」と、常々思っています。中学・高校時代は軟式テニスに没頭していて、高校ではインターハイを目指していました。スポコン魂が自分の根っこにあるんです。「できない」と部下に返答されると、きまってこの故事を返します(笑)。チームマネジメントに携わるようになってから特に、仕事上でこの言葉を意識する機会が増えました。


以上、キユーピー上席執行役員 新規市場開発担当の藤原かおりさんに、キャリアと仕事観についてたっぷり語っていただきました。やわらかな人柄とぶれない芯の強さが同居する藤原さん。飾らずおごらず、実直で自然体の女性リーダーの登場に、日本女性たちのポジティブな未来を想像せずにはいられません。

明日公開の【ライフスタイル編】では、アイデアを量産する「手帳術」やワークライフバランスの取り方など、ヒットメーカー藤原さんの知られざる素顔に迫ります。どうぞお楽しみに! 

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この記事の執筆者
1974年東京生まれ。「MISS」「家庭画報」「VOGUE NIPPON」「Harper’s BAZAAR日本版」編集部勤務を経て、2010年に渡独。得意ジャンルはファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、犬、ラグジュアリー全般。現在はドイツ・ケルンを拠点に、モード誌や時計&ジュエリー専門誌、Web、広告などで活動中。
EDIT :
谷 花生