女性の間で季節を問わず、依然として人気が高い「薬膳火鍋」。火鍋といってもただ辛いだけでなく、バラエティーに富んだスープや具材により、あらゆる味を楽しむことができるのも人気の秘密のよう。しかし、薬膳火鍋に使われている「薬膳」の効果や効能まで知っている人は少ないのではないでしょうか?

今回は、その薬膳火鍋に使われるスープの香辛料や生薬などの知識を深め、もっとおいしく食べられる方法を探ります。

薬膳火鍋とは?

薬膳火鍋とは、中華圏で広く食されている鍋料理のひとつ。「鴛鴦(ユエンヤン)」と呼ばれる中央に仕切りがある独特の鍋でいただきます。

「鴛鴦(ユエンヤン)」と呼ばれる中央に仕切りがある鍋

そのスープは大きく分けて2種類。ひとつは、香辛料が入った辛くて紅い「麻辣(マーラー)」。もうひとつは、白濁した「白湯(パイタン)」です。お店ではどちらか一方を選べる場合もあれば、2種類のスープを仕切りのある鍋それぞれに入れる場合もあります。

そのスープの中に、肉や魚介類、野菜やキノコ、餃子や団子などを煮込みます。

この薬膳火鍋のおいしさの決め手となるのがスープ。特に紅いほうのスープには、たくさんの香辛料や生薬が使われています。

例えば、唐辛子、生姜、ナツメ、クコの実、党参(とうじん)、良姜(りょうきょう)、竜眼(りゅうがん)、蓮子(れんし)、長ネギ、シナモン、八角、五香粉、花椒、豆板醤、味噌、ごま油、紹興酒など。実にたくさんありますね。

薬膳火鍋に使われるスープの香辛料・生薬6つ

そこで今回は、これらの香辛料や生薬のうち、日本ではあまり知られていないものの基本情報や効果を、国際薬膳師の岡尾知子さんに教えていただきました。

■1:ナツメ

クロウメモドキ科のナツメの果実
生薬名「大棗(たいそう)」

ナツメ

「ナツメはいろいろな漢方薬の中に使われています。生命活動に不可欠な『気』と、栄養を運び精神活動に関係する『血』の両方を補う力があり、『一日3粒食べれば老い知らず』ともいわれています。

また、古くから女性の美をサポートするとされており、かの楊貴妃も愛したという美容食材でもあります。消化機能が虚弱で元気の出ない人、精神不安や不眠の悩みがある人におすすめ。日本ではなじみが薄い食材ですが、中国、台湾、韓国では比較的ポピュラーな存在。特に韓国では、朝鮮人参などとともにサムゲタンにも入っていますし、ナツメのお茶などもよく飲まれるようです。ちなみにナツメヤシのデーツとは異なりますのでご注意を」

「大棗」を含む漢方薬
・消化機能が虚弱な人に使う『六君子湯』
・精神不安の薬で知られる『甘麦大棗湯』など

■2:クコの実

ナス科の植物クコの果実
生薬名「枸杞子(くこし)」

クコの実

「クコの実は、欧米ではゴジベリーと呼ばれ、スーパーフードとして人気です。生薬としては、目によい薬膳食材として知られています。枸杞子の特徴は、女性の老化と関わりの深い五臓の『肝』『腎』に働きかける点。年齢を重ねると、体のうるおいを保つ力が低下し、それが更年期のめまいやふらつき、ほてりなどにつながりますが、クコの実には、不足しがちな『うるおす力』やこもった『熱を冷ます力』を補う働きがあるので、特に女性のエイジング対策に有効といえるでしょう。効果を期待するなら、『一日20~30粒食べる』とよいとされています」

「枸杞子」を含む漢方薬
・加齢で目がかすむ、視力が減退してきた人におすすめの『杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)』など

■3:党参(とうじん)

キキョウ科のヒカゲノツルニンジンなどの根
生薬名「党参」

「党参は、『気』を補って消化機能の働きを助けたり、『肺』の虚弱による息切れ、呼吸困難、咳、声に力がないといった症状に使ったります。抵抗力をつけるので、風邪をひきやすい体質の人によい薬膳食材です。『血』を補う力もあるため、血の不足で顔色が悪い人、頭のふらつく人にも。また、うるおいを生み出す力も高まるので、熱病などで口が乾くときなどにもよいでしょう。

薬膳では『気』の虚弱を補う薬として人参(野菜のニンジンではなく、朝鮮人参、吉林人参などのこと)を用いますが、党参は人参より薬力は少ないものの、同じような効能があるため、よく代用として使われます。薬力がマイルドなので、人参が体質的に合わない人には党参がおすすめで、食材として使いやすいでしょう。煮込むとゴボウのような味になります」

冬のホームパーティーの主役にも最適な薬膳鍋

■4:良姜(りょうきょう)

ショウガ科ハナショウガ属植物の根茎
生薬名「良姜」「高良姜」

「良姜は高良姜(こうりょうきょう)ともいわれ、『姜』の字がつく通り、生姜の仲間で、辛味があり、体を温める効果があります。生姜との違いは、温める作用が向かう場所にあります。生姜は体表を温め、毛穴や皮膚のキメを開いて発汗させるのに対し、良姜は体内を温め、特に胃の冷えを取り除きます。お腹が冷えることによる腹痛の緩和や、冷えによって消化機能が低下した際の吐気、げっぷ、下痢などに有効です。温め効果が強いので、冬の寒い時期や冷え性の人におすすめです」

■5:竜眼(りゅうがん)

ムクロジ科のリュウガンという熱帯植物の果実
生薬名「竜眼」「竜眼肉」

竜眼

「竜眼は、同じムクロジ科のライチに似たフルーツです。薬膳食材では、皮ごと乾燥させたものが使われ、皮を軽く割って紅茶と一緒に煮出したり、皮のまま薬膳鍋に入れたりします。皮の中には、乾燥した果肉が入っていて、これを『竜眼肉』といいます。竜眼肉には『血』を補う作用があるとされ、心身の虚弱に効きます。特に不眠、健忘、倦怠無力感などの症状がある人によいでしょう。薬膳鍋では、丸い皮のまま入っていると思いますが、ぜひ皮を割り、中の果肉まで食べてみてください」

■6:蓮子(れんし)

スイレン科ハスの種子
生薬名「蓮子」

蓮子

「蓮子は水で戻してからゆでると、ほくほくとした栗のような食感になり、台湾や中国などでは甘く煮てスイーツなどに使います。辛味やクセがなく、料理に使いやすい食材でありながら、薬効も高いのが特徴。収斂作用によって『漏れ』の症状をとめる作用と、精神を安定させる作用に優れています。

漏れを止める作用は、虚弱体質や加齢によって下痢しやすい人や、『腎』の虚弱による不正出血、帯下などにおすすめ。精神安定作用は、不眠や動悸のある人におすすめです。効果効能からも推察できるように、加齢による体や心の揺れが気になってくる40代からの女性に勧めたい薬膳食材です」

「蓮子」を含む漢方薬
・精神安定効果を狙った薬「清心蓮子飲(せいしんれんしいん)」

薬膳火鍋をより楽しむためのポイント

岡尾さんに、これらの香辛料や生薬の入った薬膳鍋をより楽しむためのポイントを教えていただきました。

薬膳鍋

今回ご紹介したような乾燥させた薬膳食材は、浸水させてスープをつくる最初の段階から加えるとじっくりエキスが出ます。組み合わせは自由に楽しんでOKですが、辛味のあるスパイス系のものは控えめの量から試してみてください。乾燥した素材以外に、ねぎやしょうがを加えたり、パクチーなどを薬味としてプラスしたりすると、さらにおいしい薬膳鍋を楽しめると思います。

寒い時期に体を温めてくれる薬膳火鍋。美容や健康によいヘルシー鍋ですが、香辛料・生薬の効能まで知っておくだけで、さらなる効果を得られるのではないでしょうか?

岡尾 知子さん
国際薬膳師、国際中医師
(おかお ともこ)ライター、編集者として仕事をする中、東洋医学に関心を持ち、薬膳や漢方について学ぶ。薬膳教室や雑誌、書籍、webサイトなどを通じて、東洋医学のよさを伝える。LOTUS薬膳教室主宰。
「薬膳ノート」

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この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2019.1.16 更新
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EDIT&WRITING :
石原亜香利