水ようかん、栗ようかん、芋ようかん…さまざまな種類を取りそろえ、季節ごとのバリエーションが楽しみになる和菓子、「羊羹」。
歴史のある和菓子ですが、「羊羹」という漢字をよく見ると、動物の「羊(ひつじ)」という漢字が入っていますよね。どうしてなのだろう、と疑問に思ったことがある人もいるのではないでしょうか。
今回はそんな素朴な疑問について、「とらや」広報の黒川さゆりさんにお答えいただきました。
■羊羹のルーツは中国料理に。なんと原形は羊の◯◯◯!
そもそも、羊羹には、どうして「羊」という漢字が入っているのでしょうか?
「羊羹は、羊(ひつじ)と羹(あつもの・肉や魚のスープという意味)という漢字で成り立っています。羊羹とは、もともとは中国の料理で羊の肉を使ったスープのことです。鎌倉から室町時代に、中国に留学した禅僧によって点心(てんじん)(食事と食事の間に食べる小食のひとつ)として伝えられました。これが、今の羊羹の原形となったといわれています」
「羹」とはあまり聞きなれない言葉ですが、「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」ということわざもありますね。羊のスープが羊羹の始まりだったとは意外です。
「中国から伝わった羊羹ですが、禅僧は肉食が禁じられているので、小豆や小麦粉、葛粉などの植物性の材料を使って、羊の羹に見立てた料理がつくられました。それが時代とともに甘みが加わり、蒸羊羹がうまれたのです」
羊羹の原形は、漢字のとおりに「羊を使った羹」だったのですね。今の羊羹の姿からは想像ができません。歴史を紐解くと、漢字にはちゃんと意味があったのですね。
■煉羊羹より先に蒸羊羹が誕生した歴史
今ではすっかり身近な存在になった羊羹ですが、そもそも羊羹の種類にはどんなものがあるのでしょうか?
「羊羹には、蒸羊羹(むしようかん)と煉羊羹(ねりようかん)があります。蒸羊羹は餡に小麦粉や葛粉を加え、蒸し固めたもので、もちもちとした食感です。煉羊羹は、餡に煮溶かした寒天を加え、煉り固めたもので、蒸羊羹に比べ、口当たりが滑らかで、日持ちがよいです。蒸羊羹が誕生したのちに、江戸時代後期には寒天を用いた煉羊羹がつくられるようになりました。いまは、煉羊羹が羊羹の主流となっています。ほかには、夏によく食べる水羊羹があります。水羊羹は、水分が多く、他の羊羹と比べてやわらかな食感で、冷やして食べるのが一般的です」
私たちが日常的に食べている羊羹は、煉羊羹なのですね。江戸時代から愛されている食べ物だというのは驚きです。羊羹特有のなめらかな舌触りは、寒天が入っているからだそう。
■バリエーションが多彩に。最近の人気は携帯しやすい小形の羊羹
長い歴史のある羊羹ですが、羊羹にも流行があるんでしょうか?
「最近では、大きな羊羹と違って切る必要がないことから、小形羊羹のように個包装になった小さな羊羹が人気です。食べやすさだけでなく、携帯のしやすさ、常温で長期保存が可能なことから、非常食としてお使いいただくこともあります」
持ち運びしやすく腹持ちのする小形羊羹は、登山のときに歩きながら食べる人も多いそうです。羊羹の自然な甘みと味わいは、山歩きの疲れもとってくれそうですね。
「定番の竹皮包羊羹の半分のサイズの中形羊羹も、ご家族で食べきれるサイズなので人気がありますよ。その他には、華やかな意匠の季節の羊羹や、コーヒーやラムレーズン味などの羊羹も人気があります」
和菓子である羊羹にも、ラムレーズンのように洋風の味を取り入れているんですね。とらやでは、羊羹の中に富士山の山をイメージした御殿場限定のものなど、地域限定の珍しいものも人気があるそうです。また、とらやが手がけるカフェ「トラヤカフェ」では、ひとくちサイズの羊羹「ヨウカンアラカルト」といった、モダンな商品も販売しています。
歴史のある羊羹も、今なおさまざまな人に愛され続け、現代のライフスタイルに合わせて進化を遂げているのですね。あんこを使ったお菓子が海外で人気を博していることもあり、日本を代表する和菓子として、さらに羊羹の人気が高まりそうです。
お正月の手土産にとっておきの羊羹を用意して、お茶を飲みながら羊羹の歴史について思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 長祖久美子
- EDIT :
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