マスク生活やリモートワークなど、コロナ禍によってもたらされたライフスタイルの変化によって、心身のバランスの崩れを実感している人が多いこのご時世。

最新『Precious』7月号では、企画「ゆるく、心地よく――いつくしみのボディメンテナンス」を展開中。マッサージや筋トレをストイックに頑張らなくても、姿勢・呼吸・適度な運動など、ゆるやかな5つのいつくしみケアで、心身のバランスを整えて。

なにかとストレスフルな新しい日常、今日は、ココロとカラダにゆっくりと「おつかれさま」ケアをしてみませんか?

お話をうかがったのは…

武田 淳也先生
「整形外科 スポーツ・栄養クリニックⓇ」理事長
(たけだ じゅんや)アメリカへのスポーツ医学留学時に、医療現場で活用されているピラティスと出合い、日本で初めて医療としてピラティスを取り入れたクリニックを開業。「姿勢とカラダの使い方不全」が絡む疾患に、動きからアプローチ。ピラティスに関する著書多数。

自分をいつくしむことで、ストレスに負けない、しなやかに生きる力を手に入れることが可能に

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トップス¥19,800(ミュラー オブ ヨシオクボ<ミュラー オブ ヨシオクボ>)、デニム¥34,100(三喜商事<マレーラ>)

新型コロナウイルス感染症拡大によってもたらされたライフスタイルの変化。これが気づかぬうちに慢性的なストレスとなり、心身のバランスを崩す原因となっています。

「リモートワークによる姿勢の乱れやマスク着用による酸素不足、そして長引く自粛生活による運動不足などの変化が自律神経を乱し、血流の停滞や代謝の低下などを引き起こす原因に」(武田先生)

もともとストレスフルで過緊張状態の生活を送っていた現代人は、心身の変化に鈍感になりがちなので要注意。もっと体の声に耳を傾け、以前より疲れやすい、寝つきが悪い…など少しでも感じたら、今すぐに自分を「いつくしむ」メンテナンスを。

「なにもストイックにトレーニングやマッサージを行う必要はありません。姿勢や呼吸に意識を向ける、適度に体を動かすなど、日常生活をほんの少し変えることこそが、体の土台を整え、メンテナンスにつながります。

精油の香りを取り入れる、お気に入りのボディクリームで体を優しくなでる、などの自分が心地よいと感じるケアも効果的」(武田先生)

ゆるく心地よいいつくしみケアで、しなやかに生きる力を高めて、このニューノーマル時代をより快適に過ごしたいものです。

【体をGOOD SPIRALへ】
ストレスによって体が過緊張になると、交感神経が常に優位な状態が続き、自律神経のバランスが乱れてしまいます。そこで、正しい姿勢や深い呼吸、適度な運動など、少し意識を変えて、自分を「いつくしむ」だけで心身がリラックス。

副交感神経が優位になり、血流や代謝もアップ。その結果、体も引き締まりやすくなる…という、なんともうれしいグッドスパイラルに転換することができるんです。

■1:正しい姿勢を意識する

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トップス¥12,100・パンツ¥14,300(インターテック<スリア>)

リモートワークによって、同じ姿勢でデスクに向かう時間が増えていませんか? 肩が内に入った前かがみの姿勢を続けていると、筋肉がそのように固まって定着します。その結果、立ち姿勢も前傾(いわゆる猫背)や、逆に背筋を伸ばそうとして反り腰になってしまう人が増加中。

「正しい姿勢とは、骨や関節、内臓に負担がかからない状態のこと。つまり猫背や反り腰などの不良姿勢は、首や肩、腰に負担をかけ、肩こりや腰痛、ときには圧迫による内臓機能の低下を引き起こすことも。

すると自律神経の乱れ、免疫力の低下にもつながるばかりか、見た目の印象も悪くなります。正しい姿勢こそがメンテナンスの基本。スッと背筋を伸ばして正しい姿勢を保つようにすれば、不思議と気分も上向きになり、自律神経も整います」(武田先生)

●ストレートネックとストレートバックが急増中

本来、しなやかなS字カーブを描く首の骨や背骨がまっすぐになってしまう状態を、それぞれストレートネック、ストレートバックと呼びます。

特にストレートネックはスマホ首とも呼ばれ、前傾姿勢が原因のひとつに。コロナ禍を機にこれらの症状が増えています。

●猫背は集中力が低下する

猫背だと胸部が圧迫されて、呼吸が浅くなります。すると、血液循環が悪化して脳に十分な酸素が行き渡らなくなります。酸素不足が集中力低下の原因に。一説によると、仕事のパフォーマンスが30%も落ちるとか。

脳の酸素不足はあくびの原因にもなるので、あくびが止まらないときは、姿勢の見直しを。

●20分間同じ姿勢をとり続けると、体が固定し始める

同じ姿勢をとり続けていると、20分ほどで筋肉が固まり始め、45分で固定してしまうといわれています。

体が緊張したまま固定されてしまうと、突っ張り感や肩こり、腰痛などが引き起こされるので要注意。PC作業やスマホ操作に夢中になりすぎるのは危険です。

●姿勢を正せば身長が伸びる!?

姿勢が悪いと、首や背骨、腰が丸まったり、骨盤や脚の骨が歪んでしまい、本来よりも体が縮まってしまいます。正しい姿勢を保ち、骨の位置を正しいポジションに戻すことで、本来の身長に戻すことができます。

正しい姿勢は見た目印象をアップする効果も!

●1日6時間以上座っている人は、3時間未満しか座らない人と比べ、死亡率が37%アップする

座っていると「第二の心臓」といわれるふくらはぎの筋肉が使われなくなり、血液を心臓に押し戻すポンプの働きが停止します。すると、全身に酸素や栄養を送る血流が停滞し、あらゆる病気を引き起こす血栓の原因に。

「30分に1度は席を立つ習慣を」と武田先生。

【正しい姿勢とは?】

耳の後ろ、肩先、第二仙骨の上、くるぶし前が一直線になった正しい姿勢。
耳の後ろ、肩先、第二仙骨の上、くるぶし前が一直線になった正しい姿勢。

まず、頭のてっぺんで天井を押し上げるように背筋をスッと伸ばし、体の中心の軸を意識します。

その後、あごや肩が前に出すぎていないかの確認を。両手を広げて回旋した可動域が最も広い姿勢がベスト。また、横から見たときに、耳の後ろ・肩先・第二仙骨の上・くるぶし前が、床と垂直に一本のラインになります。

■2:深い呼吸を心がける

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トップス¥12,100(インターテック<スリア>)、パンツ¥49,500(ストックマン<タンデム>)

まずは吐くことを意識して呼吸を深めることが重要

長時間のマスク着用で「隠れ酸欠」状態の人が急増。マスクをつけたままの呼吸で、自分の吐いた息を吸う割合が高まり、息苦しさから浅い呼吸や口呼吸に傾きがちに。

「正しい呼吸のポイントはふたつ。まず、鼻呼吸を行うこと。無意識のうちに口呼吸になっている人が多いようですが、本来、口は食べるための器官、鼻は呼吸するための器官と、役割が分かれています。肺にきれいな空気を取り込むためには、無防備な口からではなく、鼻毛や繊毛などの防御機能をもつ鼻から息を吸うこと。

もう一点は、しっかりと息を吐ききること。浅くなってしまった呼吸を正常に戻すためには、吸う前に、まずはしっかりと息を吐ききることを意識することが大切です。そうすると、自然に新しい空気を取り込むことができるように」(武田先生)

●口呼吸は虫歯や感染症の原因に

口呼吸をしていると、口内が乾燥し、抗菌作用のある唾液がうまく回らなくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。さらに、口は鼻のように防御システムをもたないため、細菌やウイルスなどもダイレクトに体内に侵入します。口呼吸はデメリットだらけ…。

●浅い呼吸は肩こり・首こりを招く

呼吸が浅いと酸素を十分に取り込めず、血液中の酸素濃度が低下して血行不良に。すると筋肉が緊張して、疲労物質が蓄積して痛みが発生します。横隔膜の動きが悪いと、いわゆる「肩で息をする」状態に陥り、必要以上な力が首や肩にかかり、さらなる悪化の原因に。

●マスク着用で過呼吸が増加

マスクの装着によりマスク内に二酸化炭素がたまると、呼吸困難のような感覚になり、過呼吸を引き起こすリスクがUP。息苦しさを感じた場合は、鼻や口周りに空間をつくり、マスク内の空気を循環させ、回避して。

●深い呼吸で幸せホルモンの分泌を増やすことができる

深い呼吸を繰り返すことで副交感神経が優位になり、緊張している体がリラックスします。そうすると、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌されます。

セロトニンが減ると、免疫力が低下するともいわれているので、呼吸を深めて分泌を促すことが大切。

●深呼吸のしすぎは体に悪い

マックスで酸素を肺にとり込む深呼吸。息を吸ったあとに体外に排出される二酸化炭素は、実は血液や体液のpHを調整し、体内を弱アルカリ性に保つために必要です。生体内に一定量の二酸化炭素が残るよう、深呼吸のしすぎで二酸化炭素を過放出しないこと。

●実はため息は体にいい!

「ため息をつくと幸せが逃げる」なんて言葉もあり、ネガティブなイメージをもたれがちなため息ですが、体にとって非常にいいものなのです。ため息は、酸欠状態を改善し、バランスが崩れた自律神経の働きを回復させようとする体の作用。緊張緩和や血流促進などの効果があるといわれています。

●腹式呼吸と胸式呼吸は、どちらも正しい

ふだん何気なく行っているのが「胸式呼吸」。対して「腹式呼吸」はおなかと横隔膜を大きく動かす呼吸法。

睡眠時やリラックス時は自然に腹式呼吸になりますが、動いているときには、交感神経を優位に立たせる胸式呼吸に。どちらも正しい呼吸法なのです。

■3:適度な運動を習慣に座りっぱなしを避け、無理なく体を動かして

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トップス¥12,100(インターテック<スリア>)、パンツ¥49,500(ストックマン<タンデム>)

自粛生活による体の活動量の減少が問題視されています。それは、筋力低下を招き、血行の滞りや老廃物の蓄積につながり、肥満や高血圧、糖尿病など多くの疾患リスクを高めることは周知のとおり。ではいったい、どれくらいの時間、どのレベルの運動を行うべきなのでしょうか?

「ジムに通ってハードなトレーニングをする必要はありません。とにかく座っている時間を減らして、体を動かすこと。立ち時間は1日10時間、そのうち身体活動時間は1日1時間を目指すのが理想です。海外では立ったままでのデスクワークを推奨する企業も。

10時間立っているのが難しい方は、姿勢の項目でもお伝えしたとおり、30分に1度は立つ習慣を。あとは無理のない範囲で、ウォーキングやランニングなどを取り入れましょう」と武田先生。

●痩せたい人は朝の空腹時に運動を

空腹時に軽いランニング程度の有酸素運動を行うと、体内に蓄積された脂肪を燃料源として利用するため、食後に運動するよりも、燃焼する脂肪の割合が高まります。

ただし、ハードなトレーニングや長時間に及ぶ運動は、必要な筋肉まで分解したり、体の不調をもたらす場合もあるので逆効果です。

●運動することで美肌になれる

ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、血行促進や新陳代謝を高める効果があるので、美肌効果があるといえます。筋トレなどの無酸素運動に比べると少ないですが、有酸素運動でも美肌作用をもたらす成長ホルモンが分泌されます。体重あたりの筋肉量が多いほど、シミやシワが少ないというデータも。

●運動は景色が変わるなかで行うのがベター

せっかく運動するなら、屋内よりも景色や環境が変わる屋外がおすすめ。

自然のなかで体を動かす「グリーンエクササイズ」では、運動を開始してからわずか5分で、脳が刺激されて疲労感がとれ、気分が上向きに。さらに自尊心が向上するとのデータもあります。

●スロージョギングこそ最強!

歩くくらいのペースでゆっくりと走る「スロージョギング」は、足腰にかかる負担は少なく、体が感じる疲労感はウォーキングと変わらないのに、カロリー消費量はウォーキングの2倍だとか!

屋内で足踏みするように行うのも有効なので、隙間時間に続けられます。

●運動する人としない人では、健康寿命に約10年の差が生まれる

死亡原因の上位を占める生活習慣病を予防するために運動が不可欠であるということは先述のとおり。

健康寿命を縮める原因となる転倒や骨折、関節疾患などを予防するためにも適度な運動が不可欠です。またよく歩く人は、そうでない人と比べて、認知症の発症率が約半分であるともいわれています。

●階段を昇るよりも、降りるほうが筋力や骨密度がアップする

階段は昇るよりも降りるほうが楽だと思われがちですが、実は降りるほうが筋肉を使います。重力に任せるのではなく、前太ももを伸ばしながら適度な力を出してブレーキをかけるため「エキセントリック運動」と呼ばれ、骨密度を高める効果もあります。降りるときにこそ階段を使うのが正解かも。

※掲載した商品は、すべて税込です。

問い合わせ先

PHOTO :
宮本直孝
STYLIST :
カドワキジュン子
HAIR MAKE :
重見幸江(gem)
MODEL :
立野リカ(Precious専属)
EDIT&WRITING :
新田晃与、佐藤友貴絵(Precious)