ここ数年の我慢のときを経て、レストランでの食事を楽しめる機会も増えてきたこの頃。東京のレストランシーンにも新しい名店が次々と誕生しています。『Precious』3月号・別冊付録『最旬「東京モダンレストラン」17』では、2022年オープンの新店を中心に、美味しいもの好きが通っているお店17軒をピックアップ。

今回ご紹介するのは、リラックスフレンチ&イタリアンの名店たち。クラシックに回帰しながらも新しい。料理も空間も軽やかで心地よい名店をまとめてご紹介します。

■1:トワヴィサージュ[東銀座]

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「トワヴィサージュ」のオープンキッチン。磨き上げられたオープンキッチン、スタッフのチームワークは見ていて気持ちがいい。

席に置かれた陶器のウェルカムボウルには、その日の料理に使うハーブが。かじると、コースへの期待がふくらむ。國長亮平シェフは、「ル・マンジュ・トゥー」で10年近く研鑽を積んだ。

千葉に間借りした農園で無農薬野菜を育てているのは、季節ごとの味わいを大切にするため。そして、食材はむだにしない。「極エノキのソーセージ」のソースは、野菜の端材を2日間煮詰め、端材に根菜類が多い冬は甘みが増すなど、季節ごとの味も新鮮。

ハンス・ウェグナーの椅子などをセレクトしたシンプルモダンな店内は、意識させない心地よさがあり、何を食べているかわかる料理を肩肘張らずに楽しめる。

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「トマトのラメル」。「トマトのラメル」はフルーツトマト、カニ、コーヒーのゼリーを重ねた麗しい前菜。カニのうま味と鼻に抜けるコーヒーの香りがトマトのふくよかな甘さを引き立てる。椿の花弁のピクルスをアクセントに。
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「極エノキのソーセージ」。栽培に室戸岬の海洋深層水を使うことで甘さが増す「極エノキ」との出合いから生まれた「極エノキのソーセージ」。エノキは冷凍し、解凍時に細胞が壊れてうま味が増した状態で、じっくり炒めて水分を飛ばし、うま味を凝縮。つなぎに豚ひき肉を使い、うま味の掛け合わせ効果で美味しさが増幅。うずらの半熟卵黄を絡めながら。

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■2:渡辺料理店[門前仲町]

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「渡辺料理店」のカウンター。渡邉幸司シェフの仕事をライブで見ることができるカウンターは、希望する人がいるほどの人気席。料理の量は人数によって調整可能。

「銀座レカン」の元料理長が「フレンチを気楽に楽しんでもらいたい」との思いから開いたのは、こぢんまりとしたビストロ。地元に愛される店を目指し、店名の「りょうりみせ」の読みには夜店や出店のような気楽さを込めた。

料理はアラカルト。開店前、豊洲市場の鮮魚店で働き、魚介を学んだ探究心が、「伝助アナゴフォアグラロールムニエル」(¥4,200)などの人気メニューにつながっている。手をかけたクラシックフレンチをベースに、イタリアンのリゾットやラビオリを取り入れたりと、メニューは自由ながら、グランメゾンシェフの技が光る。

シェフ自身が料理を楽しみ、人を幸せにする至福の美味しさと温かな接客で、予約が3か月先まで埋まっているのも納得。

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「シャルキュトリ 取り合わせ」¥4,300(3~4人分)。ビストロの醍醐味でもある自家製「シャルキュトリ 取り合わせ」は、フレッシュなポークハム、パテ・ド・カンパーニュ、白レバーのムース、ブーダンノワールに、季節のピクルスなどを添えて。白レバームースにはいちじくのピュレ、ブーダンノワールにはりんごのピュレと、美味しさを引き立てる付け合わせが。単品でもオーダー可能。
レストラン_6,東京_6
「オマールエビのビスクリゾット」¥4,900。「オマールエビのビスクリゾット」は、エビ味噌のコクが効いたサフランのリゾットに、低温でしっとり仕上げたオマールエビがまるごと1尾。ビスクのエスプーマ仕立てで、自家製の内子のパウダーをふっている。エビのうま味を余すところなく味わえる逸品。

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■3:ボート[幡ヶ谷]

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「ボート」のエントランス

住宅街の中の温かな明かりに引き寄せられて扉を開けると、炭火の香りに包まれた。ナチュラルワインを愛する人々で連日賑わうのが、半田 直さんがひとりで切り盛りする小さなビストロ。

さまざまな飲食店を経て独立した半田さんのスペシャリテである炭火焼きは、余熱での火入れも計算し、試行錯誤を経て、うま味が凝縮されている。アジのマリネにはきゅうりのソースを添えたり、新玉ねぎと菊芋をごま和えにしたりと、食材を組み合わせるセンスが絶妙。

天井下にはめ込んだのは、セルフヴィンテージになった’80年代のテクニクスのスピーカー。通好みのワイン、センスのいい料理と音楽に心地よく酔える。

レストラン_8,東京_8
「牡蠣のタルタル」¥1,200。「牡蠣のタルタル」は、カキ、サラミ、パプリカ、ドライトマトをタルタルにし、カラスミを散らして仕上げる。うま味を何層にも掛け合わせたひと皿は、ワインの種類を変えて楽しんでしまう。
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「埼玉県 国分牧場さんのブラウンスイスのシンタマと焼き野菜」¥4,400。赤身のシンタマのなかでも、ヒレに次いで柔らかいとされるシンシンの部分を土佐備長で炭火焼きにし、味付けは塩とこしょうのみ。金時にんじん、加賀れんこん、紅くるり大根などのグリルを添えて。

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■4:フィレモネ[乃木坂]

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「フィレモネ」のカウンター。ライブ感のあるカウンターで、ひとりふらっと飲むのもいい。

「ドンチッチョ」の姉妹店「シュリシュリ」で共にキャリアを積んだシェフの新田大介さんとサービスの森 裕太さんが開いた、アラカルトのイタリアン。

食材の旬を大切にし、長崎県五島列島などから直送の新鮮な魚介をイタリア郷土料理に仕立てる。パスタやパン、サルシッチャなども自家製。料理は素材の味を引き出しつつ、塩味は控えめ。ひと口目のインパクトは控えめながら、食べ進むうちに美味しさが増幅し、ワインが進む。それでいて、食べ疲れない味の組み立てはさすが。

店名は疲れた旅人をもてなしたローマ神話の農夫の名前から。「メニューにない料理にも応えたい」と、絶妙な距離感を保ちつつのさりげない接客も心地いい。

レストラン_11,東京_11
「長崎五島直送 ヒラマサのカルパッチョ」¥1,800。写真の料理は1/2人前。脂がのったヒラマサは1週間ほど熟成させて燻製にし、トマトとおかひじきのソース、ハーブを添えて。この厚さは産地直送ならでは。冬はクエなど季節の魚で楽しめる。

脂がのったヒラマサは1週間ほど熟成させて燻製にし、トマトとおかひじきのソース、ハーブを添えて。この厚さは産地直送ならでは。冬はクエなど季節の魚で楽しめる。

レストラン_12,東京_12
「牛ほほ肉の黒こしょう煮込み」¥3,600。写真の料理は1/2人前。「牛ほほ肉の黒こしょう煮込み」は3日かけて煮込み、肉はほろほろと柔らかい。赤ワインと野菜を煮詰めたソースにホールの黒こしょうを加えてパンチを出している。

「牛ほほ肉の黒こしょう煮込み」は3日かけて煮込み、肉はほろほろと柔らかい。赤ワインと野菜を煮詰めたソースにホールの黒こしょうを加えてパンチを出している。

レストラン_13,東京_13
「牡蠣とちぢみほうれん草のトマトソース タリアテッレ」¥2,200。手打ちのパスタは歯切れのよさとコシが評判。写真の料理は1/2人前。

手打ちのパスタは歯切れのよさとコシが評判。

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■5:パネヴィア[神泉]

神泉のベーカリー「パネヴィア」の店内
神泉の「パネヴィア」。東森シェフが「キッチンにデイライトが入るように」つくった店内は、陽の光が心地いい。パンは予約可能。

予約困難なイタリアン「チニャーレ・エノテカ」は、コースの中で提供されるフォカッチャも評判。「買いたい!」という要望に応えて、オーナーシェフの東森俊二さんはベーカリー「パネヴィア」をオープン。ディナー営業も開始し、白子のアヒージョ、牛ほほ肉の煮込みなどの絶品料理をアラカルトで楽しめる。

料理に合わせるためのパンは、フォカッチャ、カンパーニュ、チャバッタ、クロワッサンの4種。フォカッチャはオイルを少なめにして焼いたシンプルな味で、ソースやスープをつけることで美味しさが広がる。レストランだからつくれるパンをディナーで自由にオーダーしたり、パンを買ってアペロを楽しんだり。美味しいパンで口福度は増す。

神泉「パネヴィア」で提供される「キンキのヴァポーレ」
「キンキのヴァポーレ」¥3,200。蒸したキンキにトマト、オリーブ、ケッパー、ガーリックのソースをかけて。魚のだしとソースが溶け合うスープに浸して食べるチャバッタの味は格別。
神泉の「パネヴィア」で提供されるまぐろのタルタルのブルスケッタ」
「まぐろのタルタルのブルスケッタ」¥2,000。自家製フォカッチャをバターでトーストし、大間のマグロ、玉ねぎ、ケッパー、イタリアンパセリをのせ、バルサミコソースで仕上げた。

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■6:かなで[本郷三丁目]

本郷三丁目のレストラン「かなで」
本郷三丁目の「かなで」

「アロマフレスカ」などで修業したシェフの池田光寿さんとソムリエの美穂さん夫婦が営む、アラカルトのイタリアン。「限られた食材で美味しく食べるイタリア料理の真髄」というスペシャリテが、「マカッレ風リゾット」。イタリアの修業先で心を揺さぶられたリゾットで、チーズやバター、塩も使わず、牛乳だけで炊かれる。

シンプルなのに濃厚で、その味わいは衝撃的。料理は食材の美味しさを出しきるまでむだなく使う。美味しさと店主夫婦の人柄に惹かれ、成熟した大人で賑わう。

本郷三丁目「かなで」のリゾット
「マカッレ風リゾット」¥4,840。野菜や肉の端材などを煮詰めた、うま味の塊のようなスーゴ(ソース)と季節のトリュフを添えて。シンプルで優しいのに、またすぐ欲してしまう罪なひと皿。
本郷三丁目のレストラン「かなで」の「北海道十勝“canade牛”サーロインのロースト マルサラ風味のソース」
「北海道十勝“canade牛”サーロインのロースト マルサラ風味のソース」¥6,600。店の名を冠し、42か月という特別に長期飼育した経産牛のサーロインをロースト。仕上げに藁で香りをつけた。驚くほどサクサクとした食感で、軽やか。料理に添えるチャバッタは、日本酒の天然酵母を使った自家製。

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■7:ヴィノダ[六本木]

六本木のバー「ヴィノダ」とソムリエの小田誠さん
六本木のバー「ヴィノダ」。イタリアワインの魅力を伝え続けてきた小田さん。そのセレクトには料理人も絶大な信頼を寄せる。

「夜な夜な、料理人や食通が集うバーがある。それが、「ケ パッキア」で10年近くソムリエを務めた小田 誠さんの店。イタリアワインは300種類近くあり、メニューは小皿料理で約15品。

そのキャリアは料理人から始まっただけあって、シンプルな料理にもスパイスやハーブを程よく効かせ、食べたいところを絶妙についてくる酒肴がたまらない。地下にありながら、店内には大きな開口部があり、天井も高い。開放感がある空間、カウンター越しの小田さんのにこやかな対応に和む。

六本木のバー「ヴィノダ」のフードメニュー
上から/「マスカルポーネ味噌」¥800、「トリッパと牛腸の煮込み」¥1,200。「マスカルポーネ味噌」は、マスカルポーネチーズと西京味噌を合わせたもの。味噌が主張しすぎず、程よいコクでファンが多い。「トリッパと牛腸の煮込み」は、黒こしょうやセージを使い、隠し味の味噌がいい仕事をしている。
六本木のバー「ヴィノダ」のフードメニュー「アボカドのオーブン焼き アンチョビバターソース」
「アボカドのオーブン焼き アンチョビバターソース」¥1,100。アボカドをつぶしながら食べると、濃厚かつクリーミーな美味しさに悶絶。

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※掲載価格は、すべて税込みです。
※掲載している料理や商品は、時期によって変更となる場合があります。
※定休日や営業時間など、最新情報は各店舗へお問い合わせ、またはHPやインスタグラムをご参照ください。

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PHOTO :
長谷川 潤
EDIT&WRITING :
松田亜子、安村 徹(Precious)