またまたしばらくご無沙汰してしまいました、アンドリュー橋本です。

このところ、特別編として「杉本博司さんの新アートスペース」「北斎とジャポニスム展」のレポートをしていて、”英国母国日記”の更新が滞ってしまっていました。申し訳ありません。許してください、indeedであります。

さて、今回は英国に行ったら必ず訪れたい、現代アートの美術館、8選を前後編でお届けします。

世界の新進アーティストが実験的作品を発表する街、ロンドン

今、ロンドンは世界一現代アートに関する美術館、画廊の充実した都市となっています。次から次へと新進アーティストの刺激的作品が登場し、実験的作品に触れることができる街。小さなギャラリーや、旅行者でも訪れることのできる画廊まで含めると、ひたすら現代アート三昧を繰り返しても、滞在期間中に見終えることができないくらい・・・。質、量ともに、世界の現代アートの最先端と最高峰が、この街に集結しているのです。

街角にいきなりこんなオブジェが! これもロンドンの楽しみ。現代アートの美術館として人気のサーチ・ギャラリーで2016年に開催されたローリング・ストーンズのエキジビションにあわせてギャラリーの前に設置された。(トップ画面も、2016年にサーチ・ギャラリーで開催された、ローリング・ストーンズ展のポスター)
公園にだっていきなりこんなものが! サーペンタイン・ギャラリーの夏の恒例、夏季限定パビリオン。これは2015年のセルガスカーノの作品。どこでもかしこでも現代アート、現代建築の楽しさに満ちあふれているのがロンドン。

現代アートというと、“難解”とか”小難しい“とか”ちんぷんかんぷん”、という人もいるかも知れませんが、ロンドンで体験できる現代アートは、どれもとっても楽しくて、エンタメ要素満載のものが多々!

動きのあるアートやサウンド付アート、驚くほどの巨大作品、自らが参加することで自分自身もアート作品の一部になるような参加型インスタレーション・・・。その美術的意義など考える前に、誰もが気軽に楽しむことのできる作品に必ず出合えるでしょう。

おまけにロンドンの多くの美術館がそうであるように、企画展以外は入館料無料というところがほとんど。こりゃあ、現代アートを満喫することを最大目的にロンドン観光するしかない!と、アンドリューは強くお勧めする次第です。これまたindeed!

エンタメ的要素満載!ロンドンのおすすめ美術館、これが神7

では、どんな美術館に行くのがいいのか!? 私、アンドリューがお勧めするロンドンの現代アートが楽しめる美術館、BEST8をご紹介します。

1:Saatchi Gallery(サーチ・ギャラリー)

かつて軍の兵舎として使われていたというサーチ・ギャラリーの建造物。伝統的建造物の中でみる最先端の現代アート。そのギャップが実にブリティッシュ!

現代アート=サイコーのエンターテインメント、と考えると、このサーチ・ギャラリーほど楽しめる現代アートの美術館はないかもしれません。常に刺激的なテーマで企画展を開き、いつ行っても驚きがあり、素直に楽しめます。以前ご紹介した、セルフィー写真ばかりで構成された展覧会など、アートに関心がなかった人でも自然と引き込まれていくはずです。

サーチ・ギャラリーは、サーチさんという世界的広告代理店の創業者の個人コレクションを元に、1980年代にスタート。2008年に現在の地に移転。アジアをはじめ世界中の若手アーティストの作品も多く、作家達のプロフィール解説のボードなども充実していて、現代アートの最先端を知ることができます。

サーチ・ギャラリーで展示された、キューバ生まれのアーティストJorge Mayetの作品、”Entre Dos Aguas"(2008年)。紙やファブリックでつくられているとは思えない不思議な作品。

また、ミュージアムショップの充実ぶりも注目。私アンドリューは「ロンドン土産はサーチで!」と、いつもここでお土産物を探しています。美術館の周りは、高級食材店やアートブックのお店、日本では見かけない最新コスメのお店なども充実しているので、ショッピングの合間にちょっと寄る、なんていうのもおすすめです。
Saatchi Gallery

2:Design Museum(デザイン・ミュージアム)

デザイン・ミュージアムのエントランス。ここも建物が超クール!

続いては、2016年11月に移転、リニューアル・オープンしたデザイン・ミュージアム。最新アートスポットとして、注目の美術館です。現代アートの美術館というわけではありませんが、インダストリアルデザインの歴史的名品の個性的展示は、現代アートのインスタレーションといってもいいほどクールでかっこいい! 

ロンドンの地下鉄の標識、IKEAのショッピングバッグ、アディダスのスタンスミス。ほかにもリーバイス501やオリベッティのタイプライター、ギブソン・レスポールなど、デザイン力がいかに人の心を刺激し、豊かにしてきたかを実感できる展示は一興!

家電史上で大ヒットした電卓やオーディオ製品を並べた展示では、懐かしさもあってついじっくり見てしまいます。ソニーのウォークマンに、ブラウンの目覚まし時計、シャープの電卓等々・・・。

デザイン史という文脈で腕時計をとらえるとこうなる・・・。ラグジュアリーアイテムとしての腕時計とはまた違った発見がある。

腕時計のデザインでは、カルティエのタンクとカシオのGショックが一緒に展示されていたり・・・。日頃はあまり意識することのない道路標識すら、そこにデザインの力を見いだすことができて、新鮮な発見があります。
Design Museum

3:Serpentine Galleries(サーペンタイン・ギャラリー)

ロンドンの中心に広がる広大な公園、ハイド・パークとケンジントン・ガーデンに、サーペンタイン・レイクをはさんで、北と南のふたつの展示室から構成されているのが、サーペンタイン・ギャラリー。どちらの展示室も現代アートが中心で、意欲的なインスタレーション作品、参加型のアート作品の展示もを少なくありません。

サーペンタイン・サックラー・ギャラリーに増築された、ザハ・ハディド設計のレストラン。外から見ても、中から見てもインパクト大!
ザハ・ハディド設計のレストランの内観

北側の展示室は、「サーペンタイン・サックラー・ギャラリー」と呼ばれ、国立競技場の設計で話題を集めた、故ザハ・ハディド氏設計の超かっこいいレストランがあることで知られます。このレストラン、外から見てもかっこいいし、中がまた実に未来的で、えもいわれぬ感覚に陥ります。やっぱりザハってすごい! ザハの国立競技場、見たかった・・・と思ったりして・・・。

南側の展示室では、毎年、夏季限定パビリオンが仮設され、世界中からの観光客で賑わいます。この仮設パビリオンの設計は、そのときもっとも旬の(あるいは話題性のある)建築家が起用されます。過去には、ザハ・ハディドはもちろん、オスカー・ニーマイヤー、フランク・ゲイリー、ピーター・ズントーといった建築界の巨匠が担当。日本人建築家では伊東豊雄、SANAA(妹島和世、西沢立衛)、藤本壮介さんも設計にあたりました。

2016年の夏季限定パビリオンの中から、サーペンタイン・ギャラリーの正面玄関を臨む。デンマーク生まれの建築家、ビャルケ・インゲルスの作品。

緑豊かな公園の中にあるふたつの展示室は、小さいながら、個性的な展示でいつも人気。こちらは公園散策とセットで訪れたい現代アートの美術館です。
Serpentine Gallery

4:Whitechapel Gallery(ホワイトチャペル・ギャラリー)

4番目に紹介するホワイトチャペル・ギャラリーは、100年以上の歴史を持ち、ロンドンの現代アートシーンを牽引してきた名美術館。中心地からは少し東に外れているため、ロンドン・ビギナーにはなじみの薄い場所ですが、若者文化の発信地として注目されるショーディッジ地区に近いので、是非是非足を運んでみてください。地下鉄の駅からも近いので・・・。

ホワイトチャペル・ギャラリーの展示室内。規模の大きな作品も多く、毎回楽しめる

このギャラリー、名門とはいえ入口がこぢんまりとしていて、美術館というよりアートスクールのエントランスのようで、見逃しがち。でも、複数階に分かれた展示スペースは充実していて、常時複数のテーマ展示が行われています。映像作品の展示があったり、興味が尽きることがないはずです。
Whitechapel Gallery

5:White Cube(ホワイトキューブ)

その名前の通り、まさに「白い大きな箱(立方体)」のようなアートスペース。ロンドン市内に2か所あり、どちらもその、”だだっ広い”空間に、現代アートの巨大作品(写真や、絵画や、うーーーん、写真でも絵画でもないような不思議な作品や・・・)の展示が中心。

ロンドンの現代アートはエンターテインメントであると話してきましたが、ここは比較的「難易度の高い作品」が多めかも知れません。ただ、作品の展示手法が圧巻なので、それを感じるためだけに訪れてもソンはないはず。

こちらはテームズ川の南、Bermondseyにあるギャラリー。建物自体もカッコよくて刺激的。

2か所にあるWhite Cubeのうち、テームズ川南側にあるWhite Cube Bermondseyは、特に展示室の巨大さに驚かされます。とっても洗練された空間で、ロンドンのアートシーンの今を感じることができるはず。近くには、ファッションの美術館として世界的に知られた「Fashion and Textile Museum」もあり、一緒に訪れたいもの。

フォートナム&メーソンやダンヒルといった名店ひしめくセント・ジェームス地区にある、もうひとつのホワイト・キューブ、White Cube Mason's Yard。こちらは市内観光の合間に気軽に立ち寄れるのが魅力。

一方、もうひとつのWhite Cube Mason's Yardは、展示室が1階と地階のふたつのみ。こちらも展示室を仕切ることなく”大きな白い箱”の中で作品を見せてくれるところは、Bermondseyと同じ。所在地が「フォートナム&メイソン」や、王室御用達のシャツメーカー「ターンブル&アッサー」、同じく王室御用達の帽子店「ジェームス・ロック」、ワイン商「ベリー・ブラザーズ&ラッド」(やはり王室御用達)、世界最古の理髪店「トゥルフィット&ヒル」(これまた王室御用達)等の老舗ひしめくセント・ジェームズ地区のど真ん中。

だから、買い物に疲れたときの気分転換に、ディナーの前のちょっと時間つぶしに・・・と気軽に鑑賞に立ち寄ってみてください。入口がちょっとIT企業のオフィスの受付のようで緊張するけれど、そこは勇気を持って”Hello"と声をかけて!
White Cube

6:National Portrait Gallery(ナショナル・ポートレート・ギャラリー)

6番目にご紹介するナショナル・ポートレート・ギャアリーは、ロンドンのど真ん中、トラファルガー広場の真ん前にあるナショナル・ギャラリーの別館で、肖像画専門の美術館。なので現代アートの美術館というわけではありません。

常設展のほとんどは、イギリス史上に登場する王族や政治家などの肖像画、彫像。エリザベス女王1世やヘンリー8世といった16世紀の王族からチャーチルなど20世紀の政治家、あるいは文化人まで、イギリスの歴史を肖像画だけを通してみられるという、実に興味深い展示。

ナショナル・ポートレート・ギャラリーの常設展示室。この美術館の特別展が面白い! ポートレートにこだわった現代アートの展示が楽しめる。写真や絵画で、最先端の肖像画がどんなものかが理解できる。

ただ、アンドリュー的にはこの常設展示ではなく、ここで開催される企画展が超超おすすめ。(常設展は無料だけれど、企画展はたいてい有料) ”肖像画縛り”でみる現代アートは、写真あり、絵画ありと手法もさまざまでなかなかに新鮮。有名人のまったく違った面をえぐり出した肖像画もあれば、名もなき老人の肖像画が語るインパクトに驚いてみたり。ポートレート(肖像)のもつ不思議なエナジーに心とらわれると思います。

毎年夏に開催されるPortraits Award showも必見。若手のアーティストも含め、さまざまな手法、アプローチによる肖像画からは、美的感性と知的好奇心をびんびんと刺激されるでしょう。キュレーターによるギャラリートークも時々開催され、肖像画の最新トレンドを知ることができます。
National Portrait Gallery

7:Royal Academy of Arts(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ)

7番目は、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツのギャラリーです。

ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツのピカデリー・ストリート側のエントランス。かつては貴族の館だったという。

ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツは王立美術学校のことで、通称RAと略されます。ロンドンの中心地、ピカデリー・ストリートとバーリントン・ガーデンズという通りにはさまれたところにある、かつての貴族の大邸宅を使用しています。

ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの人気の展覧会、Summer Exibition。出展作品に値段が付けられており、”買える美術展”でもある。毎年6月から7月にかけて開催。

ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツはふたつの展示空間(Piccadilly siteとBurlington Gardens site)からなっており、同じ建物にみえて入口はまったく別々。中でもつながっていないので、知らない人はちょっと迷ってしまうかも。

このギャラリーでは現代アートの巨匠たちの回顧展がなんといっても注目です。私アンドリューは、2016年の夏に開催された、デイヴィッド・ホックニー展に行きましたが前売り券を買うのも大変、入れ替え制にもかかわらず館内も満員という、大大大大盛況。でも一度にあんなにたくさんのホックニー作品をみられて大感激でした。今は12月10日まで、ジャスパー・ジョーンズ展を開催中で、こちらもとっても面白そう。これからも多くの現代アートの巨匠たちの回顧展が開催される可能性が高いので、目が離せません。

また、以前にお伝えした、毎年夏に開催される、”出展作品が買える展覧会”=Summer Exibitionも、超超recommendです!
Royal Academy of Arts

 

以上、極私的「ロンドンで現代アートを楽しむための名美術館・神7」でした。

実はこれ以外に8番目として、アンドリュー的に別格の存在として、Tate Modern(テート・モダン)があります。もし、ロンドン滞在中にひとつだけ美術館を訪れたいという人には、アンドリューは迷わずテート・モダンをお勧めいたします。

では、何故テート・モダンがすごいのか? どこが別格なのか? そのテート・モダンの魅力については長くなりますので、後編にてお伝えいたします。

ではそれまで、See You Later, Alligator!

この記事の執筆者
自称大阪生まれ、イギリス育ち(2週間)。広島大学卒(たぶん本当)。元『和樂』公式キャラクター。好きなもの:二上山、北葛城郡、入江泰吉、Soho Squre、Kilkenney、Hay-on-Wye、Mackintosh、雨の日、Precious、Don’t think twice, it’s all right.