雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は、「Zó Project」創業者・CEO チャン・ホン・ニュンさんの活動をご紹介します。
伝統的な紙づくりの技法を守り伝え、少数民族の貧困改善を目指す
ベトナムには「Dóペーパー」という伝統的な紙がある。原料となるのは「Dó」という植物で、日本の和紙のように漉いてつくる。ハノイ北部のバクニン省ドンカオ村では、およそ800年前からこの製紙技術が伝えられていたが、10年ほど前にチャンさんが訪れたときには技術は廃れ、工房も1〜2軒しか残っていなかった。
「さらに、その工房の紙はほぼ、近くのドンホー村の特産品である書道や版画用。私は、この素晴らしい紙がもっと日常で使われるようにならないと、衰退していくばかりだと感じて、技法を伝承するプロジェクトを立ち上げたのです」
ベトナムの少数民族(※)の多くは農業で生計を立てているので、冬は仕事がない。そこでチャンさんは、北西部のモン族や東南部のザオ族など他地域にも製紙技術を広げていった。そして、「技術を教えるだけではなく、そこからきちんと利益が生まれて、次世代へとつなげられるようにすることが重要」と、「Dóペーパー」の商品化にも着手。現在は欧米や日本にも展開し、通販サイトにも出品している。
少数民族の手仕事や雇用創生に携わるのには、理由がある。
「大学卒業後にフランスに留学していたとき、身の回りの商品をふと見ればよく『Made in Vietnam』とあって。ベトナム人は勤勉でまじめで、世界にはベトナム製のものが溢れているのに、国内には貧しい人が多い。その実情をなんとかしたい、と」
すべて手作業でつくられる「Dóペーパー」は、柔らかくなめらかで、破れにくい。特にアーティストに愛用されているという。
「数年後には紙の博物館もつくりたい。国内での認知度をもっと上げていければと思っています」
【SDGsの現場から】
●原料となる植物「Dó」は国内各地に
●ハノイの旧市街に近い観光スポットには商品を扱う店舗も
※ベトナム少数民族とは…ベトナムは人口の86%がキン族、その他14%は53の少数民族で構成されている。貧困や教育格差など多くの問題を抱えている。
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- PHOTO :
- Megumi Katsu
- EDIT :
- 正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
- 取材 :
- Kaori Soma
- 翻訳 :
- Ha Ngoc Lan
- 文 :
- 剣持亜弥(HATSU)