雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は、「ノビシロハウス」代表 鮎川沙代さんの活動をご紹介します。
90代から10代までが暮らす多世代型高齢者住宅で終の住処を
藤沢市にある高齢者向け賃貸住宅「ノビシロハウス」。2階建て全8部屋のワンルームタイプで、1階は敷地入口から各部屋の玄関まで段差のないバリアフリー設計になっている。入居に年齢制限はないが、大切な入居条件がある。それは、「月に一度のお茶会に参加できる方、若者からの挨拶に快く応対していただける方」。
「ノビシロハウスの2階の部屋には、10代〜20代の若者が住んでいて、彼らが日々、高齢の入居者に声かけをするシステムになっています。月に一度はお茶会を企画して、隣の棟にあるコーヒーショップや、近所のレストラン、ときにはベランダで、居住者みんなで集まります。この『声かけ』と『お茶会の開催』は、若者側の入居条件。『ソーシャルワーカー』という役目を担ってもらう代わりに、家賃を半額にしています」
90代を筆頭に、10代の学生までが暮らす。都内で不動産仲介業を営む鮎川さんがこのユニークな多世代住宅をつくるにいたったのには、「高齢者が部屋を借りられない」(※)という現実があった。
「一般的に、高齢者のひとり暮らしは孤独死や認知症を懸念して断られることがほとんどで、貸してくれるところがあったとしても、古かったり、暗かったりと、おすすめしたい物件ではないことが多い。長い人生を送ってこられた方の終の住処なのに、選択肢がないんです。なんとかしたい、とあちこち走り回っていたときに、介護業界の方とつながる機会を得て、この構想が始まりました。高齢者はもちろんですが、若者にとってもこの暮らし方は意義があると思っています。のびのびと自分の城で余生を過ごす高齢者の姿は、未来への希望になるはず」
【SDGsの現場から】
●月に一度のお茶会で交流を深める
●隣の棟にはランドリーやクリニックも
※高齢者が部屋を借りられないとは…物件オーナーにとっては高齢の入居者はリスクが高いとされ、一般的な賃貸物件の対象者は主に65歳以下。高齢者の審査基準は厳しい。
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- PHOTO :
- 望月みちか
- EDIT :
- 正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 剣持亜弥(HATSU)